2006年1月18日(水)
第13話 「最後の着信」
 夜の公園。バス停にやってきた亀山薫(寺脇康文)がタバコを取り出す。しかし中身はカラ。舌打ちするの前に、タバコが紙ケースごと差し出される。「ちょうど止めよう思てたとこや」。酩酊状態の男は、にタバコをケースごと手渡すと、千鳥足でその場を立ち去って行った。
 男は脇幸太郎(桐谷健太)。数日後、公園内で死体となって発見される。所持品は白、赤、黒の携帯電話3台。そのうち白は、脇の手に握られた状態で見つかっていた。死亡推定時刻と着信履歴を照合すると、脇は死ぬ間際まで、白の携帯電話で話していたことになる。その相手を着信番号からたどるも、国際電話への転送システムを使用していたため特定には至らなかった。
 「以前、同じ手口を使った銃の売人がいましたねぇ」。杉下右京(水谷豊)の推理が動き出す。白の携帯電話には名前登録の無い番号が2件、黒には苗字や名前だけの個人名が50件ほど、そして赤には銀行や飲食店などプライベート用と思われる登録が30件ほど入っていた。白が仕入先、そして黒が顧客か? その数からいって、脇は麻薬の売人だったのかもしれない。
 右京の推測通り、脇の覚せい剤がらみの前科が判明。死因は転落による打撲だったが、前科を考慮し、事故と事件の両面から捜査が行われる。
 薬物対策課の角田六郎課長(山西惇)は、課の情報屋、通称“エス”を総動員して、犯人の検挙にあたる。あわよくば、捜査一課を出し抜いて、殺人での立件もしてしまおうという意気込みだ。
 3年前、脇は覚せい剤を入手したと自ら出頭。自首による逮捕だったため、執行猶予がつけられた。逮捕した菱沼貞夫刑事(中西良太)によれば、入手ルートは不明のまま。ゆきずりで買ったということだった。
 その後、角田のエス作戦は功を奏し、鷲頭という麻薬の仲買人が連行される。脇とのつながりはすぐに判明。角田は殺人での自白も迫るが…。
 脇は死んだ日の昼過ぎに、白坂由美(黒坂真美)という女性と会っていた。映画を見、食事をして別れた後、脇は自分の縄張りであった公園に向かっている。さらに行きつけのスナックに寄った後、再び公園に戻り命を落としたらしい。脇の足取りを順番にたどる右京。するとその日、高校の同窓という由美との食事中、脇は携帯電話の使用をめぐって、店と揉め事を起こしていたことが分かる。店員の証言によれば、携帯電話の色は白。また、脇行きつけのスナックでは、相当酔いながらも上機嫌で、結婚して故郷に帰るかもしれないと漏らしていたという。相手は由美なのだろうか?
 その後の調べで、脇は警察の情報屋だったことが判明。3年前の逮捕以来、警察内につながっている人物がいるらしい。国際電話への転送システムを利用したのも、事情に詳しい警察官の知恵だとすると…。右京は、すぐさま菱沼刑事の顔を思い浮かべる。だが、同業者をつついたところで、真相が判明するとは思えない。そこで2人は大河内春樹(神保悟志)監察官のもとに向かった。
 案の定、菱沼刑事は去年、脇がらみの事件を送検せず、監察官の取調べを受けていた。3年前の逮捕に関しても、調書が書き換えられた疑惑があるという。しかし、菱沼刑事は優秀な麻薬捜査のエキスパートとして、とがめを受けることは無かった。
 脇を使って手柄を上げ続け、監察官の調べをもくぐり抜ける菱沼刑事。もし、自分のやり方を知り尽くしている脇が、結婚を機に引退を考えていると、菱沼刑事が知ったとしたら…?