放送したお宅
2010年4月23日(金)放送
千葉県鎌ケ谷市・松岡邸
− 公園の緑 木の香り チェンバロの音色 音楽ホールのある家 −

2008年7月

敷地面積 697平米 (211坪)
建築面積 158平米 (48坪)
延床面積 170平米 (51坪)
木造2階建
建築費:3650万円 坪単価:71万円



公園に面した崖上の敷地。平屋に見える(実際は一部2階建て)水平方向のラインを強調した外観が特徴です。外壁は全て無塗装のベイスギ。

楽器の搬入・搬出を考慮した大きな格子戸をくぐると広い玄関ホール。大きな靴箱は、コンサート時の大勢の来客に対応するためのものです。

チェンバロ、ピアノ、チェロなどが置かれた音楽ホール。隣接する和室も合わせて40畳以上の広さです。床の階段状の部分はコンサート時には客席になります。

公園の緑を楽しむ大窓。温度・湿度の管理に厳しい楽器のため、一番左の1枚を除いてはめ殺しです。内側に設えた引き込み式の障子で日差しを調整します。

室内のベンチと面一になったデッキテラス。天気の良い日は、ここで食事なども楽しみます。8畳の和室は炉が切ってあり茶室として使用することもできます。

コンサート時、和室は障子を外せば客席として利用可能。ホールを見下ろすロフトも2階席になります。手摺にはテーブルも作りつけられています。

ホールに隣接したダイニングキッチン。ワークスペースはバックステージとして使えるようホールの調光スイッチを集約しています。

左右に収納棚を設けた廊下の奥が主寝室。浴室の天井・壁はサワラ張り。音楽好きの家族らしく天井にスピーカーを設置しています。

建築家のプロフィール
龍口元哉
1963年 大阪府生まれ
1987年 東京芸術大学美術学部建築科 卒業
1989年 同大学大学院修士課程( 建築専攻 ) 修了
1989年-01年 柳澤孝彦+TAK建築研究所
2001年 龍口元哉建築設計事務所 設立
2001年-09年 東京都立城南職業能力開発センター 非常勤講師
現在 多摩美術大学、文化女子大学、中央工学校 非常勤講師

[受 賞]  
1993年 [ 都市の地脈 ] 第1回 オリジナル地図コンクール 奨励賞
2000年 [ 池田の家 ] 第17回 住まいのリフォームコンクール/総合部門最優秀賞
2004年 [ N写真館+N邸 ] 第21回 住まいのリフォームコンクール/総合部門優秀賞
2005年 [ 銀座-T邸 ] 第22回 住まいのリフォームコンクール/総合部門優秀賞
2009年 [音楽ホールのある家] 第12回 木材活用コンクール受賞
2010年 [音楽ホールのある家] 第16回 千葉県建築文化賞

龍口元哉建築設計事務所
連絡先 東京都大田区矢口3-28-8-1210
大阪府池田市城南3-7-13(大阪分室)
TEL 03-5482-2676
FAX 03-5482-2676
E-mail motoya_tatsu.archi@me.com
URL http://web.me.com/motoya_tatsu.archi
 
建築家の一言
敷地は公園を見下ろす斜面の上に位置し、立木の緑が敷地内部まで繋がる恵まれた環境の中にあります。 ささやかな住まいと音楽を楽しむ為のスペースの併設、それが建主ご夫妻からの要望でした。音楽ホールは日頃の演奏の場として使用するとともに、チェンバロ奏者であるイタリア在住の娘さん(※)が帰国した際に、発表の場として活用する機能も求められました。

建物全体は、ボリュームのある大屋根と、その空間を取り囲む形の平屋部分で構成されています。
音楽ホールの床は敷地の形状に従いながら徐々に下がり、天井はロフトから開口部、軒先へと繋がり、視線は自ずと公園側の自然へと導かれます。 平屋の範囲には主に住居部分が配置され、各部屋が連続したコンパクトな生活空間になっています。 音楽を楽しむ「ハレ」の空間と、日常の生活の場である「ケ」の空間が分断されない様に、各々の関係が視覚的に緩やかに繋がる工夫をしています。

室内外の仕上げには木材を用い、特に外壁の仕上げには、無塗装で鉋を粗がけしただけのレッドシダー材を用いました。あえて手を施さない事で、時間の経過と共に変化し、味わいの増す様子をご夫婦のこれからの生活と一緒に楽しんでもらいたいと思います。

※チェンバロ奏者:松岡友子 http://www.fsinet.or.jp/~myweb/tomo/
 
渡辺篤史の感想
ほぼ平屋と言っても良い大らかな建物です。大窓の向こうに公園の木々が眺められます。癒される風景です。そして、建物の中で最大のヴォリュームを占める音楽ホールですが、チェンバロ、ピアノ、そしてチェロなどのコンサートを開くことのできる空間です。隣接する和室とロフトも観客席になりますから、観客はかしこまらず自由な姿勢で音楽に親しむことができます。非日常的空間を日常的に味わえる建物です。