2004年10月16日(土)放送
神奈川県横浜市・石川邸
−最先端の半地下生活 愛車がオブジェの家−
2004年4月完成
敷地面積      93平米(28坪)
建築面積      53平米(16坪)
延床面積     105平米(32坪)
RC+鉄骨+木造 地階+2階建て
建築費:2700万円    坪単価:85万円


石川さんのお宅は三角形の敷地に建つコンクリートの塀に囲まれた建物。門扉はポリカーボネイトを使用されています。道幅が狭く、車通りが多い道路に面しているため車がぶつかっても割れ難い素材を選ばれました。門扉は開けると赤い愛車が出現。ガレージは車を囲むように全てガラス張りになっていました。

LDKは広さ24畳の半地下空間となっています。大切な愛車が眺められる、車がオブジェになった空間です。見上げると2つの木箱がありました。LDKは地下、上の木箱が1階となります。

上のフロアへ続く階段は時にテーブル、時にベンチとなります。シンプルなデザインで実用性は抜群。とても機能的です。ガレージの前に突き出たコンクリートのテーブルは躯体を利用したもの。ワークスペースとして使用されています。

キッチンにはデザイン性が優れ、機能的なものばかりが置かれていました。トングのようなものはナッツクラッカー。フランス人デザイナーのフィリップ・スタルクの作品。穴の空いた三角の小物は2つに分解してワインオープナーになります。どれもすばらしいものです。

シンクの付いたダイニングテーブルもコンクリートの躯体をそのまま使用しています。シンクがリビングダイニングに向いているから、食事の後片付けをしながら夫婦で会話を楽しめます。シンクの周りには見慣れないものがありました。熱湯が出る浄水機。もちろん浄水した水とお湯が出てきます。ポットが要らず、空間もスッキリとします。

1階の寝室は木箱の中になります。ハイサイドライトの下には小さな扉がありました。ここを開けると見えるのは愛車。どこからでも愛車が眺められるようになっています。この扉を開ければテーブルになる、機能性も考えた設計です。

ガレージを囲むコンクリートの壁の上はテラスになっていました。ここは愛車も地下のLDKも見通せます。ご主人はここで読書を楽しまれているそうです。

最上階の2階はゲストルーム。壁・天井・床をシナ材で統一し、木で構成した落ち着く空間となっています。デザイン性に優れた時計がありました。一見、ただの木片ですが、数字が見える。一体、どうして?その秘密は表面にありました。表面を非常に薄く削り、中にある数字のライトが透き通るようになっていたのです。

二宮 博(にのみやひろし)/菱谷和子(ひしやかずこ)

二宮 博(にのみやひろし)
1963年   神奈川県生まれ 早稲田大学大学院 AAスクール大学院修了
ジェフリー・キプニス 磯崎新に師事
2000年より   ステューディオ2アーキテクツ共宰
明治大学理工学部兼任講師
 
菱谷和子(ひしやかずこ)
1963年   福岡県生まれ 横浜国立大学工学部建築学科卒
山田弘康 ジェフリー・キプニスに師事
1996年   ステューディオ2アーキテクツ設立 現在共宰
おもな受賞歴
2000年   SDレビュー2000入選(FLATS A+B)
2002年   第5回あたたかな住空間コンペ入選(FLATS A+B)
2003年   第6回あたたかな住空間コンペ入選(GAP/八木邸)
2004年   第49回神奈川建築コンクール住宅部門優秀賞(BARREL/石川邸)
 
ステューディオ2アーキテクツ
〒221-0865
横浜市神奈川区片倉2-29-5-B
TEL   045-488-4125
FAX   045-488-4195
E-mail   studio2@vc.kcom.ne.jp
 
一見して、車好きのためのアイデア住宅のようですが、車を中心に据えることを前提に計画がすすめられたわけではありませんでした。それは、この土地の厳しい制約のなかでもっとも実利的で経済的なすまいのあり方は何なのかを話し合った結果としての風景です。どうやら強烈な個性というのは、他との差を意識することや形骸化した慣習から解き放たれて、個々が実直に生活の必要を追求するなかから自然に生まれてくるもののようです。竣工間近、大工さんの軽トラックが光庭に停められた瞬間、リビングからみるそのまさにシュールな光景に微笑ましさを覚えました。つまり、既視感の無い特別な空間のようでありながら、それが実は住宅に普遍的に求められるであろう快適さや自由度を併せもつためにこそあるのだろうと思いました。
 
石川さんのお宅は建物自体、置いてあるものまでデザイン性の優れているものを吟味されています。それゆえにモダンで緊張した空間になるかと思いきや逆に開放的で快適なくつろぎの場となっていました。地下はコンクリートで土台をしっかりとし、1・2階が木造の混構造にすることでコンクリートの建物よりローコスト化を実現。愛車がどこからでも眺められ、車がこの家の中心のように感じますが、やはりこの家の中心は地下のLDKではないでしょうか。私もこのスペースが大変気に入りました。この配置、デザイン、形はこの変形敷地ならではのものになっています。三角形の敷地というハンデを設計力で見事に克服した。そういう感じが致しました。