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毎年数々の大作映画を生み、世界中の人々を楽しませるハリウッド映画。その映画作りは「プリプロダクション」「プロダクション」「ポストプロダクション」「配給」の4つに分かれています。そんなハリウッド式の映画製作にスポットを当てたシリーズの第2弾は、第2過程「プロダクション」<前編>をお送りします。
大都市が撮影に全面協力する理由とは…
ストーリーの原案となるアイディアを脚本に仕上げ、資金調達からキャスティング、スタッフィングといった、いわゆる撮影前の準備過程にあたる「プリプロダクション」。プリプロダクションによって完成した脚本は、映画作りにおいて絶大な力を持つ「プロデューサー」によって集められたスタッフの元へと送られ、撮影に向け、チームが動き出すのです。
その脚本を元にまず監督が全体的なイメージ、構想を練るわけですが、その構想を元にロケーション現場を決めるのが、「ロケーション・マネージャー」です。ロケーション・マネジャーは撮影場所を見つけ、その許可を取るのが仕事。脚本を元にイメージを膨らませ、膨大なデータベースの中からロケの候補地を選定、監督に提出します。
ハリウッドのあるロサンゼルス市は撮影には協力的。例えば、ハリソン・フォード主演「ハリウッド的殺人事件」のロケはほとんどハリウッドで行われ、カーチェイス・シーンも公道を全面通行止めにして撮影されました。このように、ロサンゼルス市ではロケのために、有料で公共施設、道路を貸し出すシステムが出来上がっており、現場にはLAPD(ロス市警)が交通整理にやってくるほどなのです。 ハリウッドだけではなく、アメリカではニューヨークなどの大都市も撮影に積極的に協力します。トム・クルーズ主演「バニラ・スカイ」では、世界で最も人と車が多い場所のひとつ「タイムズスクエア」を全面通行止めにし、撮影が行われました。
では、なぜアメリカではこのような大掛かりなロケの許可がおりるのでしょうか。それは、アメリカでは道路や施設を有料で貸すことによって、映画ロケを産業として成立させているため。これにロケに伴うスタッフの宿泊、食事の費用も加わり、莫大な富をもたらしているのです。例えば年間100本以上の映画が撮られるニューヨーク市ではロケによる経済効果がおよそ60億ドル・日本円にして実に6300億円。これは市の予算の17%にも相当する額なのです。ハリウッドにいたってはその経済効果は実に280億ドル、3兆円にものぼるといわれています。
一方、システムが未熟な日本では、まだまだ街中でのロケは難しいのが現状です。しかし過去に、ハリウッド映画でこんなロケが実現したことがあります。リドリー・スコット監督、「ブラック・レイン」は、大阪を舞台に、ふたりのアメリカ人刑事が大阪府警の刑事の監視の下、逃亡した殺人犯を追う、という映画は、マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア、高倉健という豪華キャストに加え、松田優作の遺作となったことでも大きな話題となりました。この大作の大阪ロケで、1度は大阪府警も道路使用許可を出したものの、あまりの規模の大きさに驚いたのか、追加の許可は出さず、結局、夜のシーンは大阪が舞台にもかかわらず、香港で撮影されることになったのです。
ちなみに、国を挙げて映画産業を振興している韓国では、公道のロケはもちろん可能。あの「シュリ」もソウル市全面協力の下、ロケが行われたのです。
本物を再現!驚異の美術セット
ロケ地が決まったら、次は下見。「ロケーション・スカウト」と呼ばれる下見には、撮影に関わるあらゆるスタッフが参加します。カメラ運搬がスムーズに出来るか、カメラ用のレールを敷くことは出来るのか、何台車を停めることが出来るのか、照明機材の設置はどうか…様々な観点からロケ場所としてふさわしいかどうか、検討が加えられていきます。
しかし、時にはこんなケースも。日本でも公開され、大ヒットとなった、ソフィア・コッポラ監督「ロストイントランスレーション」。主に日本で撮影されたこの映画、ソフィア・コッポラがこだわったロケ場所が東京・新宿のパークハイアットホテル。2度も撮影を断られたにも関わらず、コッポラ監督は、「このホテルで映画の構想ができあがった。ロケ場所はここ以外に考えられない」と、自ら支配人を口説き落としたのです。
ロケーションスカウトを経て、ロケ地が決まると、撮影に向けてそれぞれのプロフェッショナルが本格的に動き出します。ここから中心になっていくのが3人の人物――監督、撮影監督、そして美術監督です。美術監督はロケ地が決まると、まずはセット作りに入ります。まもなく最新シリーズが公開される「スターウォーズ」。「エピソード1 ファントムメナス」でアナキン・スカイウォーカーの故郷・惑星タトゥイーンのロケ地として選ばれたのがアフリカのチュニジア。このなにもない砂漠に、美術スタッフはひとつの街を作り上げました。
