世界の車窓から世界の車窓からテレビ朝日
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スペイン・ポルトガル編撮影日誌
<第一話>

というわけで、スペインにやって参りました!
いやー、皆さんもお聞きになっていると思いますが、スペイン、暑いです。そして、太陽がめちゃめちゃ眩しいです。その上、町が石でできているものだから、その照り返しがまるでレフ板のようであります。もっとも、そのお陰で目の悪い私でも、ずーっと遠くまでクッキリと見渡すことができたりします。

今回のルートは、スペインでは比較的注目されることの少ない「北」がテーマです。
スペイン北部。もちろん、私も初めてです。アラゴン、カンタブリア、アストゥリアス、ガリシア等、地名も「ああ、聞いたことあるような・・・」という、まあ、何ともモノを知らない人間でお恥ずかしい限りでもありますが、それだけに新鮮な発見や驚きがあるのではないかと、ひそかに期待も膨らむのでありました。

でも、さすがはスペインと言うべきか、北にも見所はびっくりするくらいたくさんあります。スペインお約束のムデハル様式の建築もあれば、壮麗な大聖堂もありますし、ユネスコ世界遺産ゥ登録も、ぞろぞろといった感じです。それにしても、昔は(失礼!)本当にすごかったんですねえ。でも、そんな歴史をもしみじみと感じさせてくれる旅になると思いますよ。
スペイン北部は、また、豊かな水に恵まれているそうで、スペインの一般的なイメージとはちょっと違った、急峻な山脈や、緑があふれる景観が広がっているのだそうです。民族や文化も多彩だということで、うーん、どうもイメージできなくて困るのですが…。

とりあえず、最初は近郊列車に乗ってマドリッドからアルカラ・デ・エナーレスへ。続いて、タルゴ特急でサラゴサに向かいます。スペイン、列車はすごく近代的でちょっと驚きました(これまた失礼!)。タルゴ特急なんて、最初は1950年に登場したということなのですが、何だかとても先進的な技術が盛り込まれているようです。
そんなわけで、スペインはなかなか深いですよ。
 

ディレクター中村博郎

マドリッド・チャマルティン駅のタルゴ特急
世界遺産に指定されているブルゴスの大聖堂
北部の山脈沿いを走る列車
<第二話>

テレビの取材をしていると、
よく、まあ、「歴史のある町」とか、「歴史的建造物とか」、見に行く機会があるわけですが、スペインを旅していて感じるのは、「どの町もそうじゃん」ということだったりします。
列車に乗って、走っていくと、日本みたいに、線路沿いにどこまでも家が続いているようなことがありませんから、ハッキリと「次の町」に着いたんだな、ということが判るわけですが、スペインの場合、それぞれに、お城があり、立派な教会があり、石畳の道があります。
で、大抵の場合、それは何百年前からそのままだったりするわけです。
うーん、何だか知らないけど、昔のスペインってとてもとてもお金持ちだったのかなあ…と不思議に思い、また、どうしてぶっ壊して安っぽいビルとか建てなかったのかしら…と、これまた不思議に思ったりします。それって、日本人の発想なのでしょうか。
それとも、空襲で焼けなければ、大丈夫だったりするのだろうか。

そういう長い歴史を持つ建物に住んでいると、何か特別な感慨があるものでしょうかねえ。
それとも、単に崩れそうとか、不便な間取りとか、そういうことなのでしょうか。
勝手に増改築してはならないとか、色々なことがあるのかなあ。
でも、ホテルには、そういう建物があったりしますね。スペイン国営パラドールなんかは、その代表ですけど…。

と、まあ、それはともかく、とりあえず大問題は、似たりよったりな雰囲気が続くと、映像的な感動が薄れると予想されることでありまして、何だか心配になってくるのでありました。

うーん、しかし、私ってば幼少時より一貫して歴史の成績が悪かったのですけど。
だから「中世」って、いつの時代なのだか、定義は何なのでしょうか。
何となく、平べったくて、顔の大きい宗教画が描かれている間が中世だと思ったりしますが。
そんなわけで、「アラゴン」などと言われても、「指輪物語の人だっけ?」くらいの無知さを露呈してしまう私にとっては、スペインの歴史は手強いです。レオンと言われれば「ネクサス6?」を連想してしまう。
カンタブリアと聞けば「アンモナイトの化石が見つかる地層ですか?」などと大ボケをかましてしまうのでありましたが、
でも旅は続いていくのでした。
ああ、もう、大丈夫だろうか。本当に。
 

