スマデータ投票
モバイルサイト
メールマガジン
ケイジバン
番組へのご意見
最新号のTOP


昨年最高裁判所で扱われた医療訴訟は845件。その中で病院の数から比較した訴訟発生率が最も高かったのが産婦人科。そこで今回の「Smaクリニック〜いい病院・悪い病院〜」は「産婦人科Part1〜お産は救急医療である〜」と題し、出産を安心して迎えられる病院選びについて模索します。
 新しい命の誕生を祝福する最高に幸せな体験=出産。しかしこの出産に、実は悲しい事態を招きかねない危険が潜んでいます。お腹の赤ちゃんの心臓が止まりかけたり、母体の子宮破裂や大量出血など、容態が急変し母子ともに命に関わる事態に発展することが、予期せず、それも突然に起こることがあるんです。それゆえ「出産は救急医療である」と主張する産婦人科医もいるほど。病院の数から比較した医療訴訟の発生率は、内科・外科・整形外科を抑え、産婦人科がダントツの1位。赤ちゃんの死亡率は世界でも誇れるほどの低さですが、意外と危ないのが母親の体。過去の推移を見ても、日本は先進国の中で母体の死亡率が高い国の一つなのです。しかも亡くなった妊婦のうち、なんと37%は救命できる可能性があったと報告されています。では、なぜ彼女たちを救うことができなかったのか? これには日本の産科医療システムに大きな原因があるんです。
 1999年1月、広島市に住むJさんは、初めての出産を控えていました。経過は良好。行きつけの産婦人科医院の院長からは「母子ともに元気だ」と太鼓判を押されていました。そして迎えた出産当日。陣痛が始まり、分娩室に運ばれたJさん。「赤ちゃんの頭が見えているから1時間もすれば生まれる」と、院長はJさんに声をかけました。ところが、事態は急変。一向に赤ちゃんが出てこないのです。異変に気づいた院長は何とか早く生ませようと、吸引器を使って胎児の頭を引っ張り出そうとしました。さらに、慣れない看護師に命じてJさんに馬乗りになってお腹を押させるなど、必死の処置を開始。やっとのことで赤ちゃんは生まれたものの、産声を上げず…。実は心臓がすでに停止していたのです。分娩室はパニックに陥り、院長は夢中で赤ちゃんに心臓マッサージを施したのですが、更に大変な事態が起こっていたことに院長は気づいていませんでした。なんと、背後でJさんが大量出血をしていたのです。その後応援の医師や救急車が駆けつけ、2人は救急病院に運ばれたものの、赤ちゃんは3日後に死亡。Jさんも下半身麻痺という障害を負ってしまいました。なぜ、こんな結果に? 院長の能力もさることながら、出産に際して医師が一人しかおらず、母子同時に発生した異変に対処できなかったことが問題として挙げられます。人手不足――日本も欧米も産婦人科の医師の数はそう変わりません。が、日本には病院の数が多いため、施設あたりの医師の数が少なくなってしまうのです。一医療機関につき、産婦人科医の数は平均1・4人しかいないのが現状なんです。また、このケースでは万が一の備えもなく、パニックに陥ってから近くの病院に応援の電話を掛けまくるという対処が、さらなる処置の手遅れを招きました。
 そんな中、最近はぜいたくな出産ができる産婦人科が人気。スウィートルームのようにキレイな病室、豪華なフルコースなど、女性好みのサービスを売りにした産婦人科が最近増えていますが、それがぜいたくなお産と思ったら大間違い! では、本当にぜいたくなお産とは? 国立成育医療センターのホームページにも明記されていますが、本当にぜいたくなお産とは、徹底的に安全対策を追求した出産のことをいうんです。その条件として挙げられるのは、出産の際に産科の医師・助産婦さん・赤ちゃんの専門家である新生児科の医師・看護師という、最低4人のスタッフがバックアップすること。さらに麻酔科の先生がいれば、なお安心。麻酔科医は緊急の帝王切開や、母体への輸血など、不測の事態に欠かせないのです。また、常に複数の産婦人科の医師が院内に待機して、臨時の応援にも対処できることが理想的。これだけのスタッフが24時間体制でスタンバイしているのが、安心できる最高にぜいたくなお産なんです。実際、出産をバックアップする医師の数が多いほど、万一の時の母体の救命率が高くなっています。あなたが産婦人科に行ったら「私がお産する時にはどんなスタッフが何人バックアップしてくれるんですか?」と必ず聞きましょう。これに対し、「医師は僕一人だけど大丈夫」なんて答えが返ってきたら、その病院は絶対に変えた方がいいでしょう。安全で安心できるお産をするためには、スタッフ体制が何より大切なんです。スタッフが充実していても出産費に大差はないので、ご安心を。
 お産の主役は両親。いろんな出産方法が存在しますが、自分たちがいちばん望んでいる方法を選択してほしいと思います。医師はあくまでも、その2人の手助けなんです。そんなことをわかっている医療者は、妊婦を中心としたお産を考え、その危険性を含めてきちんと説明してくれるでしょう。だから、両親も医師にすべてを任せるのではなく、安全なお産のために何が必要かを自ら把握して、臨むことが大切なのではないでしょうか。そういう姿勢は医師にもいい意味での緊張感を与えますし、双方にとっても良いことだと思います。私が特にお勧めしたいのが、最近増えている“立会い出産”。出産に立ち会うことで、父親としての自覚を再確認する良い機会ですし、母親の大変さや命の大切さを理解することができるでしょう。中には、ビデオカメラでお産の一部始終を撮影するお父さんもいらっしゃいますが、これも非常に良いことですよね。よい思い出にもなりますし、万が一何かがあった場合には、役に立つかもしれません。中には、立会い出産を拒否する病院もまだあるようですが、医療とは開かれたものであるべきだと、私は思います。お産はもちろん、医療全般に対して、もっとオープンな姿勢を期待したいです。
(写真家/医療ジャーナリスト 伊藤隼也氏・談)
1.体内にガーゼを置き去りにした病院を起訴
 10/9、福島県いわき市の男性が日本赤十字社に対し賠償を求める訴訟を起こした。この男性が2年前に腹部にできた腫瘍の摘出手術をしたところ、腫瘍の中から50年以上もの間置き去りにされていたガーゼが出てきた。半世紀に渡って血尿や原因不明の体調不良に悩まされたとして、かつて手術を行った赤十字病院を訴えたのだ。
2.看護婦の指摘を無視!? 抗がん剤過剰投与の裏に新事実
 以前スマトク医療ミスでも取り上げた、抗がん剤の過剰投与によるさいたま県の女子高生死亡事件。10/15、主治医を含む3人の医師が業務上過失致死罪でついに起訴された。さらに、さいたま地検の調べで、看護師が抗がん剤の量が多いことを指摘たにもかかわらず、それを主治医が無視していたことが発覚。
Copyright(C)2002
TV-ASAHI
All Rights Reserved.