2011年10月21日(金)放送 神奈川県横浜市・西村邸 − 壁の向こうの別世界 10坪の家 − |
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西村嘉哲+西村幸希 | ||||||||||||||||||||||||
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西村幸希建築設計 | ||||||||||||||||||||||||
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2年かけてようやく見つけた土地に建つ私たち建築家夫婦の自邸です。 各階10坪ほどの建物ですが、広さを求めて無理に間仕切らないようにするのではなく、逆にあえて空間を極薄の壁でやんわりと間仕切ることで次へと続く連続感と見えない部分がある期待感を与える事で、狭い中にも奥行を持つ家としました。 その間仕切り部にも建具を一切使わず、垂れ壁も付けず床から天井までの全開口としてその幅を調整する事で「室」という考え方から「たまり」としての空間の緩やかな繋がり方を提案しています。 また、法規上の制約であまり建物を高くできないことを逆に利用し、上階に行くほど天井高を低くすることで徐々にプライベート性を増し外との繋がりを緩やかに減速させるよう設計しています。 各所の仕上げは、職人の仕事の跡が残る外壁の左官モルタルや内壁の漆喰塗り、外観を印象づける大きなFIX窓に取付けたウッドブラインドや目地を極力少なくするために選んだシナ合板床などとし、華美に装飾するのではなく質感や素材感を大切にして丁寧に造り上げる事でシンプルでいながら豊かさと温もりのある建物となりました。 ローコスト住宅ではありますが、バランス良くお金を使うことで、ローコスト=チープという図式からは一線を画す住宅を生み出す事が出来るという一例です。 また、木造でありながらも構造を外周に集約させることで将来の家族の住まい方や考え方の変化による間仕切り方の変更にも柔軟に対応できるよう考慮してあります。 薄い壁で緩やかに続く空間のように、これからも新たなシーンへと続いていく家族の暮らし。 それを優しく引き受けてくれる住人等身大の家、それがこの「つづくいえ」です。 小さな建物ですが家族の幸せが詰まった大きな場所です。 |
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ローマ時代の建築家ウィトルウィウスは、建築に必須の3要素として「用」「強」「美」を唱えました。用=使い易いこと、強=しっかりとしていること、そして美=美しいことです。この建物は小さいながらも、3要素を兼ね備えていると思います。漆喰の壁や正面の網無しガラスなど、こだわるべき所にはとことんこだわり、それでいて坪60万円を切る建築費を実現したという、共に建築家であるご夫婦の努力の賜物です。 | ||||||||||||||||||||||||