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#311(2008.11.22 OA)

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私も貝になりたい

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『月イチゴロー』今月の1位は『私は貝になりたい』!黒澤明監督ら、日本を代表する名監督たちの信じられない武勇伝も紹介!!

今週のSmaSTATION!!は、『月イチゴロー』&『昭和を代表する名監督 撮影武勇伝ベスト5』をお送りしました。ゲストにお迎えしたのは、『新選組!』で香取編集長と、また、遂に公開された超話題作『私は貝になりたい』では中居正広さんとも共演されている名優・石坂浩二さんです。その『私は貝になりたい』をはじめ、ジョージ・クルーニー監督&主演作『かけひきは、恋のはじまり』、インドの売春窟に生きる子どもたちの姿を映し出したドキュメンタリー『未来を写した子どもたち』など5作品がラインナップされたのが今月の『月イチゴロー』。その中で稲垣吾郎さんが1位に選んだのは『私は貝になりたい』でした。「中居くんのこの映画にかける情熱を、近くにいてずっと感じていた」という吾郎さん。共演した石坂さんも絶賛するその演技は、是非劇場でご覧になってください! 特集『昭和を代表する名監督 撮影武勇伝ベスト5』では、黒澤明監督や今村昌平監督ら、日本が世界に誇る名監督たちの、撮影に賭ける凄まじいまでの情熱を物語るエピソードの数々を紹介しました。リアリティーにこだわり、市街地で突然銃撃戦の撮影を行った深作欣二監督、映画『タンポポ』で、安岡力也さんの顔に張り付くナルトの位置・角度に妥協を許さず、延々撮り直しをした伊丹十三監督、ワンシーンのために深夜2時に隣家の壁を壊すよう命じた今村監督…。中でもやはり凄かったのは、黒澤明監督でした。SmaSTATION!!でも何度か紹介してきましたが、武将役の三船敏郎さんに向って本物の矢を放たせた『蜘蛛巣城』、電車の窓から一瞬見える2階建ての民家が気に入らず、カメラに映り込む2階部分を解体するよう命じた『天国と地獄』、ポンプ車10台を使って村全体に豪雨を降らせた『羅生門』の合戦シーンなどは、いまも映画界に語り継がれている武勇伝なのです。そして、メールコーナーでは、何と中居正広さんから石坂さんへの動画メールも。「芝居をする上で心がけていることは?」という中居さんからの質問に対して石坂さんは「なるべく無駄なことをしないように心がけています。だから、(映画『長屋紳士録』で笠智衆さんが小津安二郎監督に)動くな、と言われたというのは、凄くわかります。あまり余計なことをしないほうが映ったときにいいんですよね。映画って画面が大きいので、ちょっと動いただけでも意味がでる、と市川昆監督に言われました」とおっしゃっていました。石坂さんはその市川監督から、「まばたきするな」と言われて練習したこともあるそうです。本当に凄い世界ですよね。さて、次週11月29日放送は『CGなし!?命知らずの衝撃アクション決定版』をお送りします。ゲストは高橋克典さんです。お楽しみに!

本日公開となった映画「私は貝になりたい」。徴兵された主人公・清水豊松が、戦後の軍事裁判で無実の罪を背負わされ苦悩する姿を中居正広さんが演じたこの映画、最初に制作されたのは1959年。当時、脚本を手がけた橋本忍氏の手によって、新たに脚本が書き加えられ、今回、完全版としてよみがえったのです。当時は、まさに日本映画全盛の時代。数多くの名監督が活躍しました。そしてそこには、いまでは信じがたい武勇伝の数々が残されていたのです。


