2012年1月6日(金)放送 山梨県富士吉田市・川口邸 − 屋内に庭のある家 − |
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保坂猛 | ||||||||||||||||
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保坂猛建築都市設計事務所 | ||||||||||||||||
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山梨県富士吉田市に30代の夫婦と3姉妹のための住宅を、母屋に増築できないかという依頼からスタートした。周辺は、住宅が密集しているが、所々に原っぱや畑、雑木林、舗装されていない道路があり、おおらかなイメージを持った。さらに野生のキジや孔雀も時々現れるとのことだった。密集した住宅街にあっても、まだ残る豊かな自然や気候と共にある生活をどうすれば実現できるかを考えた。そこでまず、母屋の一部を解体し、母屋の隣に同じく平屋のおおらかな建築とし、南側の雑木林から連続する屋外から屋内へのグラデーションのような建築というイメージが導きだされた。 <上に空、横に林、下に地面> 平屋の建築は、上には空が、横には林(風景)が、下には地面がある。どれも魅力的な自然として屋内に取り込むことが可能なものであり、これを屋外から屋内へのグラデーションとして建築化する平面、断面の計画を行った。具体的には、南の雑木林側を全開口とし、建物の奥の方からも南側の風景と一体であるようなワンルーム的な空間とした。断面は、RCのV型梁と透明アクリル越しの空が次々に繰り返す断面とし、平屋の平面全体が空に向かって開放的な構成とした。RCのV型梁構造体は重量感と存在感が強く、軽い透明アクリルの存在感は意識の上では無い状態で、梁だけがあり、屋根という意識が薄らいだ空との関わりである。ダイニングは、グラデーションにおいて最も屋外寄りの屋内である。この床を地面と連続する土の仕上げとし、草花や木々を植えた。 <気候をポジティブに楽しむ> 富士吉田は冬マイナス10度以下となる寒冷地だが、長い冬の間、家の中で閉じこもるという意識ではなく、身も心も屋外を感じて生活できる開放的な住宅とし、気候をポジティブに楽しもうと考えた。朝は野生のキジの声で目を覚まし、寝室の奥から孔雀の姿を見ることができ、草木が生えるダイニングで食事をする生活をしている。エアコンはなく、暑い夏は窓を全開にして外気同然の室内とし、雨が降って吹き込む日も草の床なので問題なく開け放している。屋外から屋内へのグラデーションの建築は、気候をポジティブに楽しみつつおおらかに住宅街の中に建っている。 |
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ほぼワンルームと言っていい平屋。幼い娘さんたちの成長を見守る建物です。"V"字が連続する天井の大きなトップライトから自然光が降り注ぎ、ダイニングの床には土が露出し植栽がありますから、まるで屋外空間を屋内に取り込んでしまったかのような不思議な空間です。内と外との融合が生活シーンを多様化し、家族がより一層緊密になっていく、そんな印象です。 | ||||||||||||||||