放送したお宅
2012年1月6日(金)放送
山梨県富士吉田市・川口邸
− 屋内に庭のある家 −

2011年4月

敷地面積 174平米 (53坪)
建築面積 102平米 (31坪)
延床面積 102平米 (31坪)
RC造
建築費:非公開 坪単価:非公開



富士山を間近に見る敷地。寒冷地に対応するコンクリート外断熱住宅です。ギザギザ屋根の4か所の「尾根」部分が全て天窓になっています。

正面から奥へ行くに従ってプライベートの度合いが高まる間取り。一番手前は屋外のように見えて屋内、食堂です。正面のガラス戸は折れ戸で全開できます。

建物の幅いっぱい、全長約8mの天窓の素材は厚さ2cmのアクリル。通常のガラスの約4倍の強度を持ち、断熱性も高いそうです。雨の日には美しい波紋が広がります。

「2段目」は約15畳大の居間・台所。居間部分はカーペット敷きです。庭のような食堂との間にもガラス戸を設け、冬の冷気を遮断します。

台所はアイランド型。カウンターの色は黄色で、木製の窓枠と合わせています。レンジフードも躯体と同時に作ったコンクリート製の枠の中に収めました。

「3段目」は個室エリア。中央の子供室は現在は居間と一体の空間。将来は引き戸で仕切れるよう既にレールが付けてあります。ベッドも収納も仲良く3人分です。

「3段目」の西は主寝室と書斎。仕切りはガラス戸なので開けても閉めても開放的です。天窓に布を掛けて日除けにしています。この日除け用のフックは他の天窓にも付いています。

「3段目」の東は水回り。洗面は2か所。トイレ、浴室にも天窓があり、暗くなりがちな北の端にありながらも明るい空間となっています。

建築家のプロフィール
保坂猛
1975年 山梨県生まれ
1999年 横浜国立大学建設学科建築学コース卒業
1999年 建築設計SPEED STUDIO共同設立・主宰
2001年 横浜国立大学大学院修士課程修了
2003年 建築設計SPEED STUDIO解散
2004年 保坂猛建築都市設計事務所設立
2004ー 国士舘大学非常勤講師
2010ー 法政大学非常勤講師

保坂猛建築都市設計事務所
所在地 横浜市中区弁天通2-25関内キャピタルビル5F
電話 045-651-2540
FAX 045-663-4407
E-mail info@hosakatakeshi.com
URL www.hosakatakeshi.com

建築家の一言
山梨県富士吉田市に30代の夫婦と3姉妹のための住宅を、母屋に増築できないかという依頼からスタートした。周辺は、住宅が密集しているが、所々に原っぱや畑、雑木林、舗装されていない道路があり、おおらかなイメージを持った。さらに野生のキジや孔雀も時々現れるとのことだった。密集した住宅街にあっても、まだ残る豊かな自然や気候と共にある生活をどうすれば実現できるかを考えた。そこでまず、母屋の一部を解体し、母屋の隣に同じく平屋のおおらかな建築とし、南側の雑木林から連続する屋外から屋内へのグラデーションのような建築というイメージが導きだされた。
<上に空、横に林、下に地面>
平屋の建築は、上には空が、横には林(風景)が、下には地面がある。どれも魅力的な自然として屋内に取り込むことが可能なものであり、これを屋外から屋内へのグラデーションとして建築化する平面、断面の計画を行った。具体的には、南の雑木林側を全開口とし、建物の奥の方からも南側の風景と一体であるようなワンルーム的な空間とした。断面は、RCのV型梁と透明アクリル越しの空が次々に繰り返す断面とし、平屋の平面全体が空に向かって開放的な構成とした。RCのV型梁構造体は重量感と存在感が強く、軽い透明アクリルの存在感は意識の上では無い状態で、梁だけがあり、屋根という意識が薄らいだ空との関わりである。ダイニングは、グラデーションにおいて最も屋外寄りの屋内である。この床を地面と連続する土の仕上げとし、草花や木々を植えた。
<気候をポジティブに楽しむ>
富士吉田は冬マイナス10度以下となる寒冷地だが、長い冬の間、家の中で閉じこもるという意識ではなく、身も心も屋外を感じて生活できる開放的な住宅とし、気候をポジティブに楽しもうと考えた。朝は野生のキジの声で目を覚まし、寝室の奥から孔雀の姿を見ることができ、草木が生えるダイニングで食事をする生活をしている。エアコンはなく、暑い夏は窓を全開にして外気同然の室内とし、雨が降って吹き込む日も草の床なので問題なく開け放している。屋外から屋内へのグラデーションの建築は、気候をポジティブに楽しみつつおおらかに住宅街の中に建っている。
渡辺篤史の感想
ほぼワンルームと言っていい平屋。幼い娘さんたちの成長を見守る建物です。"V"字が連続する天井の大きなトップライトから自然光が降り注ぎ、ダイニングの床には土が露出し植栽がありますから、まるで屋外空間を屋内に取り込んでしまったかのような不思議な空間です。内と外との融合が生活シーンを多様化し、家族がより一層緊密になっていく、そんな印象です。