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SmaSTATION特別編「真剣対談:北野武×香取慎吾」
海外の映画祭でも高く評価され、かの黒澤明が日本映画の未来を託した世界の北野武。
そんな映画監督・北野武と香取慎吾の夢の対談がついに実現!
北野作品の全貌に、香取が迫ります。
ボク、SMAPの中で、唯一、熱湯コマーシャルに入ったことがあります(香取)
香取:どうもこんにちは。
北野:いろいろとすいませんね。映画がね、客が入らなさそうなので宣伝しようと思って。
香取:こうやってお会いできて、お話しできるという事で、ここ2週間くらいですかね、毎日考えてました。北野武さんのことを毎日考えてたんですけど…。その中で思い出したんですけど、SMAPの中で唯一熱湯コマーシャルに入った事があります。唯一ですね。
北野:あ、そうか。俺があの番組やってる時にSMAPデビューだもんね。番組のときくらいからだもんね。
香取:唯一ですね、熱湯コマーシャル。一番下なんで、年齢が。
北野:あ、そうなの。
香取:一番年齢が下で、あの時、熱湯コマージャル入る入らない、って話になった時に「お前入れよ!」ってことになって、僕がスタジオで全部脱いで、熱湯コマージャルに入った事あるなって思い出しました。あとですね、10年くらい前にSMAPのライブで歌を歌った事あります、ボク。
北野:そっちが?SMAPのライブで歌を歌った?
香取:SMAPのライブで自分ひとりのコーナーで歌を歌ったんです。武さんの作詞した「嘲笑」。あれをですね、ひとりで歌った事があるんです。
北野:「嘲笑」って俺、銚子商業かと思っちゃった。そうじゃないんだな(笑)。
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「TAKESHIS'」は、いい映画とか悪い映画とか一切言わせなくて、何て言っていいか分からない映画(北野)
香取:スマステーション、見た事ありますか?
北野:スマステーションってね、なんか前にね、映画の宣伝してくれたとこだけ見ちゃってさ、悪い事したなーって思ってたんだけど(笑)。俺がヨーロッパ行ってるときの、追っかけみたいなのを見させてもらって…。
香取:やらせていただきました。
北野:本当にお世話になってて。
香取:それで新作の映画なんですが、見させていただきました。
北野:疲れ果てたでしょう(笑)。あれ、みんな疲れ果てたって言うんだよね。ヘトヘトになるって。ヘトヘトになった後、しばらくして、悲しい映画だったな、ってやっと気がつくって言ってたよ。
香取:僕は見終わった後、1時間くらい本当にぼーっとひとりで色んな事を考えました。
北野:頭がコンフューズするように撮ったんでね、グルグルグルグルいろんなんな事が出てくるように…。いままでは感動させるとか、喜ぶとか、キレイだとか、逆につまんなかったとか色々あるじゃん、意見が。今度のは、俺の作戦かも分かんないけど、いい映画とか悪い映画とか一切言わせなくて、何て言っていいか分からない映画。けなす訳にもいかないし、ほめる訳にもいかないような映画っていう…。自分が答えちゃうっていうかね、それに対する答えが何だろうって感じになればいいなって思ってたんだけど。
香取:ボクは見させてもらってすごく好きな映画でした。いろいろ作品を見させていただいてる中でも、好きな映画でしたね。映画を見たりするときに、ボクは、「この映画を撮った監督さんはどういう思いで撮ったのかな?」とか「これを演じている役者さんはどんな思いで演じているのかな?」ってシーン毎にいろんな事を自分の頭の中で思いながら映画を見てるんですけど、そのボクからしたら、頭から最後まで、ずっといろんな事を考えながら見させてもらったんで、見終わった後もずっとその映画のことばかり考えてましたし、面白かったですね。自分、映画見たりする時に、「これどういう意味なんだろう?」って考えて、自分の中で、「これ、こういう事なんじゃないかな?」って思いながら見たりするんですけど。今回の映画は見て考えてても、最終的に結果が見つからないところがあったんですよ、いくつか。そういうところは、監督は自分の中では、全部理解した上でやっているのかな、って思ったんですけど…。
