2006年12月13日(水)9:00〜9:54pm第10話「名探偵登場」

 美大生の三橋(河合龍之介)が殺害された。右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)は、聞き込みから三橋の身辺を探っていたコートを着た中年男がいたことをつかむ。あちこちで身分を偽り、自らを「マーロウ」などと名乗っていたことから、右京は男が私立探偵だと推理。矢木(高橋克実)という探偵小説マニアの冴えない中年探偵を割り出す。

 証言を拒む矢木を説得した右京と薫は、矢木が壁にスプレーで描かれた落書き絵の写真を渡され、描いた男を探して欲しいと、謎の女性(吉井有子)から依頼されたことを知る。本物の事件捜査にあこがれる矢木は、右京らの捜査に加えて欲しいと懇願。矢木の捜査手法に興味を抱いた右京も矢木の申し入れを快諾する。

 右京らは矢木が写真から三橋にたどり着くまでをおさらい。矢木は絵の写真を知り合いのギャルにメールし、似たような絵が描かれている場所を探し出してもらうと、その場所から近いペンキ屋へ。壁の絵を消す塗り直しの作業の記録を調べると、次は顔見知りのホームレスから情報を収集していた。
 小説に出てくる探偵にあこがれる中年男にしては的を射た調査。右京らが感心していると、矢木が2人組の男に襲われてしまう。なんとか助け出したが、どうやら2人組は三橋を殺した犯人に違いない。捜査を中止しろという警告だ、という右京に、矢木は脅えるどころか「ハードボイルドな展開だぁ」と感激する。

 一通り矢木が三橋にたどり着くまでを確認した右京は、依頼人の女性が持ってきた写真の絵に三橋のサインがないことを発見。それと同じ絵が描かれた場所が、とあるビルの屋上であると特定する。さらに依頼人が「絵を描いた男」と言ったということは、その女性は三橋が絵を描いているところを目撃していたようだ。絵を描いているところを目撃していながら、なぜ女性は矢木にその情報を与えなかったのか。どうやら女性は、矢木の前であえて知らないフリをしたらしい。なぜ、肝心の部分を隠そうとしたのか?

 携帯の通信履歴から三橋が屋上で絵を描いている最中に110番通報していたことがわかった。どうやら殺人か傷害事件を目撃、通報したものの、自らも不法侵入、器物損壊の罪に問われるからと、黙って切ってしまったようだ。逆にそんな三橋を現場を見られた犯人は矢木に三橋の身元を調べさせ、口封じのため殺したらしい。三橋は屋上からどこを見て110番したのか。矢木は現場の屋上にある看板広告に自らの探偵者の広告を出し、犯人をおびき出す作戦を提案する。

「あなたは見られている」。
 そんな看板を見た依頼人の女性が矢木のもとに現れ、あっさり右京らに逮捕された。
 女性は暴力団組長の愛人で、自宅で覚せい剤の取り引きを行っていたらしい。それがこじれて殺人にまで発展したところを三橋に目撃され…、が事件の発端だった。

 矢木の機転で事件は解決。右京と薫は改めて矢木が捜査に加わったわけを聞く。
「私が居場所を見つけなければ、三橋という若者は殺されなかった。もちろん自分は仕事としてやったことだが…」。
 どうしても納得がいかなかったという矢木に心動かされる右京と薫。
 右京はそんな矢木に別れの挨拶をするのだった。
「Mr.マーロウ、ロング・グッドバイ」。

ゲスト:高橋克実

脚本:戸田山雅司
監督:長谷部安春