放送したお宅
2011年12月2日(金)放送
埼玉県戸田市・熊木邸
− 庭を抱く三日月形の家 −

2011年9月

敷地面積 非公開
建築面積 190平米 (57坪)
延床面積 131平米 (40坪)
鉄骨造
建築費:非公開 坪単価:非公開



かつて祖母の畑だったという思い出の詰まった庭を全ての部屋から楽しめるよう三日月形の平面を持つ平屋。上に向かって広がる、すり鉢状の立面も個性的です。

庭に面した軒先にはフックを設け、花を飾ったり、夏には蔓植物を這わせるネットを張ったりします。中心の築山は、建築時の残土を利用したもの。

「三日月」の外側に張り出した玄関ホール。ガラス戸に模様付きのフィルムを貼って視線をコントロールしています。玄関脇のトイレの内装はビビッドな緑色です。

室内は完全な個室の無いワンルーム空間。三日月形平面の効果で自然と視線が庭へと向かいます。弧を描くタイルの壁が広大なワンルーム空間を緩やかに仕切ります。

建物の東端は、弧を描く書斎コーナー。すり鉢状に上方ほど広くなっているので、実際の面積を超えた広がりを感じます。丸形の天窓から明かりを採ります。

台所は庭を眺めつつ作業できるアイランド型。背後の収納は鮮やかな青色のタイル貼りで、やはり隅を丸めています。ダイニングチェアは建築家であるご主人のデザインです。

建物中央のタイル貼りの出っ張りは水回り。こちらのトイレの内装は青色。浴室はアクセントに明るい黄色のタイルを貼っています。寝室からも庭を楽しめます。

西南の端はAVルーム。東端と対を成すよう、すり鉢状に上に広がり、丸い天窓が設けてあります。床はカーペット敷き。

建築家のプロフィール
熊木英雄
1999年 (有)西森事務所 建築家 西森陸雄氏に師事
2004年 Foster and Partners -LONDON UK勤務
2006年 Future Systems  -LONDON UK勤務(現Amanda Levete Architects)
2009年 英国より帰国後、独立
熊木英雄建築事務所 設立 現在に至る

熊木英雄建築事務所
所在地 東京都板橋区舟渡1-13-10アイタワー2F-19
電話 03-6909-8666
FAX 03-5939-8022
E-mail office@ja2.so-net.ne.jp
URL http://www015.upp.so-net.ne.jp/k-office/index.htm

建築家の一言
住居の計画は子供を授かったころに浮上し、自らも含め家族が生活を生き生きと楽しめることを願い想定した。敷地は大分前に他界した祖母が一生懸命畑づくりをしてくれた土地で、そこを借り受け家づくりが始まったため家族3人が祖母との見えない絆を繋いでいけるように、どこにいても庭(敷地)を感じられることを配慮した。
建物は敷地の形・周囲の環境から、既存の桜の木を含むオープンスペースを囲い込む形を考案し、そのオープンスペースには、建築で排出される残土を積極利用し築山をつくることで、祖母が耕してくれた良質の土を将来にも残してゆけると考えた。そのため、各部屋からこの築山を眺めることができ、料理のとき、朝寝坊のとき、食事やリラックスしているときなど、いつでも庭が俯瞰できるように設計している。
また、建物にカーブを取り入れ、風の流れ《建物内部に注ぎ込む風道と庭をつき抜けるための風道》を呼び込めるようにし、また内部でもカーブさせることで空間輪郭を曖昧にして部屋の広さ感・一体感を確保した。このカーブをフィレット(角を丸くする)という操作により、この建物に散りばめられている。
渡辺篤史の感想
とても寛げる建物です。曲線が多用されています。特に両端はすり鉢状に上方に広がるオリジナリティの高いデザインです。この建物を設計したのは施主でもあるご主人。イギリスの設計事務所に勤務された経験があり、そこで受けた経験が生かされているように思います。元は、ご主人のおばあちゃんが大切にしていた畑だった土地。そんな土地の思い出を大切にした建物作りに関心しました。