Sma STATION特別企画
「昭和を代表する名監督 撮影武勇伝 ベスト5」

■第5位 「突然の市街地 銃撃戦ロケ!!」

深作欣二監督「仁義なき戦い」  1973
1973年に公開された大ヒット映画「仁義なき戦い」。現実に起こった広島の暴力団の抗争を映画化したこの作品、監督したのは日本映画界の風雲児・・・深作欣二氏です。「仁義なき戦い」には主演の菅原文太さんをはじめ、松方弘樹さん、梅宮辰夫さん、小林旭さん、田中邦衛さんら、当時のスターがヤクザ役で出演しています。深作監督がこの作品で最もこだわったのはリアリティー。そのために行われたのは、市街地での突然の銃撃戦ロケ。作品の内容から警察の協力が得られないため、一般人も行きかう街中で、突然 銃撃戦を撮影したのです。そのシーンには、通行人が遠巻きに呆然と見つめている姿が映りこんでおり、慌てて警察に通報する人もいたそうです。

■第4位 「安岡力也の顔に延々とナルトをぶつけ続けた!!」

伊丹十三監督「タンポポ」  1985
「タンポポ」「あげまん」「マルサの女」など数々の話題作を手がけた伊丹十三監督。伊丹監督がとにかくこだわったのは、細部にまでわたる、緻密に計算し尽くされた演出。そんな伊丹監督の人並み外れたこだわりを物語るメイキング映像が残されています。1987年の「マルサの女」では、山崎努さんが飛んできた電話をよける1秒間のカットで、電話の飛ぶ軌跡や回転具合に徹底的にこだわりました。普通に投げただけだと思い通りに操れないため、釣り糸で吊り下げ動きを付けたのです。1985年の「タンポポ」では、安岡力也さんの顔に張り付くナルトの位置・角度に妥協を許さず、延々撮り直しが…。

■第3位 「深夜2時 隣りの家の壁を解体!」

今村昌平監督「“エロ事師たち”より 人類学入門」  1966
「楢山節考」そして「うなぎ」で、カンヌ映画祭 のパルムドールを二度受賞した唯一の日本人・今村昌平監督。独特の作風で常に日本映画界に衝撃を与えていた今村監督のこだわりは、「妥協のない厳しさ」。一度決めたことは絶対に譲らず、撮影現場も次に何を言い出すのか戦々恐々だったそう。あるシーンでは、深夜2時にも関わらず、隣家の壁を破るよう指示。助監督は深夜に、隣りの家の主人をたたき起こし直談判。 土下座を繰り返し、無理矢理了承を得たそう。

■第2位 「マイナス20度の八甲田山で決死の天気待ち」

森谷司郎監督「八甲田山」  1977
明治時代に青森県八甲田山で実際に起こった、日本軍の遭難事故を題材に製作された「八甲田山」。監督は「日本沈没」などを手がけた森谷司郎氏です。この「八甲田山」を撮影するにあたり、そのロケ地に森谷監督が選んだのは実際の遭難事故現場、八甲田山。冬の八甲田山は、気温マイナス20度以下。ひとたび風が吹けば風速30メートル、体感温度はマイナス50度にもなるという極寒の世界。そんな八甲田山でなんと3年間に渡る撮影を行ったのです。あまりの寒さに錯乱した兵士が、服を脱ぎすてて死んでしまうシーンで兵士役を演じた原田君事さんは、寒さで心臓が縮んでいくような感覚を覚えたそう。そんな八甲田山で最も撮影が過酷だったシーンは、雄大な岩木山を背景に、真っ白な雪原を歩く日本軍の姿。この撮影で森谷監督は岩木山を入れ込むことにこだわりました。しかし、ここ八甲田山ではほとんど晴れることがないため、スタッフ・キャストはこの極寒の地で、新雪に足跡をつけないよう立ったままの姿勢で待ち続けました。その期間なんと5日!5日目にようやく山が現れたわずかな隙に撮影は行われ、行軍シーンができあがったのです。

■第1位 「村全体に豪雨を降らせる!」

黒澤明監督「七人の侍」  1954
日本が世界に誇る名監督・黒澤明氏。完全主義者とよばれ、一切の妥協を許さなかった黒澤監督には後の映画界に語り継がれる驚くべき数々の武勇伝が残されています。

