2006年11月29日(水)9:00〜9:54pm第8話「赤いリボンと刑事」

時効間近の橘町事件の犯人と思われる男が、ラジオ番組でその罪を告白した。男は15年前の事件現場におり、犯人しか知りえない事実をべらべらと並べ立てる。偶然、ラジオを聴いていた右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)は事件現場に急行。しかし、すでに男は逃げ去ったらしく、やはり犯人しか知りえない凶器の赤いリボンだけが残されていた。

事件は15年前、橘町のとあるマンションの屋上で当時女子大生の智世(小出ミカ)が、何者かに赤いリボンで絞殺されたというものだった。15年前から事件を追い続け、最近病に倒れて入院した高岡刑事(木場勝己)から事情を聞く右京と薫だったが、自分の代わりに犯人をあげて欲しいと懇願される。
高岡の入院と犯人の告白のタイミングが妙に合っている。不審を抱いた右京は、高岡の入院を知っていた人物を調べ始める。高岡の娘・ちひろ(馬渕英俚可)は、母の死に際にも捜査を優先した父と絶縁状態。母の仏壇に報告した以外は誰にもしゃべっていないという。結局、被害者・智世の両親、元婚約者の西(久松信美)が高岡の入院を知っていることが判明。声の質から西が犯人を装ってラジオに出演したことがわかる。
高岡の入院で危機感を抱いた西が、わざと警察を挑発するような行動に出て捜査を活気付けようとしたのだった。

ラジオの男が犯人でないことがわかり、事件は振り出しに戻ってしまった。高岡の命が長くないことを知った薫は、ちひろに高岡と会ってやって欲しいと頭を下げる。が、頑固なちひろは父を許そうとしない。
高岡が病院から脱走した。橘町の現場近くで保護した右京と薫は、ラジオの男がタクシーで帰ったという情報を高岡から受け取る。ラジオの男が西だということを知らないらしい…。改めてマンションの防犯ビデオの画像を確認した右京らは、西と入れ違いで現場にやって来る初老の男を発見する。西はどうやら男が乗ってきたタクシーを利用したらしい。では、男は何をしに早朝の現場に車で駆けつけたのか?

西が乗って帰ったタクシーを突き止める右京らは、ドライバーから初老の男について情報を得る。男は自宅から乗ったらしいが、なんとも大きな自宅だ。右京と薫はその自宅近くで主婦に聞き込みを。なんと“赤いリボン”でおなじみの石黒ギフトの社長・石黒(有川博)宅だという。妻を亡くした石黒には長男がいるが、今はアメリカに留学中だとか。右京らはその長男が日本で在籍した大学名を聞きだし、伊丹らに身元調査を依頼。右京らも当時のゼミの教授から話を聞くなど、捜査の輪を狭めていく。

 石黒は右京と薫の前で、例のラジオ放送があった当日、マンションに行ったことを認める。実は橘町事件の犯人は息子の信也(加々美正史)。突如、ラジオから流れてきた“犯人の告白”に取り乱し、石黒は現場に駆けつけたのだった…。
 右京らから事実を突きつけられ、最初は否定した石黒だったが、信也が提出した論文から検出された指紋が犯人のものと一致したと知らされるとすべてを告白。不倫が原因で母を自殺に追い込んだ父を憎み、不倫相手に似ているからと智世を殺害、父への復讐を果たした信也。しかし、その信也は留学先のアメリカで事件の翌年に事故死していた。

 犯人を突き止めたものの、逮捕はできなかった。右京と薫は高岡に報告に行くが、思わず薫は「石黒を逮捕した」とウソをついてしまう。15年間の苦労が報われた。喜びにむせび泣く高岡。そんな高岡の前にちひろが現れた。涙ながらに手を握る娘に、「すまん」と頭を下げる父…。
 その夜、高岡が急死した。ウソの報告に胸を痛める薫に、右京は高岡が遺した最期の言葉を伝える。
「人生で一番いい日だった」と。

ゲスト:木場勝己 馬渕英俚可

脚本:岩下悠子
監督:和泉聖治