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ドイツ編 撮影日記

フランクフルト中央駅のプラットホーム
ストライキと走る人に思うお国柄
またしてもストライキに遭遇してしまった。これで2回目である。最初のストライキは3年前にバングラデシュの車窓を取材していた時のことだった。全国規模のゼネストで、鉄道以外の交通機関や店舗も休業状態。列車の焼き討ちがあったことを地元紙が伝えていた。
今回は、フランクフルトからハイデルベルクへ向かおうとしていた時のこと。前日にストライキがあるという情報は掴んでいたが、影響があるのは、一部の列車だけだと言う。さてどんなかしらと恐る恐るフランクフルト中央駅へ行ってみた。平日の午前8時過ぎ。駅頭に立つと普段と変わらないように見える。ストライキの影も形も把握できない。ひとつだけ違うのは、テレビ局の取材班が多い。利用者のインタビューを撮っている。赤旗や団交といったストライキ特有のムードは全くなかった。
かつて日本でもストライキが盛んに行われていた。国鉄時代は春の恒例行事ですらあった。通勤通学の列車が止まるのだから、利用者としては不便を託つ。ニュースで流れる利用者の声は、「ストライキの趣旨はわかるが、やっぱり不便」という中間着地点をとるものが多かったと記憶する。ストライキは、国鉄が分割化されてから徐々に行われなくなっていったようだ。ドイツの鉄道では、良くストライキが実施されるという。ドイツの利用者は、カメラの前で一体何て応えていたのだろうか…
この日、列車は間引き運行されていた。そのため列車は大混雑。山手線並みのラッシュである。少ない列車に乗るため走る人が続出する。駅で走る人といえば、フランクフルトの後に訪れたハイデルベルク中央駅でも走る人を何人か目撃した。日本の場合はホームの駆け込み乗車が多いが、ドイツではホームではなく、駅のグランドフロアからすでに走っている人が多かった。列車の本数が少ないからだろうか。それだけ走る距離も長くなる。ドイツ人は日本人より背も高く、ストライドも長いから走る姿は豪快である。かつて、「駅で走る」といえば、日本人の専売特許のように喧伝された。けど、そんなことは無い。実はドイツ人も案外駅で走るのであった。しなやかに力強く。ドイツと日本は、やっぱりどこか似ているところがあるような気がする。
ディレクター 浦野 俊実
1888年の開業当時の姿で再建された駅舎
朝は沢山の人でごった返す