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『SmaSTATION!!特別企画 今、最も客を集める百貨店・伊勢丹新宿店の秘密』
百貨店の不振が言われるなか、業績を伸ばし続けるのが、今、日本で最も客を集める百貨店・伊勢丹新宿店です。新宿の数ある駅から最も遠い、その立地にもかかわらず、来店者数は、東京ディズニーリゾートを上回る年間およそ3000万人。その売り上げは実に2569億円。数ある百貨店のなかで、なぜ、伊勢丹だけがこれほどの人を集め、勝ち続けることができるのでしょうか。そこには、バイヤーを始めとする伊勢丹スタッフの、並々ならぬ情熱と努力があったのです。

伊勢丹が誕生したのは1886年、明治19年。その前年に伊藤博文が初代総理大臣に就任するなど、日本が近代化への道を歩み始めていた頃のこと。神田旅籠町(かんだ・はたごちょう)の伊勢屋丹治呉服店(いせやたんじ・ごふくてん)がその始まりで、着物に欠かせない「帯」の品揃えを豊富にすることで、花柳界、芸者衆に人気の店となりました。その後、呉服店から百貨店となった伊勢丹は新宿に移転します。しかし、新宿における百貨店戦争は熾烈を極めました。老舗の三越の前を通らないと伊勢丹にたどり着かない…そんな立地もあって、常に業界3位でした。さらに、90年頃秀和による株の買占めという、買収の危機に陥り、96年には提携していたアメリカ・バーニーズの経営破たんなどから、300億円以上という、開業以来の大幅赤字を出すなど厳しい状況が続いていたのです。
そうした窮地を脱し、伊勢丹はいかにしてNo.1となったのでしょうか。その成功の影にあったのが、2003年にリニューアルした、メンズ館です。このリニューアル後、初年度で改装前の実に20%売上増。今では、都内百貨店のメンズ用品全売り上げの実に30%近くまでもがこの建物ひとつで占めるまでになりました。


伊勢丹の秘密@ メンズ館誕生物語

当時デパート業界では「メンズは売れない」のが常識。全国の百貨店では紳士服フロアがどんどん縮小されていました。

「バブルが弾けてから1900年代というのは暗黒の時代の10年間と言われていて、特に紳士服は婦人服よりうんと負けていたんですね。その中の動きでいうと2極化が進んでいてひとつは安いスーツ専門店で買うという派か、セレクトショップで、BEAMSとかUNITED ARROWSでこだわりの服を買う派か。大きくふたつに分かれていたと思うんですけれども。百貨店の中では売れない売り場だから縮小しようという事で紳士服売り場がどんどん縮小されていて、紳士服は悪いから小さくする。さらに、悪くなる、小さくなるという様な悪循環のスパイラルに陥っていたのが2000年前後だったと思います」(マーケティング・ マネージャー 川島蓉子さん)

紳士服の二極化とは、「安いスーツ専門店で済ませる派」と「BEAMS等、おしゃれなセレクトショップを利用するこだわり派」、紳士服の購買層は大きくそのふたつに分かれており、いずれにしても、デパートで洋服を買う男性は稀な存在だったのです。そんななか、45億円もの巨費を投じて「メンズ館」を新設。なぜ伊勢丹はこれほど大胆な賭けに出たのでしょうか?

2001年秋、紳士服売り場では現場をよく知る、バイヤーを集め、作戦会議がもたれました。現在もメンズのバイヤーを務める、山下卓也さん、橋爪紀之さんもそのメンバーのひとりでした。

「僕らの店は果たしてこれでいいのかというのが、ずい分ありました。僕らも市場に向けて何かをしなければいけないという危機感は常にありまして…」(メンズクリエーターズ  バイヤー・橋爪紀之さん)

「問題点、課題と言うものは、どれにも特化できずに何でもあるけど特化したものがないということ。本当にお客様はご満足されてるのか、もっと違うことをお求めになられたのではないか、といったものを自問自答しながら、当時ずっと店頭でお客様の声を拾っていたんです」(紳士靴バイヤー・山下卓也さん)

