第9話「編集された殺人」

 スナックのアルバイト店員・陽子(村井美樹)の他殺体が発見された。彼女のアルバイト先のスナック『椿』でも店主の友章(桐本琢也)が殺され、妻の美穂(寺田千穂)が犯行を自供。しかし、裁判になると美穂は自白を翻し、無罪を主張していた。

 事件当時の記事では、友章の死亡時刻に美穂が父親の博(小沢象)と電話で話していたことがアリバイになると思われたが、携帯電話だったためアリバイにはならなかった。仮に美穂が犯人なら夫の遺体を前に電話をしていたことになる。そんな状況で何を話していたのか?

 引っかかるものを感じた右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)は博から事情を聞くが、娘の無実を信じる博は警察の捜査を批判。さらに裁判で検察側に有利な証言をしたという陽子のことも非難する。博によると、検察官は陽子の証言映像を裁判で流したらしい。取調べの一部可視化によるものだ。

 右京らは美穂の弁護士であるかおり(松下由樹)と再会、検察が提出した陽子の証言映像を見せてもらう。確かに陽子は煙草を吸いながら美穂に不利な証言をしている。が、かおりによると、陽子は弁護側の証人としても出廷する予定だった。陽子はかおりに「ママの容疑を晴らすために検察に行く」と言っていたらしい。そんな話を聞いた右京は、映像が編集されたものではないか、と疑いを抱く。

 右京らは検察官の鍋島(石橋保)から話を聞くが、鍋島は編集ではなく抜粋で、違法ではない、と言い張る。確かに鍋島の言う通り、検察に不利な証言をカットしても罪を問われるものではない。が、右京は証言する陽子の動きに不審を抱く。煙草を吸いながら、なぜか手元のバッグに視線を落とし、バッグに向かって話すようにしている。ボイスレコーダーでも仕込んでいたのでないか? が、米沢(六角精児)は所持品の中にそんなものはなかったという。

 陽子の殺害場所がスナックであることが判明した。さらに米沢の機転で陽子が証言を自らの携帯電話に録音していたこともわかる。その録音で陽子は美穂は犯人ではない、と言い切っている。やはり鍋島が映像を編集していたのだ。右京らは改めて鍋島に録音を聞かせるが、違法に取得した証拠に法的な証拠能力はない、と言い放つ。

 かおりに相談してもやはり鍋島が提出した証言映像をひっくり返すことは不可能だ。右京は捜査一課に頼み、陽子の証言映像を任意提出させるが、やはり美穂に有利な証言をしている映像はカットされている。しかし、右京は陽子が使っていたライターをスナックのライターと決めつけた芹沢(山中崇史)の言葉に反応して…。映像からはスナックのライターとは確認できないのに、なぜ?

 かおりが美穂に聞いたところによると、スナックのライターはサンプルの一本だけしか存在しなかったことが判明した。ところが、陽子を証言映像でしか見たことがないという博は、スナックのライターで煙草を吸っていたと言っていた。なぜ映像では見えないライターをスナックのライターと決めつけたのか?右京らの追及に、博は映像を見た夜に陽子と会い、思わず殺害してしまったことを告白する。しかし、陽子は美穂を犯人とは思っていなかった。そんな事実を知った博は打ちのめされる。

 では、なぜ陽子がスナックのサンプルのライターを持っていたのか。それは納品された日、つまり友章が殺された日に陽子が店に行っていたから。ということは、陽子は事件の第一発見者ということになるが、彼女はそんな証言をしていない。動機はどうあれ、友章を殺したのは陽子である、と右京は断言する。
 証言映像の都合のいい部分だけを裁判で公開し、博を殺人者にしてしまった罪は重い。右京と薫は友章殺しの真犯人を明らかにしつつ、鍋島を責める。

 美穂の起訴を取り下げることが決定した。かおりは美穂の名誉回復のための訴えを起すという。とはいえ、その戦いはイバラの道だろう。右京と薫はそれを覚悟で戦いを挑むかおりの背中を黙って見送っていた。


ゲスト:松下由樹 石橋保

脚本:櫻井武晴
監督:長谷部安春