ディレクター中村博郎

サラゴサのピラール聖母教会
シグエンサの広場にて
車窓に見えるお城
<第三話>

さて、スペインも三週目に突入しました。時差ボケもすっかり消えて体調も上々です。
体調がよくなると、食欲も急上昇してきます。ロケの間は、大体、早朝から深夜まで動いていることが多いので、よく食べます。スペインのような国は、大変に危険でありまして、美味しいものが、結構ありますから…。結果、帰国するころには、何だか太っていたりして、いくら「大変なロケでした」と報告しても、プロデューサー様からは「ふーん、そうですか」と、疑惑のまなざしでギロリと見られてしまうのです。

うーん、では、スペインであんまり美味しくないものの話をしましょうか。
これは、なかなか難しいのですが、私にとっては、トルティーヤのサンドイッチですね。野原の真中で走ってくる列車を撮影しようと待ち構えている時に食べたのですが…。
トルティーヤというのは、スペインの厚い卵焼きで、ジャガイモが入っています。
これだけでも、かなり口の中がモサモサするのですが、でも単体でなら美味しいんですよ。
でも、それをパンの間に挟むっていったい…?
口を思いっきり大きく開かないと、かじることができないばかりか、そのまま喉に詰まりそうな容積であります。それに、そもそもトルティーヤにはあんまり味がないから、サンドイッチの「具」として、非常に不適切だと感じるのですが。
どうして、これをサンドイッチにしようと思ったのだろうか。
…っていうか、それじゃないのを買えばいいんですけどね、単に。
となりには、ハムとチーズとか、そういう定番のサンドイッチがあるわけですから。

さて。
今回、乗車した列車は、ピレネー山脈のカンフラン駅が終点です。
私は、子供のころから、何だか岩山と森と川というセットが好きでありまして、氷河が削った谷なんぞあろうものなら、つい嬉しくなって見とれてしまう性癖があるものですから、このルートは大変に気に入りました。
もっとも、日差しはこれまでにも増して強烈でしたが。

カンフランは、冬には、スキー・リゾートとして賑わいます。
そういえば、かつては、この鉄道は、カンフランから、さらに北に国境を越えてフランスへと続いていたわけですが、今はカンフランが終点になっています。
で、そもそも、この路線が問題になったのには、このスキー・リゾートが影響していたらしいです。
要するにスペインのスキー場の方が安かったから、フランスのスキーヤーたちがスペイン側に来てしまって、フランス側のスキー場は商売にならない。
そこで、フランス側では「この憎っくき鉄道さえなければ」という空気になっていたとか・・・。
そこに幸い、鉄橋が落ちてしまったので、「お金がない」を理由に、この路線は幻となってしまったのでした。
でも、EUになったこともあって、再び建設するという計画もあるらしいです。
数年後には、「世界の車窓から」で、そんな旅が放送できたらいいですね。

それにしても、サラゴサからカンフランの列車は、私たちが乗った列車も、戻っていく所を撮影した列車も、翌朝撮影した列車も、ちょうど1時間、それって、要するにそもそも時刻表に無理があるということなのではないかと思うのですけど。
撮影の予定が何かと振り回されています。
 

ディレクター中村博郎

カンフランの駅
オルデサ・ペルディド山国立公園
<第四話>

スペインというと、とにかく昔はすごかったという、独特の物々しさがありますね。
ヨーロッパには、色々と「昔はすごかった」ということはあるわけですが、スペインの特徴は何だろう。うう、よく判らない。石か。
あ、石と言えば、都庁に使われている石材はスペインから送られたという噂を聞きましたっけ。そうなんですか?聞いている場合じゃないか。

今週は、再びマドリッドから、今度は北に向かって出発しまして…。
最初に到着したのが、ブルゴスです。
ブルゴスの大聖堂は、なかなか、上記のスペインのすごさを感じさせてくれるものがありました。
まず、とにかくデカいです。いえ、もちろん、もっと大きな大聖堂はいくつかあるのは知っていますけど。
でも、何というか、まあ、数字じゃないデカさが感じられます。

そういえば、コーディネーター様に聞いた興味深いお話がありました。
こうした、大聖堂の門の彫刻などに、時々????と思われるものが混ざっていることがあります。
あれは、何なのかと思ったら、要するに、中世と言えども、誰もがキリスト教を信奉していたわけではないのだそうです。キリスト教が嫌いなのに、無理矢理に彫刻製作に動員された職人などが、ちょっとした仕返しにふざけた顔を彫ったりして、それがチェックをすり抜けたりしたのだということでした。ちょっと、その職人の人に親近感を感じたりして。