その会議でバイヤーからは、「いいもの、おしゃれなものを売れば客はついてくるはず」、「勝負したい」、そんな声が強く上がったのです。しかし、熱意だけでは上層部を説得できない。そこで橋爪さんと山下さんは「売れる」ことを証明するためある実験を行ったのです。服のバイヤーだった橋爪さんは、1階のフロアに、日本での知名度は低くても、先端を行くクリエーターのブランドを置きました。JUNYA WATANABEやJAM HOME MADEなど、当時はまったくの無名だったブランドです。一方、靴のバイヤーだった山下さんが行った実験とは、紳士服の本場・イギリスでも最高峰と称えられる、エドワード・グリーンのオーダーメイドを扱うことでした。エドワード・グリーンといえば、1足10万円を軽く越える高級靴。「果たして客はやってくるのか」、スタッフのそんな心配をよそに、開店前には、200人を超える客が列を作っていたのです。

「百貨店だからとあきらめてたら当然先へ進めないわけですから。新しいものを提案したらお客様がそこに来てくださった。具体的な名前は言いませんけど、有名な専門店さんのショッピングバッグを持ちながらも、1階の店頭でお買い物をしてくださるお客様がいたわけなので、これはもっと大きな単位でリモデルをしても勝機はあるのかな、と」(橋爪さん)

そして靴売り場では、

「3日間で120足、130足と言うぐらいオーダーを承りました。全国から、中にはホテルまで取っていただいて、泊まりで来ていただいたお客様も非常に多くいらっしゃいました」(山下さん)

いい商品さえそろえれば、「おしゃれな男性」が来てくれる。ふたりの勇気ある試みが成功したことで、伊勢丹は紳士服売り場の全面リニューアルを決めたのです。しかし、品揃えだけでは事足りません。フロアの考え方そのものを、それまでとは一変させたのです。そのきっかけとなったのは、バイヤーたちが耳にしたのは、こんな声でした

「スーツ、いろいろ比べてみたいけど、ひとつのブランドで試着すると、ほかには行きにくいよね」
「ワイシャツとか、もっといろいろ比べて買えればいいのに」


「ブランドの垣根がお客様を不便にしている」そこで生まれた案が、ブランドごとの間仕切りの廃止でした。従来、デパートではブランドがブースごとに分かれて配置されています。しかし、こうしたブースはもちろん、目立つロゴもやめ、ブランドごとの垣根を取り払うというフロア設計を目指したのです。しかし、この取り組みに、ブランド側は当初、全く取り合おうとしませんでした。

「どこも、ブランドのイメージと言うのを、とても大切にされてますので、それはお取引先の立場からしてみると当然のことだとは思いますが、当初はまったくブランドのデザインが使えないと言う売り場については、基本的にはありえないだろう、と言う反応が正直なところでした」(橋爪さん)

画を描き、図面を持ち込み、橋爪さんを始め、バイヤーたちは担当ブランドの説得に努めました。まったく前例のないこの提案に、中には直接伊勢丹の社長にクレームを言ってくるブランドまであったといいます。そして、結局はほとんどのブランドが根負けする形で伊勢丹の提案を受け入れました。しかし、いくつかのブランドはどうしても受け入れられず、撤退していったのだといいます。

「最後までご納得をいただけなかったこともありましたが、基本的には伊勢丹の考え方に賛同していただいて、やってみよう、と言うことでスタートを切っています」(橋爪さん)

こうして生まれたのが、現在のメンズ館。通路があってブランドのブース、という従来の造りから、仕切りの壁をなくし、床・壁・ショーケースとすべてを統一させました。通路と言う概念をなくしたことで、あるブランドのワイシャツを見ていたら、いつの間にか隣のブランドのものを見ていた、そんな客の動きを生み出したのです。このメンズ館の成功により、業界3位だった伊勢丹は生まれ変わり、翌2004年、初めて業界1位に立ったのです。そして、このリニューアルを「お手本」として海外からも多くの視察が訪れるほどになりました。さらに、メンズ館から地下鉄・新宿駅へと向かう通り道には、2000種類のワインを擁するという、都内最大級のワインカーブを設置。ここには、1900年から全てのヴィンテージワインが揃っています。メンズ館のおしゃれな客をメインターゲットにおいたことで、ワインの売り上げまでもが、20%という大幅増を達成したのです。こうして業界トップに躍り出た伊勢丹新宿店。そこにはこんな工夫も隠されています。


