放送したお宅
2009年11月13日(金)放送
東京都調布市・島田邸
− らせん階段がつなぐ 8坪・10層の家 −

2009年2月完成

敷地面積 68平米 (21坪)
建築面積 27平米 ( 8坪)
延床面積 71平米 (22坪)
木造在来 一部RC造
建築費:非公開 坪単価:非公開



約21坪の敷地に立つ、許容建ぺい率いっぱいの約8坪の建物。片流れの屋根に角度を合わせたようなウッドデッキがアクセントです。

室内は、らせん階段を中心に少しずつレベルを変えた10層の部屋が配置されています。玄関は最下層から3層目。作り付けの収納もオリジナリティあるデザインです。

4層目は居間。広さは4畳強しかありませんが、台所や食堂など縦方向に視線が抜けるので、むしろ広く感じます。ウッドデッキも床レベルを合わせて一体感があります。

5層目は台所。奥行きの深いタイプのシステムキッチンを使用。食堂との間の作り付け収納は、容量もたっぷり。スイッチ盤のデザインもこだわりが見られます。

6層目は食堂。こちらも、わずか3畳ほどのスペースですが、上下への視線の抜けと出窓になったベンチの効果で狭い印象は全くありません。

7層目はデスクが2つ並んだ勉強室。8層目は子供室です。手摺りカバーは、この家のためにデザインされたオリジナル品です。

9層目は現在は寝室に。最上層=10層目はベッドサイドテーブルのようなロフトです。水回りは、玄関から約60cm下りた2層目にあります。

最下層=1層目は主寝室として計画された個室とピアノ室。地表から約1m掘り下げた半地下室です。階段の途中からもピアノ室がのぞけます。

建築家のプロフィール
長岡勉+田中正洋+横尾真
point
長岡勉(ながおか べん)
1970年   東京生まれ
1997年   慶応義塾大学修士課程修了
1997年〜2001年   山下設計
1999年〜   point設立
2003年〜   シェアオフィス“co-lab”共同運営
現在、慶應義塾大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師

田中正洋(たなか まさひろ)
1975年   東京生まれ
2001年   東京工業大学大学院修士課程修了
2002年   アトリエ・ワン
2005年〜   pointパートナー

OUVI
横尾真(よこお しん)
1975年   山梨生まれ
2000年   東海大学大学院工学研究科修了(岩岡研究室)
2000年〜2003年   池田昌弘建築研究所
2003年〜   OUVI 設立
2008年〜   ヨコヲノ森 活動開始
現在、東海大学、日本工学院八王子専門学校非常勤講師
 
point
連絡先   〒102-0075 東京都千代田区三番町28-7 RE-KNOW三番町co-lab608
TEL   050-5528-5671
FAX   03-5215-8612
E-mail   point@point-tokyo.jp
URL   http://www.point-tokyo.jp
     
 
建築家の一言
閑静な住宅街。建て坪が約8坪、延べ床が約20坪、そこに家族4人が住まう。これを2階建て+αにすれば、20坪のイメージのままに狭苦しいだろうと考えました。また、お施主様からは、家族同士のプライバシーより、どこにいても家族の気配が感じられる開放的な住まいが望まれました。
そこで、約4畳の小さな床が螺旋状にぐるぐる上っていく、壁の無いひと繋がりの空間構成を考えました。床が全部で10フロアなので「ジュッカイエ」と名付けました。各床は部屋と呼ぶには小さすぎますが、場所毎に家具を設えることで、ヒトとモノの居場所がジャストフィットした大きさになっています。小分けにされた各床は、コンパクトで居心地が良く、それらが次々と繋がっていく、実際の面積以上の広がりを感じる空間が実現できました。
さらに、そうした内部が外部へも広がっていくよう、螺旋の構成と窓との位置関係を調整しています。敷地に向かって伸びる道路と、隣家越しの空が、リビングとダイニングの大きな窓を介して、室内を対角線上に突き抜けていきます。ダイニングの出窓ベンチに身を置くと、螺旋の床を介してウッドデッキを伝い、敷地の先に伸びる道路へと空間が次々と繋がっていきます。
このように、螺旋の空間を敷地状況にフィットさせ、室内での繋がりと室外への広がりを重ね合わせることで、東京の住宅地の抱える「狭小」という問題をポジティブに乗り越えようと思いました。この住宅が、奥行きと広がりを持った狭小住宅のひとつのモデルになればと考えています。(長岡勉+田中正洋)
 
渡辺篤史の感想
敷地が20坪強、建ぺい率40%ですから、建築面積はわずか8坪という狭小住宅です。空間を横方向に広げることはできませんから縦方向に広げ、それを繋げる事で広々とした建物になりました。一番下から上まで10のフロアがある。そこで、建築家が付けた名前が「ジュッカイエ」。洒落てますね。 そんな肩の力が抜けた印象のネーミングとは裏腹に(と言っては失礼?)造作家具の細やかなデザインに象徴される考え抜かれた建物。住んでみたくなる建物です。