北野:一応は、台本・脚本を作って、頭からケツまでのストーリーをちゃんと作ってあるんだけど…。普通のストーリーを作ってそれを入れ替えるんだけど、入れ替えた瞬間には、ちょっとあれって思うじゃない?なんて言うんだろう…例えば映画のシーンで1から10まであるとするじゃない?1から10までその順番に1、2、3、4って見せてくれば10で終わって、「こういう映画だったんだ、あー面白かった」いうのを、わざと8から始めて7が来て、6が来て1が来てって並べといて、見た人に「自分で1から並べ直してよ」っていうような、簡単に言うとそんなようなことで作った映画だから、考えると疲れるよね。その感じが分かってると、頭で理解するより、こうなんか全体で体感しちゃうっていうか、体感してなんか妙な感じになればっていうような…。手法っていうか映画に対する新しい挑戦ではあるのね。見た人それぞれにエラい解釈の違いがある、みたいなことはやりたかったなと。
香取:10年以上前からずっと、こういう映画作ってみたいっていうのは頭の中にあったっていうのを雑誌のインタビューでみたんですけど、ずっと前から…。
北野:台本はね、10年前にあったやつなんだけど。きっかけはその本なんだけど、10年経ってるとストーリーがすごい古くなってて…。そのときに主人公がタクシーの運転手だったのね。いまとなったら、タクシーの運転手が主人公なんてのはいままでにいくらでもあるから。もうちょっと、夢とか現実とかが入り乱れてくるんだけど、現実に自分にソックリな双子が出てくるのはどうだろうって。ネタ自体は古いんだけど、作ったのは、撮影の何ヵ月か前。新ネタにしちゃった。全然違う話に。
香取:思った中で、岸本さんのイメージが…いつも拳銃撃ったりするけれど、岸本さんのハートな部分もあって救われてるけど、今回は「お前ふざけんなよ」とか言ってて、ショックでした。「この人、怖い」って。
北野:加世子ちゃんは、「未だに私わからない」って。だから、「ずっと、恨んでてくれ」って言ってたの。上手いからちゃんとやってくれるんだよね。
香取:セリフっていうのは、本の段階であるんですか?
北野:ほとんどない。ちょっと「こんな感じ」とか書いてあるけど…。外なんかは…海行って、晴れの雰囲気で(セリフ)書くんだけど、「意外に、曇った方が良いな」と思うと、セリフ変えちゃうし、設定変えちゃうもん。
香取:セリフもですか。
北野:車が来て、こうやって撃つとか。カメラワーク変えないと。晴れの日用のアングルがダメってのもあるしね。俺、待たないからね。「晴れるまで待ちましょうよ」「ヤダ!」って。結構繋がってないの、いっぱいある。
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タケシの暴力とタランティーノ暴力とか言われて、「じゃぁ、もっと痛いのやるか」って、何かっていうと拳銃撃ってたね(北野)
香取:いままでの作品を見直したりしたんですけど、銃が出てるじゃないですか。どうしてこんな銃があるのかなって。
北野:最初、ヨーロッパで有名になったのは暴力映画で、ある時、タランティーノと比較されて、タケシの暴力とタランティーノ暴力とか言われて。「じゃぁ、もっと痛いのやるか」って、何かっていうと拳銃撃ってたね。でも、もう飽きちゃったけどね。それで、飽きると拳銃が無い映画を撮るんだけど、「なんで暴力映画をやらないのか?」って言われて…。でも、やると『お前にとって暴力とは何か?』って(笑)。どっちやれって言うんだ(笑)。だから、使ってるときと、やらないときと、交代でやるようになっちゃった。
香取:いままでの作品の中で、一番好きな作品って何ですか?