黒澤明 武勇伝 その@「本物の矢で撮影しろ!」
「蜘蛛巣城(くものすじょう)」では、三船敏郎さん演じる武将に次々と矢が浴びせられるこのシーンで本物の矢を使用。撮影のために弓の達人が集められ、三船さんの頭すれすれを目掛けて本物の矢を放たせました。後に三船さんも「あれほど恐ろしい撮影はなかった」と語っています。

黒澤明 武勇伝 そのA 「あの家が邪魔だ どけてくれ」
「天国と地獄」では、黒澤監督は車窓から一瞬見える2階立ての民家が気に入らず こう言い放ちました。「あの家が邪魔だな、どかそう!」。助監督は、民家の主人に頼み込んでカメラに映りこむ2階部分を解体したのです。

黒澤明 武勇伝 そのB「アリの行列を作れ!」
「八月の狂詩曲」ではアリの行列を人工的に作り出しています。この撮影のため呼び寄せられたのは、アリを研究する科学者とアリ3万匹。現場でもアリを行列させるために1週間以上が費やされ、その間待たされ続けた出演者のリチャード・ギアさんは、「もうアリとは共演しない」と言い残し帰国したそう。

黒澤明 武勇伝 そのC「村全体に豪雨を降らせろ!」
黒澤監督といえば雨のシーンを多用し、印象的に使うことでも知られています。例えば「羅生門」では、叩きつけるような豪雨を要求。なんとポンプ車3台を用意させました。あまりに多くの水を使用したため、近隣の住宅が水不足で水道が止まってしまったとか。そんな雨のシーンのなかでも極めつけなのが「七人の侍」のクライマックス 豪雨の中の合戦の場面。撮影が行われたのは、東京の撮影所に作られたオープンセット。大幅にスケジュールがずれ込み、雪の降りしきる2月の撮影となったのですが、この場面の撮影のため、スタッフは 直前に降り積もった30センチの雪を3日間をかけすべて溶かしたのです。そして、黒澤監督の指令は「村全体に豪雨を降らせろ!」というもの。水を撒くポンプ車は、「羅生門」の3倍以上の10台が用意され、氷点下の気温の中、ひとつの村をまるごと豪雨にするという前代未聞の雨シーンが開始されました。溶かした雪と、撒き散らした雨のため一面がぬかるみとなり、出演者5人が骨折するなどケガ人が続出しましたが、この豪雨の中の合戦シーンは、いまなお語り継がれる、日本映画の名シーンとなったのです。

あなたの“武勇伝”はありますか?

『編集後記』の中で、香取編集長の最新ドラマに関するエピソードが語られています。編集長は、「まだ、ふと考えたときに腹が立った、っていう経験はしていない」なんておっしゃっていましたが…。「武勇伝、作ってみたいですね。武勇伝と呼ばれるものがひとつやふたつあるような、人間になれたらいいな、って思います。ドラマとか映画の撮影とかじゃなくても、『アイツってこういうところが凄い!』みたいに思ってもらえたらいいじゃないですか。でも、それが悪いこととかだとダメでしょ。『誰も考えないようなあんなことやってるよ』『あんなことやってるよ。おかしいんだよ』とか言われながら、それがちゃんと蓄積されて、それさえも実績となって大きな人間になっていく、っていうのは素晴らしいと思いませんか?」。妥協せず、凄まじい執念で作品を作り上げる監督も凄いですけど、それに真っ向からぶつかっていく役者さんたちも凄いものなのです。中居さんの情熱が結実した『私は貝になりたい』はもちろんですけど、香取編集長のドラマも本当に楽しみです!

大物ハリウッドスターが監督&主演を務める話題作から、カンヌ映画際で“事件”となった注目作など、今月もカラフルな作品が並んだ「月イチゴロー」。 中でも目玉となるのは、中居正広さん主演の超話題作。中居さんの迫真の演技に、稲垣さんも思わず涙したとか。果たして、その評価は?