伊勢丹の秘密A 独自のディスプレイ

伊勢丹は商品の見せ方にもこだわりをもっています。本館・1階に位置する婦人靴売り場では、ブランドにこだわるより、例えば「足にあった、黒のミュール」といった探し方ができるように、メンズ館同様、ブランドの枠を超えた陳列を実施しています。グッチ、トッズ、フェラガモといった高級ブランドでさえ、ブランド名を強調しない、開かれた売り場で売られているのです。もちろん販売員は、すべてのブランドに精通したベテランを配しています。そして、現在では年間売り上げ数10億円。日本一の婦人靴売り場となったのです。また、バッグ売り場では高級感を出すためにある工夫がされています。それは、伊勢丹に関する研究本を書いた竹永昭光氏によると、バッグは重ねる場合は30%まで。商品の70%以上は見せるというもの。棚に押し込みすぎない、一段には5個〜7個というようにディスプレイの方法が細かく決められ、厳密に守られているのだといいます。一方のメンズ館の靴売り場ではブランドの枠を超えたディスプレイはもちろんのこと、男性の「モノにこだわる心」をくすぐるため、昆虫標本をイメージして並べられています。さらにディスプレイの色の統一感。この秋冬のスタートはグレー、黒、指し色としてベージュ、とマネキンに着せる服は、すべて色まで決められているのです。棚に並べられる商品も、この色を押し出す形で陳列されています。

「当社は単にブランドを並べてお客様に紹介するだけじゃなくて、伊勢丹のフィルターっていうんでしょうか、伊勢丹が時代を感じて、ある程度、咀嚼してお客様に商品を提供すると言うのをモットーにしているんです。ですから色ですとか、スタイリングですとか、そういったものに関しては当社の意志をお客さんに伝えたいと思ってるわけなんです」(婦 人統括部長・中陽次さん)

ちなみに伊勢丹では、他の百貨店の先陣を切って、6月初旬にディスプレイを秋冬物に切り替えます。そして売り場にもコートやセーターが並べられるのです。もちろんこれは「ファッションに敏感な人が集う店」という自負があるからこその作戦なのです。

「当社のお客様はものすごい情報をお持ちでですね。とてもお客様のスピードに追いつかない、というのが現実で。お客様に背中を叩かれながら、6月に秋物を立ち上げている、そういったところでしょうか」(中さん)


伊勢丹の秘密B 限定商品

伊勢丹がこだわるのが、伊勢丹でしか買えない限定商品。例えばメンズ館では、今や商品の実に半分近くが伊勢丹限定なのです。

「日本には百貨店が多い上に、入ってるブランドが同じということになってしまうと、お客さまは、たまたま近いから伊勢丹に行こうとか、たまたま近いからどっかの百貨店に行こうとかになってしまうわけです。(伊勢丹限定品の)オンリー・アイは、伊勢丹にしかないわけですから、伊勢丹に足を運ぶ大きな動機づけにはなりますよね」

婦人服売り場にも、多くの限定商品が並びます。売り場の中でも高い人気を誇るのが、ジーンズ売り場。その仕入れを担当しているのが、桜井俊晴さん。

「僕の中では(伊勢丹が)日本一、世界一と思っていますから。他のバイヤーにはできないことを自分はやるんだ、っていうとこですね。伊勢丹限定と言うのは、お客様の期待があるので、それは絶対やろうと。その中で、今年のトレンド、色とか形とかを踏まえたうえで、取引先と話をして、作っていただくと言うのが基本ですね」(桜井さん)

