2005年10月12日(水) 夜8時
2時間スペシャル
第1話 「閣下の城」
 “閣下”と呼ばれた男を覚えているだろうか。名前は北条晴臣(長門裕之)。かつて、右京(水谷豊)たちの捜査により殺人犯として逮捕されながら、超法規的取引で自由の身を手に入れた傲慢・狡猾・残忍な元外務省事務次官だ。その閣下から、右京(寺脇康文)にパーティーの招待状が届く。「すべてを水に流そう」。招待状にはそう書き添えられていた。しかし、額面どおりに受け取れるはずもなく…。
 パーティーには北条の保釈取引に関わった、小野田公顕・警察庁官房長(岸部一徳)と瀬戸内米蔵・元法務大臣(津川雅彦)も招かれていた。誰もが疑いの目で北条を見つめる。だが北条は、まるでその視線を楽しむように、突如、若い女性秘書・郷内繭子(高橋かおり)との結婚を発表するのだった。
 その夜遅く、は、繭子嵩人(高杉瑞穂)のキスを目撃する。嵩人繭子の従兄妹で、この城の執事。繭子が秘書になると同時に、雇ってもらえるよう頼み込んだのだという。幼なじみだと言っていたが…。釈然としない思いで城を後にする右京たち。
 案の定、1日と日を置かず事件が発生。アイアンハート城で殺人が起きたのだ。殺されたのは嵩人北条のコレクションの剣で胸を一突きされていた。城の住人は嵩人を入れて3人。当然、残った北条繭子が疑われた。憔悴しきった繭子に寄り添う北条。が、突如態度を一変。「殺したのはこいつだ!」と言い捨て、部屋を出て行ってしまう。
 北条が婚約相手に対して冷徹な態度を取ったのには訳があった。北条は前の晩、繭子に恋人がいることを知ってしまったのだ。財産目当ての結婚。問い詰められた繭子はあっさり白状する。しかしそれでは、北条には嵩人殺しの動機があっても繭子にはないはず。それに、どちらがやったにせよ、今のところ証拠は何もない。
 いったん引き上げる右京たち。証拠はどこにあるのか、嵩人の解剖を見守りながら慎重に推理をめぐらす右京。そして、殺害手口のひとつとして、繭子の犯行説を成立させるのだが…。
 そのころ、北条繭子の2人だけになったアイアンハート城では、右京たちが想像だにしない会話が、密やかに繰り広げられていた。「しかしおまえは役者だねぇ」。「閣下ほどじゃありませんよ」…。