放送したお宅
2009年10月2日(金)放送
埼玉県大利根町・平塚邸
田園に浮かぶ家(1)
− 土壁、縁側、版築 パン工房のある家 −

2008年10月完成

敷地面積 495平米 (149坪)
建築面積 97平米 (29坪)
延床面積 114平米 (34坪)
木造2階建
建築費:2600万円
 
坪単価:75万円
(デッキを含む)



田園の緑に映える黒の外観。屋根はガルバリウム、外壁は杉板を使用。東西に抜けたデッキを境に、アトリエと居住スペースが分かれています。

屋根のかかった半外部、ヒノキのデッキ。居住スペースとアトリエとを繋ぎます。湿気対策で、デッキはおよそ80センチの高床にしました。

床・天井が杉板の温もりある居間の広さはおよそ12畳。東西の窓を開けば風が通る開放的な空間です。

壁の所々を、田んぼの粘土と藁と漆喰を混ぜた土で仕上げています。ダイニングテーブルはパン生地作りのときに対応できる特注品です。

居間の奥にある台所。シンクの上に戸棚をつけなかったのは窓の景色を楽しむため。パン作りが趣味の奥さんの希望で、オーブンが2台置ける大きなスペースを確保しました。

浴室はヒノキとのハーフユニット。洗面室と浴室とをガラス窓で仕切ることで広さを演出。窓から眺めると、ヒメシャラと黒板塀の向こうに田んぼの緑が見えます。

台所の反対側の、居間の奥にある和室。今は奥さんの寝室です。1階は、居間→台所→水回り→和室へと回遊できる間取りです。

デッキを挟んで居間の反対にあるのはアトリエ。パン教室を開いて、焼いたパンをみんなで試食。人が集まり楽しく過せる憩いの空間です。

建築家のプロフィール
齊藤 祐子/さいとう ゆうこ
1954年   埼玉県浦和市(現さいたま市)生まれ
1977年   早稲田大学理工学部建築学科卒業後、U研究室入室、吉阪隆正に師事
1989年   空間工房101を設立
2000年   有限会社 サイト(SITE)に改組
1995年〜   早稲田大学芸術学校 非常勤講師
2005年〜   神楽坂建築塾 講師
2008年〜   武蔵野美術大学 非常勤講師

住居を原点に設計活動を続けている。個人の住居をはじめ高齢者のグループホーム、集合住宅、また、東チベット高原の小学校建設活動。

著書は「集まって住む終の住処」2009年(農文協)「吉阪隆正の方法・浦邸1956」1994年(住まいの図書館出版局)「建築のしくみ」2006年(ナツメ社)ほか。

作品は益子・土埃庵、浦和・NT、荻窪・NH、軽井沢・TH、東中野・パオコンパウンド、西荻窪・うみがめ荘、町田・グループホームあおぞら・ふよう病院増築、東チベット高原の小学校など

日本漆喰協会賞‘06年(グループホームあおぞら・ふよう病院増築)あたたかな住空間デザイン・優秀賞‘99年(OMIYA・I・97)漆国際漆デザイン展‘96石川・銀賞(パーティション-折り)SDレビュー・入選‘86年(国分寺・K-HOUSE)受賞
 
SITE
連絡先   〒164-0033 東京都中野区東中野2-25-6 パオコムパウンド701
TEL   03-3371-2433
FAX   03-3371-2433
E-mail   site21@nifty.com
URL   http://homepage3.nifty.com/atelier-site/
     
 
建築家の一言
緑の田んぼを満喫する、高床の広いデッキが水田の上に浮いているように感じる田園の住まいは、関東平野の真中、利根川沿いの穀倉地帯に建つ。子どもも成長した50代、趣味を活かして自分の時間を大切にするための「終の住処」は、アトリエのある人の集まる住まいである。
エントランスは屋根のかかった半外部空間のデッキ、居間とアトリエをつなぐ。田んぼの風景と土と緑を取り入れた住まいでは、外部と内部の壁には田んぼの土を塗り、アトリエの家具は土の版築でつくった。土の力と左官仕事の手の表情を感じることができる。季節の変化を受け入れる、自然と人と共に暮らす場所になった。
 
渡辺篤史の感想
肩の力が抜けますね。田園風景が懐かしいです。そこに美しい木造の建物。千葉県から2時間かけて、毎週のように夫婦で打合せに来られたということですが、その想いが結集しています。奥さんはパンを焼き、この風景を見ながらコーヒーと一緒に食べると会話が弾むことでしょう。カウンター横の台は、版築と言うらしいのですが、アトリエのワンポイントになっています。いずれにしても、この素朴な建物、うれしいです。