稲垣さんのランキング
1位:私は貝になりたい
2位:彼が二度愛したS
3位:未来を写した子どもたち
4位:かけひきは、恋のはじまり
5位:変態“ピ”エロ



私は貝になりたい

2008年(日本映画)
原作:加藤哲太郎
監督:福澤克雄
出演:中居正広、仲間由紀恵、石坂浩二ほか
●日劇PLEXほかにて、ロードショー

中居正広主演! 戦争が引き裂いた家族の絆、夫婦の愛、男の運命を描く

1958年にフランキー堺主演で製作された名作ドラマを中居正広主演で映画化。オリジナル版の脚本を手がけた橋本忍が本作の脚本も担当。一兵卒として戦争に巻き込まれたごく普通の市民である理髪店の主人が辿る悲劇を描く。

<STORY>高知で理髪店を営む清水豊松(中居)は、妻子とともに温かい家庭を築いていた。そんな彼の元に召集令状が届き、中部軍の部隊へと送られる。やがて終戦を迎え家族と再会した豊松。しかし、戦犯容疑をかけられ連行されてしまう。

-イナガキコメント-
堂々の1位ですね。中居くんの作品にかける心意気が凄い。処刑場に入っていくシーンでの目は、20年くらい付き合っているけど、見たことのない顔でしたね。時代を経ても風化させてはいけない作品。



彼が二度愛したS

2008年(アメリカ映画)
監督:マーセル・ランゲネッガー
出演:ヒュー・ジャックマン、ユアン・マクレガー、ミシェル・ウィリアムズほか
●有楽町スバル座ほかにて、ロードショー

エグゼクティブが集う秘密クラブで運命の女性に出会った孤独な男は…

冴えない毎日を送る孤独な会計士が、セレブな弁護士との出会いをきっかけに会員制高級クラブにのめり込み、背後に仕組まれた罠にはめられれいく官能サスペンス・ミステリー。主演は、ヒュー・ジャックマンとユアン・マクレガー。

<STORY>生真面目な会計士・ジョナサン(マクレガー)は、職場と家を往復するだけの毎日を過ごしていた。そんなある日、弁護士・ワイアット(ジャックマン)と知り合い意気投合する。そして、ワイアットから会員制秘密クラブを紹介され…。

-イナガキコメント-
邦題がいいね(笑)。気になるタイトルだと思います。ヒュー・ジャックマンもユアン・マクレガーも好きな俳優だし、お芝居は凄くよかった。だけど、ラブサスペンスというストーリーが惜しい。全部がゆるかった。



未来を写した子どもたち

2004年(アメリカ映画)
監督/製作/撮影:ザナ・ブリスキ
監督/製作/撮影/編集:ロス・カウフマン
●シネスイッチ銀座ほかにて、ロードショー

インドの売春窟に生きる子どもの姿をありのままに映し出すドキュメント!

インド・カルカッタの巨大な売春窟には、娼婦だけではなく、そこで生まれた多くの子供たちがいる。彼らは娼婦である母親の手伝いをし、ある年齢に達した女の子は自らも客を取らされる。彼らのほとんどは一生をそこで暮らし、未来に夢や希望を持つことを知らない。ニューヨークで活動するフォトジャーナリストのザナ・ブリスキは、1998年からこの売春窟を取材。子どもたちの現実を目の当たりにする中、彼らにインスタントカメラを買い与え写真教室を始める。

-イナガキコメント-
現地まで行って、ひとりでも多くの子供を救おうとする監督の情熱が凄い。それから、才能って凄いなと思いました。初めてカメラを手にした子供たちが撮った写真が素晴らしかったですよね。



かけひきは、恋のはじまり

2008年(アメリカ映画)
監督:ジョージ・クルーニー
出演:ジョージ・クルーニー、レニー・ゼルウィガー、ジョン・クラシンスキーほか
●日比谷みゆき座ほかにて、ロードショー

切ない恋の三角関係を古典的に描くジョージ・クルーニー監督&主演作!