北野:映画監督共通のギャグなんだけど、「ベスト1は?」って聞かれたら、「次の作品だ」って大体言うんだよね。で、「次の映画はどんな映画か?」って聞かれたら、「口でいえるなら映像に撮らないよ」って。「どんな映画が好きですか?」っていうと、「好きな映画がないからまだやってんだよ」って(笑)。でも、『ソナチネ』とかね、意外に『みんな〜やってるか!』とか好きなんだよね。
香取:へえー。
北野:『みんな〜やってるか!』の時、久々にお笑いのくだらなさを楽しめたっていうのと、なおかつ出来上がったものがあまりにも酷いって言うのが、オレ嬉しくてしょうがないの(笑)。
香取:編集が好きなんですよね、編集が好きだというのを…それも雑誌とかからなんですけど、今回片っ端から読まさせていただいて、ってところで、編集が好きなんだなって思ったんですが、いままでの中で編集し直したいのってあるのかなって思ったんですけれども。
北野:編集させてくれるなら全部するよ。全部やり直す。
香取:全部やり直しますか。
北野:うん。
香取:それは100%納得がいっていないってことですか?
北野:要するに、なんだろう…。編集ってさ、プラモデルのセットをもらうじゃない。それに、ターゲット何番って説明書がついてて、キットがあるじゃない。それはがして、張り付けるじゃない。そのキットはオレが撮影したものなんだよ。それをくっつけていくのが編集なの。車だとタイヤとかつけて、いろいろと…。最後に色塗るとするじゃん。それで、最後にやっと何とかっていうスポーツカー出来たとするじゃん。で、出来たんだけど、飾っといて後から見たら「この色、気に入らないよな」とか「タイヤちょっと違うよな」とか。だから、タイヤもっと太いのにしたいとか…。それと同じように作品も、もう一回見てて、この間悪いよなとか、もうちょっと次のシーン早く出した方がいいとか、音楽はこっからじゃないよなとか…。だから何回やっても同じなんだよね。何回やっても、いつまででもいじくるから、ある程度でもう諦めるんだけど、時間が立ってもう1回見直してると、「ああ失敗してる」とかよく思うね。大抵みんなそうだよ。みんな直したがる。
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今回の新作は『座頭市』よりもボクは好きでした。見終わった後、1時間くらい本当に悩んだんですよ。そういうものの方がボクは好きなんで…(香取)
香取:映画をやっていて、ヒットするしないとか、興業とか、そういうことが気になる方ですか?
北野:えっとね…初めは全然気にしなかった。入んないに決まってるだろうと思ってて。それでね、ちょっと外国で賞貰い出した時に、外国でも「タケシはヨーロッパに比べて人気がない」とか「日本の興業ではあんまり客が入らない」とかいわれて、それも当たってるから、別にしょうがないなと思ったんだけど、一番心配したのは『座頭市』だよね。要するに、勝(新太郎)さんがあれだけやってきたやつで、オレがリメイクして客がはいんなかったら失格だな、ってすごい悩んだ。あれだけは、客が入るか入らないかってすごい気になった。でも、自分の映画のキャリアのなかではベスト1だから。もう圧勝したから、だから途端ににもう、客入らない映画でもいいと思っちゃった。もういいじゃん。一回やったもん。メダルは1回取ったことある、みたいな(笑)。
香取:『座頭市』も見させて頂いたんですけれども、『座頭市』よりも今回のほうが僕は好きです。
北野:ははは。
香取:すいません、正直にいろんなことを言いまして。いろんなことを言ってしまっていますが『座頭市』よりも僕は好きでしたね。『座頭市』は、美しいというかストーリーとかが綺麗に…最後の終わり方とかもホッと出来るっていうか、「ああ終わった…面白い映画見たな」って言えたんですけれど、今回の新作は見終わった後、1時間くらい本当に悩んだんですよ。そういうものの方が僕は好きなんで…。頭の中で「この人何考えてるんだろう?」とか、そういうのを考えるのが好きなんで、今回はたまらなかったですね。