この大聖堂には、レコンキスタの英雄として知られるエル・シッドのお墓もあります。
残念ながら、ちょっと工事中でありましたが。

エル・シッド、本名ロドリゴ・ディアス・デ・ビバルは、何でも、近くの村の出身らしいのですが。
バレンシアを1094年に陥落させました。シッドとは、アラブ語のシディ(首長というような意味らしい)から来ているのだそうです。
確か、チャールトン・ヘストン主演で映画になっていますよね…。こどものころ、テレビで見ました。
最後は、死んでしまうのですが、そのまま馬に乗せて城から送り出すと、敵がびっくりして逃げるというエンディングだったと思います。「死せる孔明、生ける仲達を走らす」みたいで、三国志のパクリだったのでしょうか。いや、でも、日本にも弁慶立ち往生の話があるしな。
英雄物語の定番のひとつなのだろうか。

案内をしてくれた、大聖堂の神父さんによれば「システィーナ礼拝堂より上」な礼拝堂もあるのだというようなことでしたが。
うーん、この発言は…どうなんでしょかねえ。
まあ、上下を争うものでもないように思いますけど。

ああ、全然関係ないけど、スペイン語も謎なんですけど、私。
よく、「日本人にも発音が簡単」などと云われますけどねえ。
うーん、謎というのは、例えばllaなんかがそうなんですけど。
これ、「ジャ」と読む人がいるでしょ? いるんですよ。
セビージャ、とか、カスティージャとか、マハラージャ、はスペイン語じゃないや、えーっと、まあ、そういうことです。セビーリャとか、カスティーリャ、が正式なのだと思うのですけど。単なる地方訛りということなのでしょうか。

あ、で、ブルゴスです。そうそう。
そういえば、ブルゴスは、ちょうどお祭りの最中ということで、私たちも
期待していたのですが、少なくともこの晩は、ステージでバンド演奏があって、後は飲んで歌って踊って、という、それだけのことでありました。それって、スペインの普通の週末と同じじゃないの?
まあ、夜の11時ころに花火がありましたけど。
日本なら苦情が殺到しそうな時間帯ではありますが、撮影隊は、既に疲れてホテルで寝ておりました。
 

ディレクター中村博郎

マドリッド・チャマルティン駅から北へ
ブルゴスのサンタ・マリア門
<第五話>

いやー、やっぱり海はいいなあ。真っ青な海、砕け散る波、照りつける太陽。
海の、この、独特な開放感というのは、何なんでしょうねえ。それにしても、山と海はお天気がよくて何よりでした。撮影は、とにかく天気が命ですから。これで、海が灰色、山は見えない、世の中真っ暗、人々険しい表情、というのでは、がっかりです。
まあ、「世界の車窓から」は、番組自体が日記みたいなものですから、
それならそれで「ここからは、美しい山の景色が見られるとのことですが、今日はあいにくの曇り空で見えませんでした」ということで列車は走り過ぎていくわけですけど、そういう時のスタッフ一同のじくじくたる思いたるや。そして、編集する時に、また、そのじくじくを繰り返し味わうというわけです。

いえ、もちろん、灰色の海も、感動的な場合はありますよ。でも、スペインじゃなくてもいいですよね、それは。

スペインで「海」と言えば、まずはコスタ・デル・ソルが思い浮かぶのでしょうが、他にもコスタ・ブランカとか、コスタ・ブラバとか、このロケの後半で走る予定のコスタ・ベルデなど様々な海岸があります。
でも、まあ、有名どころは、基本的に地中海に面しているところだったりするのですが、スペインは半島ですから、実はかなりの部分が海に囲まれているのです。

サンタンデールは、スペインの北岸。カンタブリア海に面した町です。
特に特徴のない町ですが、それは、大火でほとんどの建物が焼失してしまったからかもしれません。
で、じゃあ、サンタンデールの特徴は何なんだ、と訊かれると、実は少し困ってしまいます。
普通のビーチに、普通に家族連れが、遊びに来ているという感じです。
でも、王室が昔から夏の保養地として利用していて、その宮殿もありますから、日本で言えば葉山になるのでしょうかねえ。

あと、マドリッドを離れて、地方に来ると、ひとつ安心するのが、
「首絞め強盗」がいないことです。いえ、そりゃあ、強盗さんも移動するかもしれないですけど、一応、マドリッドとバルセロナが二大危険地域と云われておりますようで…。
マドリッド市内を撮影する時なんか、コーディネーターさんはピリピリし通しでした。
観光客が行く場所、すなわちスペイン広場や太陽広場がもっとも危険だということで、「ここにいる人は全員が泥棒だと思ってください!!!」と
厳重に注意をされました。
いやー、でも、全員が泥棒で一度に襲ってきたら、どうしようもないんだけどなあ。

