放送したお宅
2012年3月9日(金)放送
神奈川県横浜市・西本邸
− 光る天井の“平屋” −

2011年3月

敷地面積 115平米 (35坪)
建築面積 74平米 (22坪)
延床面積 85平米 (26坪)
木造
建築費:非公開 坪単価:非公開



周囲に高いビルが建ち並ぶ市街地。前面道路から約2.6m下がった敷地。ここで採光を得るため、29個の天窓を設けました。(右写真:ナカサアンドパートナーズ 藤井浩司 )

室内は約23畳大のLDKを中心にした、ほぼワンルーム。天窓からの明かりを全体に行き渡らせるため、一部をロフトとしながら実質的には平屋のような間取りとなっています。

天窓の内側にアーチ形に嵌めた半透明のアクリル板が、地上5mで捉えた自然光を家全体に拡散します。空が見えるよう、2カ所は敢えてアクリル板を外しています。

全長3mを超える大きな食卓の天板はビルの外壁用ガラス。この建物最大の特徴である天井の映り込みを考慮し、建築家がデザインしました。

台所は、居間側から見た時の印象をすっきりさせるため、手元の壁を高めに設定。一部を、ガラス器のディスプレイ棚にしています。天板は大理石。

家族各々の寝室と書斎の5つの個室は、高さ約1.8mの壁で仕切っただけ。天井を開ける事で、自然光が届き、家族が互いの気配を感じつつ過ごせます。

ロフトへは階段の他、子供室の梯子からも上がれます。息子さんは、ここに寝転んで読書するのがお気に入りとか。

水回りは南西角に集約。洗面室の天井には半透明の天窓を設け、ロフト越しに自然光を取り込みます。

建築家のプロフィール
保坂 猛
1975年 山梨県生まれ
1999年 横浜国立大学建設学科建築学コース卒業
1999年 建築設計SPEED STUDIO共同設立・主宰
2001年 横浜国立大学大学院修士課程修了
2003年 建築設計SPEED STUDIO解散
2004年 保坂猛建築都市設計事務所設立
2004ー 国士舘大学非常勤講師
2010ー 法政大学非常勤講師

保坂猛建築都市設計事務所
所在地 横浜市中区弁天通2-25関内キャピタルビル5F
電話 045-651-2540
FAX 045-663-4407
E-mail info@hosakatakeshi.com
URL www.hosakatakeshi.com

建築家の一言
Daylight House

これは、空からの自然光の下で生活をする住宅です。
敷地はJRの駅から近く、周辺には戸建住宅や10階建てのマンションや事務所ビルなどが入り交じって建っています。ビルの谷底のようなこの場所では、地上面にはほとんど太陽の光があたりませんでした。この場所に、夫婦と子供2人が住む住宅を計画しました。 建物の構成としては、基準となるグリッド(約1500mmx1600mm)を敷地にめぐらせ、天井の高いワンルームのヴォリュームとし、天井高の半分程の高さの建具や家具などにより寝室、子供室、書斎などを仕切っています。どの部屋に居ても天井面全体の広がりが感じられます。屋根に設置した29個のトップライトから取り込んだ光を、その下の曲面アクリル天井面へと落とし柔らかな拡散光に変換して室内を照射しています。また、アクリル面と屋根の間は空気層とし、夏期は太陽光による熱気を動力換気により建物外へと排出し、冬期は空気の動きを止めて空気層による熱的バッファーを形成し、室内の熱環境を安定させています。建物の中に入ると、暗いビルの谷底のような敷地であることが信じられないくらい、空からの光は十分に豊かです。この住宅は「Daylight House」と名付けました。Daylightは単なる太陽の光を表すものではなく、one day の光の美しさを意味しています。朝日から始まり日が陰り、日が落ちそして月が昇り、やがて月光は光を薄めて行きながら朝日と入れ替わる。その24時間の空からの光の美しさを豊かに体現した住宅です。
渡辺篤史の感想
とても豊かな空間ですが、これが完成するまでは大変だったでしょうね。ビルの谷間。変形敷地。ポイントは光の取り入れ方です。29個もの天窓が、普通なら採光を望めそうもない場所で明るい空間を実現しただけでなく、なんとも言えない柔らかい雰囲気を作り出しています。太陽の有り難みを改めて感じます。そして、家族4人の距離を縮めてくれる建物です。