北野:なんかね、オレも映画撮る時に、『座頭市』である程度稼いだんだからいいからやらせてよ、って言ったの。「好きな映画撮らせてよ」って。ちゃんとお金を…出資してる人は、それはお金儲けのために『座頭市』に出したんでしょ。ちゃんと返したでしょう、お金儲けて。「今度は多分返ってこないから、少しでいいから好きな映画とらしてくんない?」って言ったの。「前の映画の利子だと思ってさ」って言って。プロデューサーなんか頭抱えてるんだけど、「何を言い出したんだ。こいつ」って思ってるけど、でもいいじゃないって(笑)。
香取:そこなんですね。そこも、今回の作品のインタビューとか読ませてもらったら、「今回は捨てた」みたいなことが雑誌に載っていたんで。でも、その文章読んだ時に、映画作るときって、凄くお金が必要で、スポンサーの人たちに対しての気持ちとかっていうのは、どうなってるんだろうなって思ったんです。
北野:だから、もう興業で一杯人が入ってくるような映画ではないってハナから言ってあるから。マニアックなやつが見て、いいか悪いか判断してくれるような映画だしね。ハリウッド映画みたいに物凄いお金をかけて、世界中の人が見る映画と、マニアックなやつが映画が好きだとか、あの監督の作品が好きだからって見るのとは全然違う話で。両方とも映画だけども、そっちのコアな部分でも、あってもいいからね。今度は基本的にはマニアックだからって言ってるんだよね。
香取:今回の映画が10数年前からあったっていうように、いろんなやってみたいことっていうのが、頭の中にあったり文章にしてたりするのかなと思ったんですけど…。
北野:ああ、基本的に映画の台本は結構あるね。
香取:あるんですか。
北野:うん。もう、1ページで済むから。こんなような話って書けば。あとそれを膨らまして映画撮るだけだから、それを考えれば結構あるね。
香取:それは、ちゃんと文章にしたものがいくつもあるってことですか?
北野:ノートにナンバーふってあって、そのノートにタイトルがいろいろ書いてあるんだけども、それに関する思いつきはそのノートに書いて、違うネタは、「今度はこの映画の時に必要だ」っていうと別のノートに書いて。2行しか書いてないのもあるし、半分以上書いちゃってるのもあるし。だから、次の映画、っていわれたらいつでも「いいよ」って言っちゃうけどね。
香取:次の映画っていったら「じゃあどれにしようかな」って?
北野:まあ準備じゃないけど、映画って準備入るまでにね、セット作ったりなんかするから、結局はやれちゃうよね。時間があるから。
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映画は好きは好きだよ。でも、映画が女だとしてさ、命かけられるか、っていうととんでもない(笑)。やって逃げる、っていう方だね(北野)
香取:映画は好きですか?
北野:んーとね、好きは好きだよ、もちろん。でも映画のファンとか映画のいまの監督達がこういう風になってるのを見ると恥ずかしくなるな。オレそんなに好きじゃないもん。
香取:好きだけど、そんなに?
北野:女がいてさ、この女に命かけようなんて全然…映画が女だとしてさ、命かけられるか、っていうととんでもない(笑)。やって逃げるって方だね。追っかけてきたら蹴るし、非常にだから、映画に対しては不謹慎だね。何にもかけてないし。
香取:監督をやってて、主演が自分の時が多いじゃないですか。それは、自分の作品だと分かりやすいからですか?自分のやって欲しいことを自分はしっかりやってくれるからなのかな、って僕は思ったんですけれど…。
北野:自分だから分かりやすいっていうのはある。でもそれは、本当はすごい悪い事で、下手でもOKしちゃうから。失敗してても「オッケー!」って言っちゃうから。面倒臭いもんで(笑)。
香取:そこも聞きたかったんですけれど、自分のシーンのときに自分のお芝居するじゃないですか。それでカットって言って「よし見てみよう」ってなった時に、自分の芝居がもし納得行かない時に、「自分がだめなんでもう一回やります」っていうのをいうのかな、って。
北野:言わない、言わない。
香取:言わないですか?