それにしても、北に来ると、本当にスペインっぽくないです。
緑に覆われた山がうねうねと続き、清流が流れ、川の両岸には木が生い茂っています。
牛が草を食み、何だかのどかな風景です。建物も、何というか、普通っぽいんですよ。
普通って何だよ、というツッコミは、まあ、あるでしょうけど。
もちろん、だからこそ、人気があるということはあるんですよ。
私たちも、既にスペインに何日もいますから、この瑞々しい風景は、新鮮で気持ちいいです。

うーん、他には…そうですね、素通りしたパレンシアの話でも書いてみますか。
パレンシア。 バレンシアではありませんよ。
ちなみに、今回は、後日、バレンサという所にも行く予定がありますが…。
こういう言葉の語感って、どうなんだろ。日本語だったら、ある種の勘というのか、感覚というのか、あると思うのですけど、外国語だと皆目見当がつきませぬ由。
と、すぐに脱線しますが、パレンシアです。
パレンシアは、歴史もあるし、かなり大きな町なのです。周りは穀倉地帯で、その集積中心的な役割もある他、様々な産業があるようです。
が、あんまりパッとした見所がないのです。
何故かと思ったのですが、何でもスペインでは1520年ころに、国王に対する都市の反乱があったのだそうで。
その時の、盟主的な役割をパレンシアは果たしてしまったらしいです。
だから、その後様々な意地悪をされてしまって、何だか繁栄できなかったみたいなのでした。

他に、印象的だったのは、とにかく自転車が多いことです。
サラゴサでも、自転車巡礼親子に出会ったけど。
スペイン人って、ほら、あんまりフィットネスに熱心という印象じゃなかったので、私はかなり意外な印象を受けました。
こういう、山や湖などのある地方を行く列車は、自転車乗りの人たちが
ぞろぞろと乗り込んでくるのですよ。
ほとんどの、自転車ライダーは、衣装から何から、バッチシという装備です。
もちろん、隣の町まで商いに行きます、というような自転車乗りのおじさんなんかもいますけどね。
自転車乗りの人たちも、普通にホームで待ち、ステップのある乗車口から乗り込むので、これがなかなか大変です。
んでもって、多分、野山で何時間か自転車した後は、また列車で帰るんでしょうねえ。
それはもっと大変なような気もするけど。

まあ、でも、自分たちの心配をしている場合なのでしょう、私たちとしては。
 

ディレクター中村博郎

サンタンデールの海
車内の自転車ライダー撮影中
<第 六話>

突然に、冬になりました。
レオンの朝は、15度です。町を行く人がコートを着ています。
そんなわけですから、番組を見た人は「これ、昔、冬に撮影したのを混ぜて放送しているんじゃないの」などと 思わないでくださいね。
しかし、まあ、元々レオンの辺りは、寒いは寒いみたいで、窓が二重になっている建物がたくさんあります。

天気もぱっとしないです。どんよりと曇った空。
うーん、スペイン北部には「水着の上にレインコートを着て行け」などということわざもあるとかで、 本来、雨が多い地方なのだそうです。雨の多いスペインというのも、何だかピンと来ないのですが、 まあ、そういうことです。こういう天気が続くとヤバイよなあ・・・と、 心配しつつも、お天気には勝てない撮影隊なのでありました。

さて、レオンです。
レオンも、中世には羊毛で富を築いた町のひとつだそうです。
そして、ここにも、巨大な大聖堂があります。
ほら、そこ!「また大聖堂かあ」などと落胆しないように
レオンの大聖堂は、ちょっと違いますよ。ステンドグラスで世界に名をはせているのです。
「ステンドグラスがすごい、って、まあ、でも、ステンドグラスくらい何処にでもあるんじゃないのぉ?」
などと、油断して訪れた私は正直大変に驚きました。
ステンドグラスだらけ、なんですよ。もう、ずらーっと、ステンドグラスです。
いやあ、一点豪華的なものと違って、空間全体というのは、雰囲気が全然違います。
スペインの大聖堂って、例えばイタリアのような壁や天井が絵画だらけというような 気持ちのよさは、少なくともこれまでなかったですけれども、 ここは、なかなかよいものを見たという気がするわけです。