限定商品を生み出すのはバイヤーの力量。ケイト・モスやリンジー・ローハンが愛用していたことで日本でも大ブレイクしたジーンズ、J BRANDでは、伊勢丹限定商品を作ってもらうため、ラスベガスまでデザイナーを尋ね、口説き落としたといいます。こうした限定商品には、集客力はもちろん、マーケティング力にも優れた伊勢丹と手を組めば、確実に売れる、そんなブランド側の思惑もあると言われています。


伊勢丹の秘密C お客様の要望に徹底的にこたえる

売り場で客といかにコミュニケーションをとるか、そして、その要望を売り場に繁栄させることに伊勢丹は徹底的にこだわっているといいます。そんなちょっとした客からの要望や不満を販売員はメモなどに書きとめ、商品の仕入れ担当である、バイヤーに伝えます。実際、こうした客の要望から生まれた商品が、甲が薄い、あるいは広い人のためのサンダルや、ローライズでも気にならない、股上の浅い、ストッキングです。さらに、客のリクエストから、大きいサイズの売り場を作ったのも伊勢丹が初。サイズは27号までを取り扱い、今では年間100億円を売り上げるまでになりました。さらに、顧客の声から誕生したサービスが「ボーテ・コンシェルジュ」。どんなブランドの化粧品が自分にあっているのかわからない、そんな女性客のために、コンシェルジュが肌を診断、化粧水はこのブランドのこれ、美容液はここのとオススメを教えてくれるのです。また、相談員がそれぞれのライフスタイルにあった保険を紹介してくれるサービスサービス、また、「儀式110番」では、結婚式のご祝儀の相場、葬式での香典の相場など、冠婚葬祭について、わからないことには何でも答えてくれる相談員を配置しています。もちろん、これらはすべて無料のサービスなのです。


伊勢丹の秘密D デパ地下ブームの火付け役

デパ地下ブームの火付け役のひとつとなったのも、伊勢丹の地下一階食品売り場です。今月13日、その食品売り場が開業以来という、リニューアルを迎えました。最大の特徴は売り場を「和・洋・マーケット」の3区画に分けたこと。和食の惣菜を買った人は、お酒は日本酒、デザートは和菓子を買う人が多く、洋食の惣菜を買った人は、ワインにケーキという取り合わせが多い、そんなマーケティングに基づいて考えられたリニューアルなのです。さらに、食品売り場といえば雑然としたイメージですが、それを一新し、照明・ショウケースなどに統一感をもたせ、ファッション性を演出、通路の幅は3メートル以上と見た目の美しさだけでなく機能性にもこだわりました。さらには今回、フランスのトップシェフ・アラン・デュカスの店がデパートに初めて出店するなど、話題のブランドも事欠きません。そんな中、今回のリニューアルの目玉となったのが、キッチンステージ。これは伊勢丹で売られている食材を使い、一流シェフのレシピで調理、調理方法を教えてもらいながら、有料で試食もできる、というシステム。例えば、初回のレシピのひとつは日本を代表するフレンチの巨匠「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三シェフの「望来豚のグリエ」と「海草と雑穀米サラダ 枯木柚子風味」。望来豚という、伊勢丹一押しの豚肉と、同じく一押しの柚子果汁を使った料理。この2品で1890円。気に入って家でも作りたいと思えば、レシピを手に、料理に必要な食材、すべてを隣のマーケットで買うことが出来るのです。

このキッチンステージを企画したのが、食品のバイヤー、中本光昭さんです。業界でも初めての今回の試みだけに、当初、食材、メニュー選びは困難を極めました。名の通った有名シェフの味を伊勢丹スタッフで再現する。この難題に、実際のステージとなる、地下の食品売り場でも夜遅くまで、トレーニングが続きました。試行錯誤を経て、6月13日、いよいよオープンを迎えた食品フロア。キッチンステージはオープンと同時に、客席は満席状態。入場制限も行われるという人気ぶりに。当初の売り上げ目標を上回り、食材が急遽追加されたほどでした。現状に留まらず、伊勢丹新宿店は、常に進化を続けています。


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