○1警視庁・鑑識課(午後)
デスクに置かれたビンを見て首を傾げている米沢。
そこに芹沢が入って来て、
芹沢「?なんですか、それ」
米沢「例の違法薬物の一斉取り締まりで押収された品のひとつなのですが、分析の結果、覚醒剤や合成麻薬の成分は一切検出されませんでした」
ビンには不思議な紋様と、国籍不明の文字。
芹沢「見たこともない文字ですね」
米沢「杉下警部に解読を依頼したところ、古代ムー大陸文字の一種でした」
芹沢「なんでも知ってるんだ、あの人……」
米沢「“記憶を失う薬”の意味だそうです。匂いを嗅いだだけで、記憶を失ってしまうらしいのですが」
芹沢「まさか、そんな薬、あるわけないじゃないすか」
米沢「ですが、亀山さんの話では本物じゃないかと」
芹沢「米沢さん、かつがれたんじゃないですか……だって、そんな都合のいい薬が」
言いながらビンの蓋を開ける芹沢。身構える米沢。
次の瞬間、記憶が飛ぶ効果音とか画面が歪むとか。
芹沢、ビンの蓋を戻して、元の場所に置き、
芹沢「……今、僕たち、何を話してたんでしたっけ?」
米沢「思い出せません」
そこに三浦が入って来て、
三浦「おい、何やってんだ」
芹沢「三浦さん」
三浦「?なんだ、そのビン」
米沢「例の違法薬物の一斉取り締まりで押収された品のひとつなのですが、分析の結果、覚醒剤や合成麻薬の成分は一切検出されませんでした」
三浦「見たこともない文字だな」
米沢「杉下警部に解読を依頼したところ、古代ムー大陸文字の一種でした」
三浦「なんでも知ってるんだ、警部殿は……」
米沢「“記憶を失う薬”の意味だそうです。匂いを嗅いだだけで、記憶を失ってしまうらしいのですが」
三浦「まさか、そんな薬、あるわけないだろ」
この一連の間、芹沢は、壮絶なデジャヴュに襲われて「?」という表情で見守っている。
米沢「ですが、亀山さんの話では本物じゃないかと」
三浦「かつがれたんだってば……だいたい、そんな都合のいい薬が」
ビンの蓋を開ける三浦。記憶が飛ぶ効果音。
三浦、ビンの蓋を戻して、元の場所に置き、
三浦「……今、何、話してた?」
米沢「思い出せません」
そこに伊丹が入って来て、
伊丹「何やってんだ、お前ら」
芹沢「あっ、先輩」
伊丹「(ビンを見て)?なんだ、それ」
米沢「例の違法薬物の一斉取り締まりで……長いので割愛しましょう。とりあえず、どうぞ」
伊丹の手にビンを渡す米沢。
伊丹「?」
三浦「なんだ、その割愛って」
芹沢「……なんかヘンな気分」
米沢「3度目ともなると耐性が出来て、微妙に記憶が残っているようです」
言いながら、ガスマスクを被る米沢。
伊丹「(三浦たちに)だから、何なんだ、このビン」
三浦「知るかよ」
芹沢「どっかで見た気が……」
無警戒で蓋を開ける伊丹。3人の記憶が飛ぶ。
伊丹「だから、何なんだ、このビン」
三浦「知るかよ」
芹沢「どっかで見た気が……」
伊丹が蓋を開け、再び、記憶が飛ぶ。
その間に、米沢はマスクのまま逃げて行く。
伊丹「だから、何なんだ、このビン」
三浦「知るかよ」
芹沢「どっかで見た気が……」
延々と繰り返す3人のまま……
(了)
|