ここのステンドグラスは、13世紀から20世紀まで、様々な時代に作られたものがあります。
古いものは、さすがに、暗いです。ガラスの不純物が多いためだということです。
もっとも、それが味わいだったりもすると感じますけど。
また、遠いとか、小さいとか、そういう見にくさもあるので、双眼鏡なんぞを持ってくるのが 正解かもしれません。あと、やっぱり見上げつづけるのは、首とか痛くなりますけど。

ステンドグラスに描かれている内容は、もちろん、聖書の様々な場面ですとか、聖人たち、預言者たち、 教皇たち、王族、さらに竜やその他の動物、植物、それから中世の生活を描いたものもあります。
紋章もありました。
あ、紋章で思い出したけど、レオンって、ライオンのことなんですよ。
ライオンと、お城の紋章をよく見かけましたが、これがカスティーリャ・レオンなわけです。
町の中を見渡しても、橋の横にはライオン像があるし、 町のあちこちに、ライオンのロゴマークがあったりします。水道局のマンホールのふたとか。

そういえば、私は初めて知ったのですが、アストゥリアス王国の首都がオビエドからレオンに移って、 レオン王国と呼ばれるようになり、そこからカスティーリャと統一して、カスティーリャ王国が誕生し たのですねえ。
で、どんどん、親国を凌駕して育っていったというわけです。

そういえば、スペインの中世に興味を持つには大変によいマンガがあります。
アルカサル −王城― (青池保子作) 12巻で完成していないのですけど…。
それって、多分主人公が最後には負けちゃうからじゃないのかなあ。
内容は、14世紀、ペドロ1世とエンリケ2世との争いを中心にした物語で、 アラゴン王ペドロ4世や、ポルトガル王ペドロ、えーっと、何世だっけ。
どうして皆、ペドロなのだろうか…。
と、まあ、そういうことです。
カスティーリャは内戦になり、アラゴンとも戦争が続き、グラナダが離反したりしまして。
だから、ソリアに侵攻、とか、シグエンサに幽閉とか、 ブルゴスで会議とか、カラタユーが陥落とか(適当に書いてます)、今回旅した場所が
ページをめくると、あちこちに散らばっておりまする。

それにしても、まあ、三国志とか中国歴史ものを読んでいてもそうですし、 イギリスなんかも、そうなんですけど、スペインも激しく裏切りやら暗殺やらが続きますねえ。
どういう利害の計算の上に裏切りは成り立っているのだろうか。
だってね、一応、現在でも自分は貴族で領主様なんですよ。
まあ、いいじゃないですか。それで普通にやっていても。
というのは、敵方と内通した場合のリスクを考えてみると…。
1.内通がバレて死刑。
2.内通はバレないまま戦争に突入したものの、結局負けてしまって戦死又は死刑。
3.戦争には勝ったものの、戦死。
4.戦争には勝ったものの、結局新王が裏切って褒美をくれない、又は死刑。
これほどの危険を冒してまで、より広い領土、より高い身分が欲しいのかなあ。

しかし、一方で、「契約書」が厳しいですよね。日本の中世がどうだったのか、よく知りませんが。
スペインでは、何かというと、やはり、契約だし、ルールだし、王様だし、 というあたりが、興味深いところでもあります。

あ、話が脱線しまくりでしたが、そんなわけでレオンでした。
ここから、西に向かって、“本場”リアス式海岸に行きます。
 

ディレクター中村博郎

レオンの朝
レオンの大聖堂
大聖堂のステンドグラス
<第七話>

スペインの旅も、そろそろ終わりに近づいてきました。何か、すごく遠くまで来た気がします。
レオンからは、なかなか大変でした。スペインでは、どうも、長距離の急行などがよく遅れる傾向があります。スペインの鉄道は単線が多いから、一度タイミングが狂い始めると、そのすれ違い個所の都合で、あちこちで「待ち」が発生してしまうのです。だから乗り換えなんかがあると、待ち合わせの列車にも影響したりして…。実際我々がレオンから乗車した「昼行列車」という意味だと思われるディウルノも、レオンの時点で1時間弱遅れていましたね。

そうこうしながら、ようやくスペイン北西部、ガリシア地方に到達。地図で言うと、左上の角っこです。この、「ガ」で始まる語感なのか、「ア」で終わる語感なのか、異国感があっていいですよね。友人が「ガリシアはブルターニュとそっくりだ」と言っておりましたが、私はブルターニュに行ったことがないので、その真偽は判りません。うーん、でも建物が違いますね。南の方だと、白い壁にオレンジ色の瓦の屋根とか、まあ、何かそれに近い雰囲気があると思うのですけど、こっちの方は、あんまり変哲のない灰色っぽい石を積み上げた壁と、これまた暗い色の屋根で、だから町や村がどれも沈んで見えがちです。