ジョージ・クルーニーが自らの監督作で、初めて主演を務めたロマンティック・コメディー。1920年代のアメリカン・フットボール界を舞台に、チームの繁栄に奮闘するベテラン選手と女性記者との三角関係が絡んだ恋の行方を描く。

<STORY>1925年、ドッジ(クルーニー)は、アメフトのプロチームのキャプテンとして活躍していたが、リーグは集客に苦しみドッジのチームも存続の危機に陥っていた。そんな中、ドッジは敏腕女性記者レクシー(ゼルウィガー)と出会い…。

-イナガキコメント-
全体を漂うおしゃれなムードがいい大人な映画ですね。冬にピッタリ。だけど、「1年後に覚えているか?」って言われたら、きっと忘れてるだろうなって(笑)。あとは、邦題がよくないですね。



変態“ピ”エロ

2007年(フランス映画)
監督/脚本:ブリュノ・メルル
出演:ミカエル・ユーン、パトリック・シェネ、ラファエル・ベナユーンほか
●●●●●●●ほかにて、ロードショー

狂気か? 芸術か? カンヌを騒然とさせた衝撃の問題作が日本を襲撃!

2007年のカンヌ映画祭で上映され、観客を騒然とさせたという問題作。国民的歌手を誘拐監禁したエンターテイナーの男のあまりに理不尽な動機と目的とは? 現実と妄想を行き来する不思議な語り口など、奇策を駆使して描くサスペンス。

<STORY>エンターテイナーの“ピ”ことピエール(ユーン)は、不眠症に悩ませれた挙句、自身も崇拝する国民的歌手のクロヴィス・コスタを誘拐監禁する。“ピ”とクロヴィスは、外界と隔絶された暗い密室で駆け引きを繰り返すうち……。

-イナガキコメント-
ヒドい! まったく意味がわからないし、何も言いたくない……。それが、この映画の最大の褒め言葉ですね。だけどね、そう言われたいんですよ、この映画は。



今月は、『私は貝になりたい』がずば抜けていたとおっしゃっていました。

 ほかの作品に関しては、正直、しゃべることなかったですね。特に、『変態“ピ”エロ』は厳しかったね(笑)。

『私は貝になりたい』は、「身内びいきではなく素晴らしい作品」だと絶賛でした。

 そうですね。凄い、凄い作品ですね。僕も普通に泣きましたから。役者としても、ああいう作品が一生のうちに何本できるかわかりませんよね。

主演の中居正広さんは、体重を落としたり、かなりストイックに取り組んでいらっしゃいました。

 頑張っている姿を近くで見ていたんで、このくらいはやってくれるだろうとは期待していましたが、それでも予想以上に凄かったですね。細かいお芝居の技術云々ってことよりも、やっぱり心意気なんだよね。作品に対して、どこまでモチベーションを高められるかってことが重要なんだと思いました。

中居さんのお芝居も評判が高いですね。目のお芝居に鬼気迫るものがありましたが、稲垣さんが評価するのは?

 彼は、目は武器になるよね、大きいしさ。それももちろんよかったし、苦しみ狂うお芝居も凄いけれども、僕は家族団らんのほのぼのとしたシーンの中で見せるさりげない表情、奥さんや息子さんとの何気ないやりとりにも凄さを感じましたね。

そのことは、中居さんには伝えましたか?

 うん。まあ、メンバー同士なので改まってって感じじゃないけど、「よかったよ」ってことは言いました(笑)。

戦争を描いているということで、二の足を踏んでしまう人がいるかもしれませんが…。

 テレビドラマのディレクターが撮っているから、テレビドラマの感覚で、いい意味で気軽に見られますよ。戦争はあるけれど、ベースは家族や人間のドラマですしね。だけど、たった60年前にあった話とは思えないよね。時代がどんどん過ぎる中で忘れてしまいがちだけど、やっぱり絶対に忘れちゃいけないことなんですよね。だからこそ、若い人たちが見てくれればいいと思います。

今回も収録での稲垣さんのコメントを聞いていて、本当に勉強になりました。

いやあ、僕も毎回勉強させてもらってます。僕なんか怠け者だし、映画の趣味も偏っているから、こんなふうにランダムに映画を見ることはないんですよ。基本的に好きな映画しか見ませんから。こういうふうに勉強の場をもらえるってことは、僕にとってもありがたいことです。

番組は8年目に突入しましたが、「月イチ」へのリクエストなどありますか?

