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スウェーデン・ノルウェー編 撮影日記

ダーラナ地方の民族衣装で夏至祭にやってきた子供たち
北欧の夏
旅の始まりは、スウェーデンの首都ストックホルムから。北欧随一の大都市は、夏の到来に沸いていた。気温は20度前後だが、人々は夏のファッションで街中を闊歩している。特に女性はタンクトップにショートパンツという出で立ち。我々が少し肌寒くて、上着を羽織っているというのに、体感温度が違うのかと戸惑うばかりである。「だってこういうファッションは夏しかできないもの。」と、街中で取材した女性に言われた。よく言う話だが、ファッションとは、ある種の我慢が必要なのかもしれないと改めて思った。
はじめに乗車したのは、2012年登場のSJ3000という新型高速列車。向かうのは、ストックホルムの北西に位置するダーラナ地方。スウェーデンの人々にとって、心の原風景とも称される場所だ。全席指定の列車は満席。スピードこそ日本の新幹線には及ばないが、車内は快適そのものだった。驚いたのは、乗客たちの目的。ほぼ全員が口をそろえて、「夏至祭」に参加するためだと言う。夏至祭とは、夏の到来を祝う伝統の祭り。スウェーデン各地のみならず、北欧全体で行われる祭りなのだ。
夏至祭は、ダーラナ地方の小さな村で取材を行った。列車の走りを撮影しに行った集落で誘われたからだ。「うちのは地元の人がほとんどで、昔ながらの祭りをやっているから是非いらっしゃい。」と。さらに「でも盛り上がるわよ。」とも念を押された。祭り当日は、あまりの人出に正直驚いた。野の花が咲き乱れ、馬や牛があちらこちらで放牧されているような風景の中に、これほどの人が住んでいたのかと目を疑ったものだ。祭りは午後から始まり、夜半過ぎまで飲んで歌って踊ってと盛り上がりを見せていた。ある人に、「夏至祭は我々にとってクリスマスよりも大事な祭りなんだ。」と言われた。それほどまでに夏という時期が、彼らにとって特別なんだということをまざまざと思い知らされた1日だったのである。
ディレクター 松井悟
ストックホルム中央駅出発前のSJ3000
夏の日差しの下 公園に集う人々