ガリシア地方の海岸は、入り組んだ海岸線、いくつも入り江があって、これが「リア」と言うんですよ。そう「リアス式海岸」とは、ここが本家本元なのでありました。小学校で習ったリアス式海岸。私は、これまで何か地質学的な構造か何かの専門用語だろうと勝手に思い込んでおりました。

ガリシア地方は、また、住人の多くがケルト民族なのだそうです。だから、ガリシア音楽と呼ばれるものを聞くと、アイルランド民謡みたいな雰囲気があります。バグパイプ出てくるし。

そういえば音楽のことも考えないと。番組に音楽をつけるのは、とても楽しい作業ですが、同時に、番組の善し悪しを左右するので難しい作業でもあります。今回は、スペインだから、まあ、スペイン音楽中心かなぁ。あれ、スペイン音楽って何だ?フラメンコだと「あれはアンダルシアン」とか「ヒターノでしょ」とか異論が出てきそうだし、正統派クラシックのグラナドス、アルベニス?うーん、難しい。

スペイン、でも、あちこち巡って、本当に面白かったです。(あ、これを読んでいる方々には申し訳ないけど)まあ、かすっただけで行けなかった所もいろいろとあって、惜しまれますけど。ルーゴの名高い城壁とか。エチョとアンソの村とか、テルエルとか、バリャドリッドとか、ピコス山中の祠とか、あと少しなんだけど、届かなかったです。まあ、そういう場所が残っていた方が、いつかまた行く理由になっていいんですけどね。と、前向き前向き。

ディレクター中村博郎

ガリシア地方「ア・コルーニャ」の港
ア・コルーニャは窓の町!?
サンティアゴ・デ・コンポステーラの町
<第八話>

さて、いよいよ今週からはポルトガルです。
列車で国境を越える、ってどんな感じかと思っていましたが、別に何もありませんでした。あはは。ほら、昔の映画なんかで、国境には大きな鉄橋がかかっていて、雪が降っていて、そこを何故だか知らないが駈けて行くと、後ろから機銃掃射されて、バタリ、なんていうのがよくあったもんです。

ビーゴの町から、海岸に沿って南に下り、ミーニョ川を渡ると、そこはもうポルトガルなのです。ポルトガルの国境の駅は、バレンサです。ミーニョ川に面しては、要塞化されていて、昔の大砲が今もスペインに向かって置かれています。時々撃ったりはしていないと思いますが。昔は仲が悪かったことがよく判りました。対岸の、スペイン側の町も、やはり城壁に囲まれています。そうすると、やっぱり、未だに根強い対立とかありそうな気がしますが。でも、現実には、スペインから列車や車で続々とポルトガルに、買い物や、海水浴に来るんですよ。安いし。日本人の感覚からすると「国境を越えて海水浴かぁ」と思ってしまいますけどね。(でも、ハワイとか?)

ポルトガルに入ると、やはり違いますね!これが、何が違うのかと聞かれると説明するのは難しいのですが。違います。人の雰囲気か。空気か。そう思う一方で、スペインのガリシア地方とは、似ている点も多いと感じました。例えば、ポルトガル北部の名産、グリーンワインは、よく似たものがガリシアにもありましたし。また、食物貯蔵庫のオレオとかも、ガリシアとポルトガル北部に共通して見られます。オレオ、チョコレートクッキーじゃないですよ。

ポルトガル国鉄、とりあえず快適です。車掌さん、親切だし。車体は銀色が多いです。スペインでは、各駅・各列車に撮影の連絡は行っていないんです。だから、駅や列車内で個別に許可証を見せて、それで了解を取って撮影開始みたいなことになり、その間に撮りこぼすなんてことも無いではなかったのでした。ポルトガルは、逆に全部連絡は入っているみたいで、だから、基本的には協力的です。だけど、ポルトガルでは、何故か「運転室」「車掌室」は、スペイン以上に立入禁止が多いのが頭痛の種。そして、ダイヤが変っている…。何でも、来年のユーロカップ2004に向けて、鉄道も大工事とかで、列車の欠便やら、出発駅変更やら、色々とあるんです。そういうことは、ポルトガル国鉄本部では教えてくれなくて、というか、把握していないのかもしれなくて、現場の駅長さんが頼りだったりしています。
「午後の、このレジョナーレに乗ります」
「あれ、それは、今日は走らないよ」
「え・・・・・!!!」
などという会話が、日々のように、行われているわけであります。
(ポルトガル語が判らないので、推測ですが)

