2006年12月6日(水)9:00〜9:54pm第9話「殺人ワインセラー」

街金の社長・石場(柄沢次郎)が殺害された。後頭部の傷から赤レンガの粉が発見されたことから、右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)は石場と付き合いがあったワイン評論家・藤巻(佐野史郎)の店へ。そのレンガ造りのワインセラーには高級ワインがズラリと並んでいる。店は大赤字と自嘲気味に笑う藤巻。どうやら購入資金を街金の石場から借りた可能性が高い。街金の社員の話では、生前石場は藤巻と仲が良かったらしいが、ワインの選択で藤巻が石場を馬鹿にすることがあったという。以来、2人は疎遠になったらしいが、それでも石場は裏帳簿まで作り藤巻に金を貸していた可能性がある。さらにカレンダーに残されたメモによると、月に1回は藤巻の店を訪れていた。いったい、なぜ…?

藤巻は担保不足を理由に石場に融資を断られていた。が、ワインの購入資金の出所は明らかにしようとしない。ふと藤巻のエチケット(ワインのラベル)のコレクションに目を留める右京。事件当夜、藤巻は妻とワインを飲んだらしいが、どのエチケットでしょう?と質問を。しかし、藤巻はコレクションするほどの高級ワインではなかったという。
そんな藤巻はかつて駆け出しのソムリエだったころ、ワイン評論家の安藤(立川三貴)らからロマネ・コンティと偽り安いワインを飲まされ、馬鹿にされたことがあったという。おかげで店を辞めた藤巻はソムリエの道をあきらめ、ワイン評論家になったらしい。有名になった今でもその当時の悔しさは忘れないとか。
藤巻が事件当夜に飲んだワインが高級な86年のパルトネールとわかった。そんな高級なワインのエチケットをなぜコレクションしなかったのか?右京の質問に藤巻は「酔って思わず捨ててしまった」と答える。

右京と薫は藤巻の妻からワインを飲むときに、ワインをデキャンタージュしなかったことを確認。さらに藤巻のワインセラーに87年のパルトネールがあることも確認する。ということは藤巻が飲んだのは、87年ものよりはるかに高価な86年もの…。だとしたら…。
右京と薫はある確信をつかむと、招待された藤巻のワインの試飲会に出席する。しかも、かつて藤巻に屈辱を与えた評論家・安藤たちを連れて…。驚がくする藤巻は、ロマネ・コンティの一件を話すが、評論家たちはすっかり忘れている。驚きと怒りで言葉も出ない藤巻。そんな中、ささやかなワインの宴が始まった…。

 席上、右京が費用を出すということで店にあった87年のパルトネールが振舞われることに。「86年に比べるともうひとつだねえ」という安藤らに、突如藤巻が奇妙な笑い声をあげた。
 実は安藤らが飲んだのは86年のパルトネールだった。87年のエチケットがついていたのは、藤巻が石場を殴り殺したときについた血痕を隠すため、エチケットだけ張り替えたから。ということは、86年ものと言って藤巻が自宅で飲んだワインが87年もの。86年のパルトネールなら飲むときにデキャンタージュするはずが、藤巻がビンから直接ワインを注いだと聞いた右京がからくりを見抜いたのだった。
 動機は自分を馬鹿にしたことを恨んでいた石場が、高額な借金の返済を迫り、藤巻の大切なワインを奪おうとしたため。藤巻は86年のパルトネールを味わいながらつぶやいた。
「なんて美味しいんだ。…本当に美味しい。それでいい、本当はそれでよかったんだ」。

ゲスト:佐野史郎 柄沢次郎 秋山エリサ

脚本:櫻井武晴
監督:和泉聖治