一方、ロケは行わず、スタジオ撮影の映画も数多くあります。超大作ともなれば、このセットに巨額の資金がつぎ込まれることが少なくありません。例えば、レオナルド・ディカプリオ主演の名作「タイタニック」。美術スタッフはオリジナル設計図のコピーと、姉妹船の資料写真を元に、なんと2年をかけて巨大なタイタニック号セットを作り上げました。まず、タイタニック号セットを収容するためだけに、メキシコ・ティファナ市に巨大スタジオを建設。そして、実物のタイタニック号が全長268メートルなのに対し、236メートルという、実際のものに極めて近い大きさのタイタニック号を再現してしまったのです。スタジオ内には6エーカー…東京ドーム半分の広さの海水タンクを設置。ここであの、沈没していく感動のシーンも撮影されたのです。このセットの建設費は2000万ドル、およそ25億円にものぼりました。コリン・ファレル主演、今月日本公開の「アレキサンダー」では、いまはなき、アレキサンドリア図書館、伝説のバビロン宮殿を細部に至るまで完全に再現しました。その製作費はなんと200億円だったそう。そして、スティーブン・スピルバーグが監督を務めた「ターミナル」。美術スタッフはなんとニューヨークJFK空港のターミナルを本物並に再現。照明、フローリング、エレベーター、さらにはフライト・インフォメーション・パネルに至るまでが、本物と同じものが使用されているのです。レストランや免税店など、店舗も35店が実物と全く同じに作られたというこのセット、スピルバーグ曰く、「これはハリウッド史上2番目に大きいセット」だとか。ちなみに、これまでで最大の屋内セットは、「未知との遭遇」のデビルスタワーだそうです。
体重管理から特殊訓練まで・俳優陣の“役作り”
スタッフによる撮影準備が進められている間、出演する俳優達は役作りに励みます。代表的なのは体重のコントロールですが、もちろんそれだけではありません。ロバート・デ・ニーロは「アンタッチャブル」でマフィアのボス・アルカポネを演じるため、1週間、毎日7時間をかけて髪を抜き、髪型を作り上げました。ニコラス・ケイジは「バーディ」出演のため、歯を2本抜き、シャーリーズ・セロンは「モンスター」のため、13キロ増量した上、眉もすべて抜き撮影に臨んだのです。また、特殊な訓練をつむケースもあります。チャーリー・シーンは「プラトーン」のために米軍の訓練所で2週間鍛錬を積みました。「ブラックホークダウン」に出演したジョシュ・ハートネットも米軍訓練所にはいり、訓練をつみながら、役作りのため軍人達の体験談を聞いて回ったそうです。さらに「ラストサムライ」のトム・クルーズは、鎧をつけての立ち回りのため、11キロも筋肉を増やし、更に、新渡戸稲造の「武士道」を読み込んで精神面からも役に入り込んだそう。「ボーン・スプレマシー」のマット・デイモンは、格闘家のような歩き方を監督から求められたため、実に半年間もボクシングジムに通い、さらにはフィリピンの格闘技も身につけたのです。
ワンカットに368日?監督&撮影監督のこだわり
こうしていよいよプロフェッショナルたちが現場に集うのがクランクイン。撮影初日です。プロダクション最初の段階でまず監督が脚本を元に、どんな映像でストーリーを見せていくのか、構想を作り上げましたが、それを現場で実際に映像化するのが撮影監督です。撮影監督は監督、照明の担当者とそれぞれのシーンについてカメラの動きを決め、さらに監督の要望によっては、映画の色彩・そして照明にも細かい指示を出すのが仕事です。いま世界で最も注目されている撮影監督のひとりは、ダリウス・コンジ。ブラッド・ピット主演の「セブン」でハリウッドデビュー、斬新な映像が話題を呼びました。その後「エイリアン4」「ザ・ビーチ」「パニックルーム」など、数多くの撮影に携わっている人物です。コンジはフィルムに化学的に手を加えることで、陰の部分は極度に黒く、ハイライトの部分はまぶしいほどに輝く、という独特の映像美を作り上げることに成功しています。ちなみに、現在監督として活躍する中にも撮影監督出身の人物が。「スピード」「マイノリティー・レポート」を監督したヤン・デ・ボンです。彼は「ダイハード」「ブラック・レイン」「レッドオクトーバーを追え!」、「氷の微笑」といった大作でカメラを担当、ダイナミックな映像で話題を呼んだのです。
監督・撮影監督のこだわりによっては、ワンカット撮るまでに何日も待つ…それもハリウッドでは日常茶飯事。中でも、光にこだわった映画として有名な作品が「天国の日々」です。撮影監督ネストール・アルメンドロスはこの映画の多くのシーンを、日が沈んでからの20分間に撮影したのです。この20分間は「マジックアワー」と呼ばれ、世界が最も美しく見える時間帯。1日をかけて撮影準備をし、20分あまりで撮影する――驚くほど非効率的な方法がとられたのです。また、かの喜劇王チャーリー・チャップリンは、たったワンシーンのためにとてつもない時間をかけたことがあります。それは、名作「街の灯」で、盲目の花売りの娘と、チャップリンが出会うシーンです。盲目の娘に、どうやってチャップリンを金持ちと誤解させるか…その演出に悩んだチャップリンは、なんと368日も費やし、342テイク撮り直しました。そうして思いついたのが音だけをつかって誤解させる方法だったのです。「街の灯」の総撮影日数は534日。撮影の実に半分以上の時間をこのワンシーンに注ぎ込んだのです。


撮影現場では、スタッフの所属するユニオンとの契約によって、就労時間、食事時間、休憩時間、あらゆるものが厳しく決められています。食事も弁当ではなく常に暖かいものがサーブされ、スターにはひとり1台の豪華トレーラーが…。そんな中、現在ハリウッドで撮影中のスティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演の『宇宙戦争』撮影現場へスマステーションが独占取材を敢行予定!次回の「ハリウッド映画の作り方」シリーズ第3弾「プロダクション」<後編>では、撮影現場でのスタッフの待遇、ギャランティー、ハリウッドスターたちの現場での素顔に迫ります!お楽しみに!!
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