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インド編 撮影日記

菜の花を刈り取る男たち
「菜の花はどこへ行った?」
今回のロケで1番の美しい映像が撮れるのではないかと思っていたのが、インド有数の穀倉地帯である北インドのパンジャーブ州の農道だ。パンジャーブとは5つの河という意味。豊かな水源があり広大な平野では3毛作も行われている。
パンジャーブ州の農道は北海道の大平原のよう。立っていると風が通りぬけてとても気持ちがいい。しかしそんな風光明媚な場所での撮影は、カメラアシスタントのIさんが、撮影中に農道の沼に膝まではまり、靴が泥まみれになるというアクシデントに始まり、一筋縄ではいかなかった。(靴を井戸で洗い、乾くまでIさんはドライバーのサンダルを借りて撮影に臨んだ)
列車の走行シーンを撮影するために、事前のリサーチや乗車した時の車窓からの風景を当てに、通過時刻の1時間前に現場に着くように車で向かう。11月、畑では旬のカリフラワー、菜の花、グリーンピースなどを育てていた。特に目を引いたのは美しく黄色に染まる菜の花の畑。聞けば栽培されているのは、菜の花の一種からし菜で、ここパンジャーブ州ではからし菜を入れた「サーグカレー」が名物だそうだ。そこで菜の花と列車を絡めて撮ると決め、幸運にも一面に菜の花が広がる絶好のロケーションが10分程で見つかった。
まだ時間があるので、この場所を第一候補としてさらなる良いポイントがあるのではないかと、農道をぐるぐると走った。似たような景色が広がる沿線ではあるが、なかなか先ほどを越えるロケーションには出会えない。そうこうしていると列車の時間が迫ってきたので第一候補に戻ることにした。
しかし、戻った場所に一面の菜の花畑はない。農道を熟知する現地ドライバーはここに間違いないという。場所は間違っていない。花はどこへ行った? スタッフの間に冷たい風が流れた時、遠くに鎌をもつ男たちがいた。そして、刈り取られた、たくさんの菜の花がそこにあった。花は男たちが刈って行ったようだ。幸いにも近くに菜の花畑がありそちらで走行シーンを撮影。旬の時期、収穫の様子も撮れたので120点だったのかもしれない。
ディレクター 山本和宏
パンジャーブ州名物 サーグカレー
菜の花畑を抜けて列車は進む