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アルゼンチン ウルグアイ編 撮影日記

荒野を進むオールド・パタゴニア急行
パタゴニアを走るオールド・パタゴニア急行
今回のアルゼンチンでのロケは主にパタゴニア地方で行われた。パタゴニア地方とは、南緯40度付近を流れるコロラド川以南の地域の総称である。 しかし、一口に「パタゴニア」と言ってもその表情は本当に様々だ。南に行けば行くほど草木の色は薄くなり、乾燥した景色となる一方で、アンデス山脈の麓に位置するバリローチェに行けば、広大な湖の景色が出迎えてくれるし、南極に最も近い都市ウシュアイアは、さながら北欧のような景色が広がる。
どこの景色もそれぞれに素晴らしいのだが、「これぞパタゴニア!」という荒涼たる景色が楽しめるのが、アルゼンチン南部チュブ州を走るオールド・パタゴニア急行である。 列車に乗れば、車窓いっぱいに山々と荒涼とした景色が広がる。目の前を遮るものは何もない。更に、この列車はカーブが多いので、後方部の座席の窓から身を乗り出せば、乗りながらにして先頭部分の1922年製の機関車や、木造の客車を見渡すことができるのである。
現在はチュブ州のエスケルとエル・マイテンで観光列車として短い距離を走るオールド・パタゴニア急行。かつてこの列車はエスケルからリオネグロ州のジャコバッチまで、不毛の地と言われたパタゴニアを402km走り、パタゴニアの人々の重要な交通手段として活躍、この地の開拓になくてはならない存在だった。 そのため、オールド・パタゴニア急行は今も地元の人々からとても大切にされている。エスケルとエル・マイテンの街中にはかつて使われていた列車が飾られているし、そもそも、現在この列車が観光列車として走っているのは、地元の人々の協力によるものである。
オールド・パタゴニア急行は、ポール・セル―の著書「古きパタゴニアの急行列車」で紹介されて以来、世界中の鉄道ファン憧れの存在でもあるそうだ。列車には乗らず、外から撮影するために集まった「撮り鉄」も大勢いたし、列車内では大人達が童心に帰って嬉しそうにしている様子が印象的だった。
ディレクター 永田奈津子
ラ・トロチータ(小さな機関車)の愛称で親しまれている
車内はのんびりとした時間が流れる