世界の車窓から

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イタリア・フランス編 撮影日記

ミラノ中央駅で出発を待つ普通列車
イタリアの旅の始まり
8月中旬の朝、僕たち撮影隊はミラノ中央駅で普通列車に乗り込んで古都ヴェローナへ出発した。夏休み中の車内には若者たちがいっぱいで、賑やかなことこのうえない。トランプ遊びに興じて歓声をあげるグループがいる。肌を密着させて睦ましげな10代の恋人たちもいる。「車窓」的には当然カメラを向けたくなる対象に溢れているけれど、なぜか食指が動かない。元気な若者達を横目に見ながら僕は無意識に、可愛いらしい子供の姿を探していた・・・。
初めてイタリアを訪れたのは、もう10年以上前のこと。学生時代の終わりに長い旅をした僕は、南イタリア・カンパーニャ地方の小さな村で、とある家族にご厄介になって1ヶ月ほど過ごしたことがある。その家族には大勢の親戚がいて、小学生から高校生までの従兄弟たちを集めると全部で12人いたのだけど、その子供達が揃いも揃ってほんとに天使のように清らかで可愛らしい。一体どうしてこんなに可愛いのか?村に滞在している間ずっと考察していて確信をもったのだが、それは大人達から愛のシャワーを浴びて育つからだと思う。イタリア人の家族の愛情表現はとてもストレートだ。朝から晩まで抱きしめて顔中にキスを浴びせ、「おお、私の太陽!」とやる。そうすると、自信に満ちあふれた、光り輝くような子供に育っていくらしい。そして僕は、そんな子供が育つイタリアという国が大好きになった。
この経験以来、僕の中には「可愛らしい子供はイタリアが健康な証拠」という勝手なモノサシがある。今回初めて「車窓」を担当することになって緊張していた僕はだから、旅の序盤で自分の知っている大好きなイタリアを確認して安心したかったのだ。
可愛らしい子供を求めて車内をカメラマンと一緒に進む。・・・・・・・・と、いた!光り輝く笑顔の子供たちだ!元気そうじゃないか!イタリア!!挨拶をして撮影の許可をもらい、カメラを回し始めた。ようやくイタリアの旅を始められた、と思った。
ディレクター 伊藤 正憲
車内で楽しそうに遊ぶ子どもたち
今日もイタリアは健康です