北野:「オッケー!」って言って、「カメラの位置変えます」っていって。また間違えたってときは、「じゃあ後ろからも撮るぞ」って言って。もういい加減なもの(笑)。「まあいいや」って言って、自分でカットって言っちゃうし…。
香取:あと、出演者の人たちがずっと一緒にやってる人が多いじゃないですか。それっていうのは、やっぱりその人たちのお芝居が好きだから一緒なんですか?
北野:好きなこともあるけど、それ以前に一番オレの事を理解してくれてるっていうか、「ああ、北野監督はああいうもんだからいいや」っていう、諦めが大分入ってるね。あと、「自分達で支えなきゃ」っていう。だってスタッフ、照明さんとかみんなそうだもん。1本目からだから。
香取:ずーっと同じ人たちですか?
北野:オレなんか映画のこと知らないんだから、「カメラでなんか、レールかなんかあってこうやって動かすだろ、それやってよ」っていったら、「はぁ?」って。「顔こうやっていくの」「ズームですか?」「いやズームじゃなくてさ、こうやっていくの」って言って。で、ビデオで見せてもらって、「そうじゃねえよ、バックがもっとこう…」「ああ、フォーカスあわせておいて移動ですか」「だから、そう言うのなんていうの?」って聞くんだよ。わかんねえことはわかんねえって言うと教えてくれるから。で、教えてるうちに、「この人を助けてあげなきゃ」って思うんじゃない(笑)。
香取:で、ずーっと一緒にやってくれてる人たちが…。
北野:うん。だから無理言ってもやろうとするしね、映画の人って。だからありがたいなと。
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ボクは、自分の意見とかで勝負する感じが好きなんです。リハーサルは大嫌いなんです(香取)
香取:ボクもお芝居をいろいろとしてる中で、自分の思う意見とかで勝負する感じが好きなんですけれども、あまり役者さんには言ったりしないって、本とか見たことがあるんですけれど、それはどうなんですか?
北野:役者さんがこうやって、まあ感じだけ言って、リハーサルで2回くらい言って、「あ、違うけどこれできないだろうな。これあと4回くらいリハーサルしたらできるようになるのかな?」って思う以前に、「おい、カメラの位置変えよう」って、自分が逃げちゃうね。本当は正面の顔が欲しいんだけど、何回かリハーサルしてて、「これ、何回かかかるな」って思ったら、「横顔にしちゃおっか」とか「後ろにしちゃおっか」とか。それのほうが安全だな、という…。でも、うまい下手じゃなくて合う人いるじゃん、イメージが。そうすると、リハーサルして、1回リハーサルして、ハイ本番ってそれで終わっちゃうんだ。だから早い早い。
香取:自分のことなんですけれど、僕はリハーサルが大嫌いなんですね。リハーサルは凄くする方ですか、しない方ですか?
北野:ああ、オレはしない。全然。
香取:しないですか。
北野:オレはだって、オレのエキストラがいるわけじゃん。それ見て、「ああ、分かった」っていって、「ハイ、本番」って入っていくだけだもん。こっちからみて、そのエキストラのマズいところだけ見て、あれをしちゃいけないんだな、これをしちゃいけないんだな、っていって、位置関係全部見て、ハイ本番って…。同じことをやるんだからいいじゃないか、って。面倒くさいもんね、だから、リハーサル大っ嫌い。
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黒澤監督は、延々と50何回リハーサル見てて、「今日はやめとくか」って帰っちゃうくらいだから、凄いらしいよ。俺なら二本撮ってる(北野)
香取:この間ですね、スマステーションで黒澤明監督のスペシャルをやったんですよ。黒澤監督に「ビート君、日本の映画をよろしく」って言われたんですか、本当に?