ディレクター中村博郎

風に揺れるポルトガルの国旗
バレンサ駅にて
ポルトガルに多い銀色の車体
<第九話>

ポルトガル第二の都市、ポルト。私は初めて来ました。っていうか、まあ、今回旅をしている所はほとんど全部が初めてだったりしているのですが。でも、やっぱり町はどんどん変っているようです。ドン・ルイス一世橋。上は、車通れなくなって遊歩道化。そして、ポルトの対岸、ガイア市の川べりは、何かオシャレなレストランがずらり。あと、地下鉄の工事が盛んに行われていて、その影響か、ポルトガル自慢のタイルがバラバラと落ちたりもしているのだそうです。

あと、霧がすごかった。早朝は視界がほとんどなし。午後になると、一応、晴れてくるのですが、海の方向を見ると、やっぱり真っ白です。これでは空撮ができません。(泣)

それにしても、かなり、変なもの見てきました。ボン・ジェズスとか。階段を登って、その登ることで、功徳を積むって言うんですか。マニ車回すみたいなこと?宗教関係弱いので言葉に不安がありますけど。だから、膝をついて登る人もいるらしいですよ。五体投地みたいなこと?で、登って行くと、途中にお堂があって、それぞれに、キリストが十字架に磔になるまでの場面がジオラマで再現されているのです。それを、お参りしながら、多分、その同じ贖罪的行為と苦痛体験をするという意味もあるのだと思います。これ、よく似た場所が、北イタリア、オルタ湖の近くにもあるんです。そっちは、お堂の数が多いのですが。あと、エルサレムに行くと、キリストが歩いたのと同じ道(実際にはその後当然区画整理などが何度も行われているらしいけど)を、十字架を背負って祈ったり賛美歌を歌ったりしながら歩いている人たちに出会いますよね。大変そう。

で、およそ宗教心のない私がボン・ジェズスで興味を持ってしまったのは、「水力ケーブルカー」でした。上にいるケーブルカーに注水。いっぱいになると、その重さでケーブルカーは下がっていく。代わりに、下にいたケーブルカーが、引っ張られて上ってくるという、すっごい原始的なシステム。うーん、ポルトガルと言うと、必ず出てくる気がするケーブルカーだが、このような所にも…。恐るべし。ケーブルカーが好きな国民性なのだろうか。

さて、話を戻してポルトと言えば、ポートワインですが、ワインセラーがぞろぞろとあるのは、実は対岸のガイア市なのです。そういば、今回学習したのは、「ポートワインのビンテージは開けたらば24時間以内に飲まなければならない」ということでした!!!!!!
私、その昔、ビンテージというのを買ったことがあって、で、開けた時にはほとんど飲まずに、後日飲んだら、ぺっぺっぺ、という激不味だったことがあって、「ビンテージ何するものぞ」と思っていたのでしたが、それって、単に私が間抜けだったのでした。でも、その辺りの詳しい化学変化的情報は不明なままです。

あー、何だか、ワインの話を書いていたら、飲みたくなってきたので、これでおしまい。
グリーンワインとイワシでも食べに…。ちょっと、ベタかな。

ディレクター中村博郎

ポルトの港
ブラガ郊外にある巡礼地:ボン・ジェズス
水力ケーブルカー
<第十話>

ポルトガルにも山岳地帯があるって、知っていましたか。私は知りませんでした。まあ、山と言っても、日本から見ればかわいい2000メートル未満ではありますが。んー、でも、知らなかったです。「お前が知らないだけだろ!」と言われれば、まあ、その通りなのですけど。というわけで、今週は、コインブラから、東へと進み、山を登って行くのでした。

そうそう、ポルトガルの駅は、あちこちから出入りできるところが多くて。撮影に少々不都合ありです。乗客かと思って撮っていると、ただ、通り道にしているだけの人だったりするし。ありゃ、みたいな感じです。コインブラB駅は、まさしくそういう駅でした。ここからグアルダの町までは、急行列車です。あんまり外見は変らないけど。それにしても、「B駅」って、どう思います?東京も、あれこれ名前を考えるのをやめて、ABCにしてはどうかと一瞬考えてみましたが、26文字では全然足りないことに気がつきました。
終点のグアルダ、特に何もないです。歴史のある町で、今は、避暑地らしいけど、何か、そういう華やかさとか、清涼感とか、なかったなあ。
グアルダから、コビリャンには、一両編成のすんごい古そうな列車です。実年齢というよりは、その雰囲気なんですけどね。前にずらりと6枚の窓が微妙な角度で丸く並んでいるのが、何とも好ましい。一応、一等と二等が中で分けてあって、中間にトイレがあります。今では、その区別はされていません。全席自由です。つーか、お客さん、ほとんどいないし。

