放送したお宅
2012年12月7日(金)放送
東京都中野区・宮下邸
− アプローチを生かす旗竿地の家 −

2012年5月

敷地面積 84平米 (26坪)
建築面積 45平米 (14坪)
延床面積 115平米 (35坪)
木造(在来軸組工法)
建築費:4020万円 坪単価:116万円



12mという長いアプローチを持つ旗竿地。通常は何も建てないことの多い“竿”部分に塀を設けました。この塀にポストやメーターボックス、照明を収めています。

2階にある玄関へは外階段で上がります。玄関ホールは居間と空間を共有しますが、居間へ入るには一旦奥まで進んでから。正面に坪庭があります。床はウェンゲとタウキャンの寄木。

居間の広さは約11畳。玄関・階段と空間を共有する他、3階まで約6mの高さを持つ吹き抜けによって面積以上の広がりを生んでいます。

天窓は2.45×3.2mサイズ。Low-E複層ガラスを使用した窓としては現在の製作限界に近いものです。2階にはこの他、子供室と妻のアトリエがあります。

3階にある食堂は広さ約10畳。傾斜した天井の最大高は3.6m。アプローチに面した東面は大開口、隣家に迫る南面はスリット窓で、プライバシーと開放感を両立した開口部です。

台所は完全独立型。南北に大きな開口を設け採光・通風します。台所の上には隠れ家のようなロフトを設けました。

2階の収納のような扉に隠された階段で1階に下りると水回り。浴室は坪庭に面しています。坪庭の作庭は施主自ら。

姿見が隠し扉になっていて、中は夫のアトリエ。カーテンの裏が主寝室になっています。

建築家のプロフィール
宮下信顕(みやしたのぶあき)
1972年 長野県に生まれる。
1995年 東京理科大学理工学部建築学科卒業
1997年 東京理科大学大学院修士課程修了、同年竹中工務店入社。
現在 竹中工務店東京本店設計部課長
2011年〜 東京理科大学非常勤講師

株式会社竹中工務店 東京本店 設計部
所在地 〒136-0075
東京都江東区新砂1-1-1
電話 03-6810-5009 (内6711)
FAX 03-6660-6028
E-mail miyashita.nobuaki@takenaka.co.jp
URL http://www.takenaka.co.jp/

建築家の一言
敷地はJR中野駅にほど近い閑静な住宅地に位置する。典型的な旗竿形状の狭小敷地に、夫婦と子供1人:家族3人の住まいを作る計画である。「旗」は「竿」に十分な強度がなければ自由にたなびく事も出来ないことから、まず「竿」部分の空間的強度を上げることを意図した。そこで、竿地に1枚の界壁を挿入し、そこに必要な要素を全て複合する事にした。メーターボックス・ポスト・駐車場のニッチ・照明・キャンティレバーの階段までを一体化し、アプローチ空間を3次元的に拡張していった。 「竿」に続く居住空間としての「旗」部分は3層構成とし、限られた規制の中で最大限のエアボリュームを導き出すために必然的に半地下の構造を採用する事となった。アプローチ空間を屋内に引き込み、パブリックの延長として2階にはエントランスホールと一体化した広場的空間(リビング)を設け、吹抜を介してセミパブリックスペースである3階のキッチンとダイニングに緩やかに接続している。北側の傾斜屋根部には、リビングからは空を見上げるトップライトとして、また、ダイニングからは水平に視線が抜けるピクチャーウインドウとして2役をこなす大きな窓を設けている。3階東面には朝日を存分に取り入れるべく、可能な限りの開口部を設けた。1階は半地下のプライベートスペースとして、寝室・アトリエと浴室を配した。建物中央部に設けた僅か1畳程の坪庭を介して各フロアに光と風を導き、同時に家族の気配も繋げながら3フロアが1枚の「旗」として力強くたなびくことを意図した。
渡辺篤史の感想
シンプルな外観、決して大きくない建物ですが、中には驚きが詰まっています。お風呂にいながら坪庭を楽しめたり、鏡の裏にご主人のワークスペースや寝室が隠されていたり、遊び心があふれています。ページをめくるごとに次から次へと新たな発見がある本、そんな印象です。こうした遊び心が、限られた空間の中に生活の豊かさを与えてくれるのではないでしょうか。