毎回、冒頭でおいしいものをいただいていますけど、あれが本当においしいんですよ、編集では早送りされちゃいがちなんですけど(笑)。これから冬の味覚がいただけるのかな、ますます楽しみにしています!

石坂浩二さん
この平和な時代をずっと続けようっていう気持ちになることが、大切なんだと思います。

お久しぶりの出演なりましたが、本日はいかがでしたか?

今日は、いろいろな特集がありましたけど、ああいう武勇伝みたいなのは、面白いと思いますよね。あんまり古くなっちゃうとエピソードが残っていないかもしれないですけど、今のうちなら、もっともっと裏話が聞けると思います。今日、紹介された監督さんたちは、みなさん傑出したエピソードをお持ちの方ばかりですからね。いい企画だと思いました。

石坂さんもご自身が体験された監督の武勇伝を披露されました。

ほかにも、名前は言えませんがいろいろありますよ。例えば、町で隠し撮りをするというときに、僕ら俳優は前日からセットでリハーサルをして、次の日、ロケに行ったんです。そうしたら、その監督がメガホンで町中に響くような声で、「はい、それでは今から隠し撮りをはじめます」って。それで、その日は中止ですよ(笑)。そんなこともありました。

最近の監督さんは、そこまでのエピソードはないのでしょうか。

少ないかもしれないですけど、監督ですからね、いろいろありますよ(笑)。『私は貝になりたい』の福澤(克雄)監督は、ラグビーで日本一になったこともある体育会系の方なんです。そんな方が怒ったら何ておっしゃるのか楽しみにしていたら、ズバリ「タックルするぞ!」でしたね(笑)。それはたまらないと思いましたが、だけどそんな反面、一年くらいかけて、自身で日本中を回ってロケ地を探して歩かれたそうです。作品に対する思い入れも、相当なものがあったんだと思います。

その『私は貝になりたい』が今日から公開となりました。若い視聴者に向けてメッセージをいただけますか?

映画の背景となっている時代を「なるほど」と思えるのは、僕らの世代くらいまでなんですよ。僕らですら、BC級戦犯人があれほど多く死刑になっていたっていうのは知りませんでした、報道もされていませんでしたから。それを知ったのが、最初に『私は貝になりたい』の映画が公開されたときです。でも、それからすでに50年ですからね。ですから、中居(正広)くんのような世代の人がこの映画をやってくれていることが我々としては凄くありがたいという気がしますし、そういう意味からしても若い方に見ていただきたいと思うんです。受け継いで行くものは、一体何なのかってことを探るような気持ちで見てもらえたらいいんじゃないでしょうか。今日、香取くんが今の時代に生きていてよかったといいましたけど、それが正直な感想だと思うし、そう思えることが大事だと思うんです。だから、この平和な時代をずっと続けようっていう気持ちになることが、とても大切なことだと思います。

そんな香取さんとお久しぶりに会われていかがでしたか?

また、香取くんとお芝居をやってみたいなと思いました。『新選組!』では、僕は早くに死んでしまう役だったので最後までお付き合いできなかったんですけど、その後、テレビで見ていてどんどん大人っぽくなっていく香取くんが魅力的だなと思ったんです。今日、久しぶりに会って、またそんな風に感じました。僕はね、彼の芝居が好きなんですよ。共演すれば何がいいかって、タダで芝居が見られるでしょう(笑)。香取くんの芝居を目の前で見たいなと思います。

