放送したお宅
2011年11月11日(金)放送
神奈川県横浜市・小亀邸
− 景色を額装する家 −

2011年2月

敷地面積 131平米 (40坪)
建築面積 51平米 (15坪)
延床面積 118平米 (36坪)
木造在来工法
建築費:2340万円 坪単価:65万円



雛壇状の住宅地。正面に公園、背後に竹林が控える敷地。前面道路から約2m上がっている事を利用して地下にコンクリートのガレージを設け、上をテラスにしています。

玄関を開くと、裏まで一直線に繋がる“通り土間”のような空間。奥は洗面室になっていて、引き戸で仕切る事もできます。

“通り土間”の右手は子供室。床を20cm上げているので、3枚の引き戸を開くと縁側のような空間になります。広さは約7畳。将来2つに分割する事も考慮されています。

北東角の浴室は背後の擁壁を借景する開放的な造り。“通り土間”の左手にある寝室からはテラス越しに公園を借景します。

2階は約26畳大のLDK。居間の床高を食堂・台所から+35cm、天井高も食堂・台所の約2.4mから居間は約3.7mとワンルームに変化を付けています。

正面のパノラマ窓からは目の前の公園と、その先に広がる向かいの山の緑を眺められます。側面や背後の窓も、周囲の景色を巧みに切り取ります。

窓からの景色を楽しみつつ作業できるペニンシュラ型キッチン。背後にも収納たっぷり。横の小窓には、台所道具を干せるよう小さなバルコニーを設けています。

居間から約1.6m上がり、吹き抜けに面した書斎。空間を最もダイナミックに楽しめる場所です。下は天井高1.4mの収納になっています。

建築家のプロフィール
桑原 茂
1971年 東京生まれ
1994年 武蔵工業大学工学部 建築学科卒業(現・東京都市大学)
1994〜96年 南カリフォルニア建築大学大学院
1997年 コロンビア大学大学院建築都市修景学部 卒業
2007年 一級建築士事務所 桑原茂建築設計事務所 設立
現在、東京都市大学・日本大学非常勤講師、明治大学兼任講師

受賞暦
2003年 第48回 神奈川建築コンクール 優秀賞
2005年 第50回 神奈川建築コンクール 優秀賞
2006年 第09回 TEPCO快適住宅コンテスト 優秀賞
2008年 20+10+X World Architecture Community Awards
2009年 第54回 神奈川建築コンクール 優秀賞
2010年 住まいの環境デザイン・アワード モダンリビング賞

桑原茂建築設計事務所
所在地 〒215-0021 神奈川県川崎市麻生区上麻生3-10-55
電話 044-281-9961
FAX 044-281-9962
E-mail info@swerve.jp
URL http://www.swerve.jp

建築家の一言
周辺は、小さな丘が連なる緑豊かな環境です。高台にある敷地は、北側を隣地の竹林に守られ、南側は通り向かいの公園、少し向こうには雑木林、遠くは丹沢までと風景が広がっていました。

「風景の広がりや季節の変化を感じながら暮らしたい。」とのご希望を、高低差があり不整形な敷地においてどのように具現化していくかが課題でした。調理の手数を控え、食材を素のままに活かした料理が体に優しく美味しいように、けっして強引に解こうとせず、自然な成り立ちとなるように設計を進めました。

廊下を殆ど必要とせず大きな室内を確保し易い「田の字状」の単純なプランを採用し、家全体がメインの風景へと対峙するような操作だけ行いました。不整形な敷地とも折り合いをつけながら、正方形に近かった基本プランを菱形に歪め、「挟角」が生じた部分は収納等に活用し、「広角」の部分を室内側へと積極的に還元しながら、広がりある空間を構成しています。
そしてもう一手。「天井高」と「床レベル」に変化を付けて空間を緩やかに分節し、家族それぞれがお気に入りの居場所を、程よい距離感の中でアチコチに見出せる住宅に仕上げています。
渡辺篤史の感想
緑豊かな実に良い環境です。この環境を上手く生かした建物です。様々な大きさ・形の窓がありますが、それらが近隣の緑、遠くの山の風景、そして空を美しく切り取ります。また、平面が正方形・長方形ではなく、少しずらした形になっています。このことによって屋内空間も豊かになっています。ここが、まだ幼い息子さんの成長していく舞台になるんですね。