北野:手紙が来たの。あんまり人には見せないの。他の悪口も書いてあるし、「お前にしか言えない」って書いてあった。見せると、問題起こるんでね。ガタガタぬかしたら、「これ見ろ。お前なんか相手にしてない」って言ってやろうかと思って(笑)。
香取:そのくらいいろいろなことが書いてあるんですか?
北野:書いてあったよ。
香取:黒澤監督の映画って、ボク1本も見たことないんですよ。自分もお芝居とかを少しでもやらさせてもらっているんで、いつかは見なきゃと思っているんですけど…。黒澤監督の映画は見てないんですけど、北野作品は全部見てます、ボク。
北野:それは大変な事だな。
香取:大変な事です。
北野:大変な被害者だな、と。
香取:被害者ですか、僕は。
北野:黒澤監督の絶頂期の映画を見ると、感動するよ。
香取:いろんな人に言われたりするんですけど…。
北野:画面で10センチずれただけで、怒るような人だから。(ふたりの位置関係を示して)いま、こういるじゃない、これがOKだとするじゃない。足があってこう話したとするじゃない?で、こうやっただけで(と、足をわずかに動かす)、「どうして動かしたの?」って。
香取:耐えられませんね。
北野:松村達雄さんて「まぁだだよ」の人は、普通の頭を真っ白に染めるんだけど、一週間で真っ白になったって。一週間でノーメイクになったって。
所(ジョージ)が言ってたもん。「所、お前はどうなの?黒澤さんに怒られなかったの」って聞いたら、「いや、相手にされてないもん」って。「何でだ?」って聞いたら、「俺、犬扱いだよ」って。「あ〜、所君、その辺にいて」って。「立ち位置は?」「いいんだ、何処にいたって。犬みたいなもんだから何処歩いても関係ない」だって(笑)。でも松村さんは、「役者だろ、アンタ?そんなこともできないの?」って。本人は「もう降ろしてくれないか?」って言ったんだって。「バカな事言ってんじゃない役者のクセに」って言われて。
香取:これはもう耐えられないっすよ、ボクは。
北野:やっぱ「黒澤天皇」って言われただけの人だから。延々と50何回リハーサル見てて、「今日はやめとくか」って帰っちゃうくらいだから。凄いらしいよ。俺なら二本撮ってる(笑)。
香取:ご自分の中でも、黒澤さんって凄い人ですか?
北野:やっぱり、みんなそうだろうけど、映画に対する思い入れが凄いね!あの人、映画撮ってまたスタッフ呼んで、毎日ウイスキー1本飲むんだけど、あくる日の映画スタート直前まで飲んでる時があるって、それを延々と続けるって。あの身体、でっかいでしょ。一日中、って言うより一生映画漬けになってるみたい。
香取:そういう人を知っていても、自分ではリハーサルは何回もしないんですよね?
北野:エピソードはいろいろあるけど、いくら一生懸命やっても最高になっても黒澤明だもん。同じ階段上ってもしょうがない。違う方法で上がんないと。クレーンとか使って。違うハシゴ掛けちゃわないと。ヘリコプターでも何でもいい。墜落しちゃうけどね、オレは(笑)。
香取:お芝居、ボクもやらせてもらってるんですけど、ボクの芝居見たことはありますか。
北野:NHK?
香取:NHKでも何でもいいんですけど。
北野:NHKはアップが多いね。NHKは『宮本武蔵』もやらせてもらったんだけど、いいな、NHKは。あれだけ時間かけて、お金があって。でも、「何を選ぶんだろう?」って思うよね。何10カット撮って10秒くらい。
香取:「新選組!」のボクのこと、見た事はありますか?
