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イタリア・フランス編 撮影日記

茂みの中のカメラマンと高速列車
超優良ドライバー・ジャンカルロ氏
外国ロケでは通訳と渉外を担当するコーディネータと並んで、車両のドライバーさんが欠かせないのだけど、ロケの成否を本当に左右しているのは実はドライバーさんなのかもしれない。
僕ら日本人スタッフは現地の言葉に不自由なうえに土地勘もない。そのくせ「日当りの良い平野を走る列車を500メートルくらいの距離から俯瞰で撮影したい。」とか、注文だけは立派だったりする。今回ドライバーを務めてくれている50代半ばのジャンカルロ氏は、そんなわがままな子供みたいな撮影隊の願いをいつも事も無げに叶えてくれるのがすごい。幹線道路を走りながら撮影の狙いを聞くや、平野を見下ろす小高い丘にサッと目を付けて方向転換するジャン氏。20分後、僕らはイメージ通りの列車走行カットが撮れる丘の上の修道院のテラスに立っていた!
突然ロケ車で乗り付けた我々は当然ながら修道院の門番にいぶかしげに迎えられたのだけど、ジャン氏は誠実な態度で事情を説明して、静寂に包まれた修道院の奥深くにまで撮影隊が入って行く算段をスッとつけてくれた。番組に使われている映像の多くは彼のこうした渋い仕事ぶりに支えられています。
さて、人生経験豊富なジャンカルロ氏はイタリアの美味しい食べ物も良く知っている。
旅が最初の1週間をすぎた頃、夕食の席で我々スタッフの興味はある一点に注がれるようになっていた。「今夜、ジャンカルロ氏は何を注文するのか?」南チロルに滞在しているとき、ジャン氏がいつも注文していたのがスペックという北イタリア特産の生ハム。軽く薫製された繊細な香ばしさにみんな虜になってしまった。そしてヴェネツィアに到着した初日の夕食・・・。ジャン氏の注文はイカスミのパスタだ。これも美味しい!ディレクターとしては、ロケ地の美味しいものくらいは事前に押さえて置きたいところだけどそこまで頭が回らないことも多い。そんななか、スタッフのなかに「ジャンカルロについて行けば間違いない。」という雰囲気が醸成されてきたのは、なんだか有り難い。
ディレクター 伊藤 正憲
苦労して見つけ出す俯瞰ポイント1
苦労して見つけ出す俯瞰ポイント2