放送したお宅
2011年1月28日(金)放送
東京都目黒区・古賀邸
− 10坪 段々屋根の家 −

2009年12月

敷地面積 49平米 (15坪)
建築面積 33平米 (10坪)
延床面積 90平米 (27坪)
木造在来工法
建築費:非公開 坪単価:非公開



北側の斜線規制に合わせて“段々”になった屋根形が特長の建物。外壁はチョコレート色が主ですが“切り欠き”部分は白にして立体感を強調します。

1階は水回りと予備室。浴室は北の端に位置しますが、“段々”屋根の1段目=天窓の効果で明るい空間になっています。予備室の床はカーペット張り。

2階は、階段を挟んで北に居間、南に食堂・台所を配置。食堂の方が床が60cm高くなっています。縦格子が2つの領域を緩やかに仕切ります。

居間にはL字形の造作ソファを設置。テレビ台の上“段々”屋根の2段目=天窓から光が入り、こちらも北の端にもかかわらず明るい空間となっています。

食堂・台所は部屋いっぱいの大きな食卓一体台所カウンターが特徴。人を招く事が好きな建主の希望を形にしました。南側には造作ベンチがあります。

台所は床を食堂より23cm下げて、食卓に座った人と目の高さが合うようにしました。階段の鉄製踏板の裏の補強を長めにしてアクセサリー用フックにしています。

居間の上は天井高1.4mの“ロフト和室”です。腰壁に山脈画を描き、畳を田園に見立てています。階段側の手摺は15cmの幅を取って文机兼飾り棚に。

3階は主寝室。階段室を通じて空間的には下階と繋がっています。“段々”屋根3段目=バルコニーの手摺は12cmの幅をとって飲み物を置けるようにしました。

建築家のプロフィール
長岡勉+田中正洋+横尾真
POINT
長岡勉(ながおか べん)
1970年 東京生まれ
1997年 慶応義塾大学修士課程修了
1997年〜2001年 山下設計
1999年〜 POINT設立
2003年〜 シェアオフィス"co-lab"共同運営
現在 慶應義塾大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師
  
田中正洋(たなか まさひろ)
1975年 東京生まれ
2001年 東京工業大学大学院修士課程修了
2002年 アトリエ・ワン
2005年〜 POINTパートナー
  
OUVI
横尾真(よこお しん)
1975年 山梨生まれ
2000年 東海大学大学院工学研究科修了
2000年〜2003年 池田昌弘建築研究所
2003年〜 OUVI設立
2008年〜 ヨコヲノ森 活動開始
現在 東海大学非常勤講師

POINT
所在地 〒102-0075東京都千代田区三番町28-7RE-KNOW三番町co-lab104
電話 050-5528-5671
FAX 03-5215-8612
URL http://www.point-tokyo.jp
E-mail point@point-tokyo.jp

建築家の一言
 この住宅は立面がガタガタしている。北面は高度斜線を避けながら、南面は駐車スペースを確保する為にボリュームが段状に切り取られている。それが外観と同時に内部空間も個性豊かにしている。
 内部は縦格子による階段スペースが、南北を緩やかに分けたスキップフロアになっている。玄関・浴室/リビング/和室/バルコニーの4つの空間が段状に積まれた北側では、各空間に相応しい柔らかな光(坪庭のバウンド光/トップライトの間接光/障子の拡散光)が室内に運ばれる。また、3層の南側に比べて天井が低く抑えられている為、包まれた感じもありながら、階段越しに南側の広いスペースと繋がることで広がりも感じられる。
 そこに、家具や造作を適宜設えることで、'人の居場所'と'モノの居場所'を各所に生み出している。ダイニングには部屋いっぱいの長さ3.2mのキッチンカウンター兼ダイニングテーブルや、前面道路を見通せるベンチ。リビングには奥深なL字ソファ。和室には机になった手摺や階段裏の小さな飾り棚と腰壁に描かれた山脈画。バルコニーにはコップが置ける巾広の手摺。これらが、座る、もたれるといった身体の拠り所となると同時に、日々の生活に現れてくる'モノ'の居場所をつくり出す。
 都心の密集した住宅地のなか、北側という外的要因から、人の行為という内的要求までを連続的に関係づけながら、'人'にも'モノ'にも居心地の良い豊かな住空間を目指した。
渡辺篤史の感想
敷地面積15坪、延床面積27坪という狭小住宅ですが、とても広く感じます。全体の構成も見事ですが、ディテールのデザインも凝っています。居間の造作ソファ、曲線でまとめた手摺、薄い鉄板の階段などです。そうした細かい気遣いの積み重ねが、さらに全体として空間の豊かさに繋がっていると思います。 “段々”になった屋根形が特徴のこの建物、長く居れば居るほど“だんだん”良さが染み入って来る、そんな印象です。