石坂浩二さん出演映画
■「私は貝になりたい」
主演 中居正広
日劇PLEXほかにて絶賛公開中

中居さんの思いの強さを感じました。

今日の特集を見て思ったのは、「監督も凄いけど、それに従うスタッフや俳優さんは本当に大変だな」ってことです。監督が、土砂降りの中で合戦のシーンを撮ると言えば、近所が断水するほど雨を降らしてその中で仕事をするスタッフり俳優さん。リクエストを具現化するために、なんと忍耐強く仕事をされるんでしょうか。私だったら、1日も持たないと思います。現代はCGもありますし、今日、紹介されたほど、過酷な状況にはならないかもしれませんが、それでも映画作りって大変な仕事ですよね。それこそ、みなさん命がけてワンシーンを撮っていらっしゃるんだから。月イチゴローでも、もっともっと味わって鑑賞しないといけないと思いました。そんなスタッフや俳優の心意気をひしひしと感じたのが、『私は貝になりたい』です。私が想像していたよりも、本当にずっとずっとよかったです。とにかく、中居(正広)さんが素晴らしい! 中居さんご自身が、この役をやりたいと熱望されていたと聞きましたけど、その思いを感じました。最初は、中居正広っていう存在が強烈だから、中居さんとして見始めたんですけど、最後は豊松として見てしまいました。本当に、役になり切っていました。それにしても、つい60年前に命がこんなふうに軽く扱われていたのかと思うと、悲しみと怒りが湧き上がってきます。本当に香取さんが言うように今に生まれてよかったと思いますし、絶対にあの時代の悲惨な経験を繰り返しちゃいけないなって強く思いました。これは、今、私たちが見るべき映画です。

第1位:私は貝になりたい
第2位:未来を写した子どもたち
第3位:かけひきは、恋のはじまり
第4位:彼が二度愛したS
第5位:変態“ピ”エロ

お芝居をしている中居くんを見るのは本当に不思議な感じで…

◆私は貝になりたい』、堂々の1位でしたね。今回は、邦題がよくない、ということで石坂さんとも意見が一致したんですけど、そういう感じでいうと『私は貝になりたい』っていうのは凄くいいタイトルですね

◆吾郎ちゃんも言ってましたけど、お芝居をしている中居くんを見るのは本当に不思議な感じで…。「こんなに…」とか「こんな…」とか、出来るんじゃん、と(笑)。「そのパワーを少し分けてくれない?」っていうくらいステキで、ビックリしました。見ながら、「本当に中居くんにピッタリの役だなぁ」とか「ああ自分には出来ないな…」とか思いました。あと、草ナギも良かったです!

◆個人的には『変態“ピ”エロ』がもうちょっと上でもよかったかな?最後に石坂さんがほめてくれましたけどね

◆日本映画の巨匠の武勇伝も面白かったですね。いまボクも、ドラマの撮影をしていますけど、ボクも結構、そういうタイプの作品に恵まれているような気がします。ちょっと普通じゃない状況に置かれることが多いので、結構、武勇伝にお付き合いできる方だと思います(笑)。もういまの段階でも、周りの方々から「親方がそれやっちゃうとちょっと…」みたいな状況を作ってしまうことがあったりして…。この前も、水浸しになって長ぐつの中まで満タンに水が入っていたんですよ。で、それを履き替えましょう、って言われたんですけど、「大丈夫、大丈夫!面倒くさいから…満タンだけど大丈夫!」って言ったら、「満タン、って!!」ってなって(笑)。脱いだらドボドボって水が出てきて、「これを“面倒くさい”って…。面倒くさがるにも程がある!」って言われました(笑)

◆それこそ、「三船さんの矢のシーンを自分がやるとなったら…どうなるんだろう?」とか考えますよ。多分、すぐに断ったりしないので、その時点でボクはちょっと普通とは違うのかもしれないですね(笑)。あの映像を見たときも、ちょっとシミュレーションしましたもん。「あの位置かぁ…」って。あの寄りの絵だけだったら、「わかりました、ここに必ず打つんですよね?」って言ってやったかもしれない。ただ、引きの絵を見たときは「うわ、これはちょっとマズいなぁ…」って思いますよね。でも、やっちゃうと思うけど(笑)。ボクもそうだけど、役者さんたちって、どうにかして監督に答えようとしちゃうんですよね

◆石坂さんが「後で腹が立った」っておっしゃってましたけど、結構、ボクの場合は、近いスパンでさらなる“上”が来たりしているんで、ふと考えたときに腹が立つ、という経験をするのは、まだもうちょい先のことかな…なんて。