山の西側斜面に沿って、走って行くのですが、もちろん単線。揺れます。そういえば、私たちは、終点コビリャンまで行きましたが、その復路は、山火事に遮られて、グアルダに戻れなかったようです。かなりボウボウ燃えていましたからね!ヨーロッパ、猛暑というのは聞いていると思いますけど、そういう時には山火事も自然に発生しやすく、さらに、放火(!)も珍しくないそうです(出典:コーディネーター堀さん)木材の値段をつり上げるためだとか。そういえば、自分を撮らないでほしいと言った怪しい男が乗客にいたけど、何かカメラに映ってたりして…

まあ、それで、山に話を戻しますと、エストレラ山脈というのがあるわけです。ポルトガルっぽくない、断崖絶壁系の岩山。ポルトガル唯一のスキー場がある場所です。ここでは、有名なエストレラ・チーズと、エストレラ・マウンテン・ドッグを見ました。エストレラ・チーズは、世界三大チーズなのだそうです。(出典:コーディネーター堀さん)

山岳地帯を回って、コインブラに一度戻ります。本当は、もう少し足を伸ばして、スペイン国境付近にある城壁に囲まれた村々とか、ストーンサークルとか、いろいろと見たい衝動にかられますけど、これは鉄道の番組ですから。そこを忘れないように。

ディレクター中村博郎
山岳地帯をゆく小さな列車
山火事との遭遇
エストレラ・チーズを作る女性
<第十一話>

というわけで、スペイン・ポルトガル、11週に及ぶ列車の旅もいよいよ終わりの時がやってきました。くすん。くすん。コインブラから、海岸線を南へと下り、首都リスボンへ…。さすがにポルトガルに来てからは、ポルトの濃霧とか、真っ白なブラガとか、ちょこちょことお天気に翳りが見えてきていたのですが、海岸の町、フィゲイラ・ダ・フォスに行く日は、とうとう雨。で、その海岸は、まったく見事なまでの寂しさでありました。まだ7月だけど、10月あたりの日本の海に行った気分?何だか、ポルトガルでは、海に行くとなると、天気がよくないということが続いているような…。これも日頃の行いか?

そして、いよいよ全行程の終点、リスボンに向います。何か、実感が湧いてこないんですけどねぇ…
この列車の中で、ポルトガル名物、ヒゲおばさんを発見!どうして、ヒゲなんでしょうか。やっぱり、あれは、手入れをして、あのように伸ばしているわけですよねえ?要するに、ポルトガルでは、あれがセクシーってことか? などと、謎はまったく解けぬまま(当たり前か)、列車は、水田地帯を走り、松林を走り、風車の横を走り、アズレージョの駅を走り…、やがてナザレに到着。

ナザレは、とても普通の海水浴場でありまして、どうして風光明媚な名所旧跡として名を馳せるに至ったのか、教えてほしいという感じでした。「過去を持つ愛情」って、見たことないんですけど、そんなに素晴らしかったのでしょうか。いえ、たまに、黒装束のおばあさんも見かけることは、見かけますが。でも、そんな、期待されるような雰囲気は、全然ありませんよん。ちょっと、拍子抜けです。どうして「ちょっと」で済むかというと、もう、そうやすやすとは期待をしないだけの、長い痛い目経験の積み重ねがあるからですな。はっはっは。

さて、ラスト・レッグもどんどん終わりに近づいています。フィゲイラ・ダ・フォスからの長距離列車は、リスボンの郊外の、カセン駅が終点。ここからリスボン市内へは、普通の近郊列車に乗り換えです。リスボン、ロッシオ駅まで約30分。カセン駅からは、思い切り、車内の雰囲気が悪いです。この路線は、リスボン郊外の、いわゆる、"あんまりよくない地域"を走っているのだそうで…。ということは、夜中なんかに一人で乗るのはよくないのかもしれませんね。どうなんでしょ?

なんてことを、ぼんやりと考えている間に、列車は、リスボン、ロッシオ駅に到着です。まあ、この後、日本までのフライトも、なかなか長いものがありますので、旅を「終わり」とか言ってよいものかどうか。とりあえず、スペイン・ポルトガル、予定通り完走しました。何だか、このまま、ずーっと走っていたいような気もするけど、それって、ある種の現実逃避?やばいかな。何だか。

ディレクター中村博郎
閑散としたフィゲイラ・ダ・フォスの海岸
ナザレの海辺
リスボンの町並み
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