2003年1月4日放送
東京都世田谷区・吉川邸
−地下16畳 夢の音楽室のある家!−

2000年10月 完成
敷地面積   155平米(47坪)
建築面積  66.5平米(20坪)
延床面積 162.5平米(49坪)
RC造地階+木造2階建て
建築費: 3690万円 坪単価: 75万円


吉川さんのお宅は旗竿敷地に建つ地下1階、地上2階の3層住宅。玄関前には武蔵野の雑木林をイメージされた庭を設けてあります。その中には木の自然な曲線を生かしたベンチがありました。実はこれ家を建てられる以前に敷地に生えていた赤松なんです。


玄関は広々とした土間空間になっています。トップライトは三角形。断熱のため、内側にツインポリカを張っています。入り口に掛けられたカーテンは奥さんの力作。実はこれ虫除けのためのもの。このお蔭で夏も虫を気にせず、気持ちの良い風を取り込めますよね。


居間兼食堂は広さ12畳。床に座っての生活を希望するご主人と椅子での生活を希望する奥さんで意見が食い違ったとか。意見の違いを中央に置かれた机が取り持ってくれたそうです。実はこの机も玄関前のベンチと同じ赤松を使用したもの。

和室は広さ2畳。柔らかい畳の上でゴロッとくつろぐのもいいですよね。和室の横
には庭もありました。こちらには家を建てる以前からあるシラカシが見事な姿を見せてくれています。

キッチンは独立型。居間兼食堂との間にはガラス窓を設置。奥さんは調理中の匂いが家中に流れるのが嫌だったとか。ガラス窓にすることで匂いは流れずに家族の様子がわかるのがいいですよね。ガスコンロは業務用。合羽橋に何度も出向き、気に入ったのを探したとか。

浴室は小さな銭湯をイメージ。ご主人の体が大きいため、浴槽も造り付けました。浴槽にはちょっと腰まで浸かりたいときのために段差も設けてあります。浴槽の蓋は大工さんが新築祝いに作ってくれたもの。

地下室は広さ16畳。こちらには奥さんのお母さんの実家にあったアンティーク家具が置かれています。グランドピアノは声楽家の奥さんのもの。お子さんが大きくなったら教室を開く予定だとか。

3階の子供室は広さ12畳。こちらには懐かしい乳母車がありました。ここの窓を開ければ、新宿のビル郡が見えます。眺めもなかなかのものです。


来馬 輝順

1956年 福井県織田町に生まれる
1978年 福井大学工学部建築学科卒業
1980年 Basic Seminars in Contemporary Artで学ぶ
1983年 界工作舎
1986年 建築工房 匠屋 設立

現在:東京工科専門学校講師、町田ひろこインテリアコーディネーターアカデミー講師

建築工房 匠屋

〒153-0061東京都目黒区中目黒2−7−11宮岸ビル4階
tel 03-3716-1743 
fax 03-3716-8459
email: tktk@campus.ne.jp


大きな保存樹木がある旗竿型敷地に、明るく静かなくつろぎの場を作ることができたと思っています。
ご夫婦がともに小さなころのすまいの思い出を楽しく、思い出しながら語ってくれたのが印象に残っています。流行のスタイルに惑わされることなく、自分たちの生活経験を大切にしていたのだと思います。
このようにしっかりと語ってくれる方は、意外と少ないのでうれしいですね。
ですから、建築家が空間を提案するというよりも、お二人のすまい作りを手伝ったという感じです。
住まい方も、力まずに楽しんでいただいているようで、かわいいお子さんにも生き生きとした生活経験がつながっていくような気がしてうれしいです。

吉川さんのお宅は1階はご主人の好み、和の生活のイメージです。そして、地下が奥さんの好まれるスペースとなりました。地下室には古き良き家具の数々が置かれています。古いものを尊び、先祖を大切にする。そして、その精神が子供達に受け継がれる。その考えが日本、特に東京には街並みとして残して欲しいものです。ヨーロッパには必ず旧市街・新市街とあります。東京にもそういうところを新しく作ってもいいような気が致しました。