北野:うん。でも演技はね、オレ、本当のこと言うと役者のせいじゃないと思う。だって、どう撮るかの監督の問題であって、役者を人間として見ていない。そうでないと、動物の映画撮れないから、動物映画見て泣いてる人、バカじゃないかって思うもん。親に捨てられた犬が餌もらって喜んでるっていっても、こっちで調教師が笑えっていってるだけじゃないかって。悲しい音楽かけて、犬が尻尾を振ってると、悲しいっていうけど、犬に自分の感情を当てはめようとするから悲しいんじゃん?能は芝居のセットがあって、能面を被った表情も無い顔で、自分の子が死んだとお墓の前で泣いている。お面の表情は変わってないけど、自分の感情を対応させようとするのが役者であって、そういう風に見えるように演出するのが監督であって、「今日何食おうかな」って考えてて悲しい顔していても誰も分かりゃしないんで。一番大切なのは画面で悲しく見えればいいんであって、見ている人が泣いてしまうのは、画面の顔だろって。でも役者さんは、どうしても思い入れを作って演技する。それはいいいんだけど、内面が全部出るわけじゃないし、(それよりは)手足のことを気にしてくれた方がいいんだ。ヤクザの役なんか(ポケットに手を入れて)“殺してる”っていうんだけど、こうしてた方が楽なのよ。いつもこうやってて、ヒドイのはこっちが(左手)あまるでしょ。こっちタバコにしやがるんだよ。「タバコ止めてもらえますか?」って言うけど、両手出したら、もう分かんなくなるんだよ。みんな、ポケットに手突っ込んでタバコを持つか、両手をこうやって(ポケットに入れる)するしかないんだよ。芝居をじゃんじゃん自分自身で殺す…そういうところを役者は気を使った方がいいんであって。あと、ひとつのナントカスタイル、松田優作スタイルとか、女優さんのスタイルとかあるじゃない?みんな似てるんだ。みんな「あぁ、あいつのスタイルだな」って。桃井かおりスタイルとか。そういう風にならないようにオリジナルで良いんじゃないかって。自分なりに人が真似するように演技してくれればいいよ、って。
香取:分かります。僕も不良とかの役の時に、どうしても手とか入れてしまいます、ポケットに。でも、いろんなこと何回もやってると、ここに入れるのが嫌になるんです。「なんで、俺はこれしかやらないんだろう?」って思うんだけど、いざ外してみると、「うわっ、どうしよ!?」って。やっぱ難しいなって思います。
北野:役者をイジメるのはすごい簡単で、「歩いてください」って言って、「ポケットから手を出して歩いて」って。出しても何か気持ち悪いんですよ。「もうちょっと、手を大きく振ってくれない?」って言うと、普段歩いている時、気にしてるやついないから、みんな参っちゃうね。大抵、ポケットに手を入れちゃうと殺しちゃう。ヒドい奴はポケットに手を入れたまま全力疾走だもん(笑)。「手を振れよ!」って(笑)。
香取:僕を映画に使って下さい。
北野:おお!面白いね。
香取:すごく思い切って言ってます。「1回だけでいいんで、1回だけでいいんで」って新作の中で言ってるみたいに。
北野:次の映画の脚本出来たら…。
香取:是非!
北野:いいすよ。
香取:いま、「いいすよ」って言いました?
北野:あぁ、これテレビか。約束になっちゃうか。大丈夫だよ。結構そうやって使う人多い。
香取:本当ですか?ボクは、絶対ポケットに手を入れません。頑張ります!本当にもうそろそろ時間がなくなりそうな雰囲気なんですけど…。映画とかも好きなんですけど、イタリアも好きなんですよ。そういうとこの趣味も合うんです、
今回の映画、ボク大好きなんで、分からないとこも多かったんですけどいいんですよね?
北野:いいの。みんな、どうも悩むらしいんだ。しばらく。でも、どう悩んでも当たりなのね。それが「狙い」で。
香取:今後も期待してます。黒澤作品は見てないけど、北野作品はいっぱい見ている…
北野:見た方が良いと思う。小津安二郎は1本観ればいいよ。『東京物語』。
香取:…黒澤作品は見てないけど北野作品は全部見ているような「被害者」がいる事を知っておいて下さい。そんな時代です。期待しています。ありがとうございました。憶えといてください。ポケットには絶対手を入れません!!
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