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スペシャル対談

監督・石浜真史&キャラクター原案・依り スペシャル対談

登場人物たちのたたずまいや表情のベースとなる“キャラクター原案”を手掛けているイラストレーターの依り(より)さん。これまで、仕事としてアニメとかかわったことがなかったという彼女だが、石浜監督の熱烈なラブコールで依頼を引き受けたそう。ここでは、キャラ原案のほか、Blu-rayの初回特典としてデジパックの描き下ろしイラストも提供している依りさんと、制作の中心人物である石浜監督の対談から、アニメ『新世界より』の原点に迫ります!

石浜 まず、最初の取っ掛かりとして5人のキャラクターを作らなければいけなかったんですけど、原作が小説ということで絵素材がまったくない状態だったんですね。ただ、それは大変なことではあるんですけど、逆に新しいことにチャレンジするチャンスでもあったので、僕の方でネットを見ながら「いい人いないかな…」と探していたんです。そんな中、pixiv(ピクシブ)という画像投稿サイトで依りさんのイラストを見つけて、「これだ!」と。それからすぐ、無理を承知でプロデューサーにコンタクトを取ってほしいとお願いしたんです。

依り 自分が開いているイラストサイト宛てに、突然メールがきまして。すごくビックリしました。趣味で描いたイラストをpixivに投稿したり、自分のサイトに掲載したりしていただけで、仕事として描いたことなんてなかったものですから、最初は「本当に私宛てのメール? 間違って送っちゃったんじゃないかな?」って(笑)。それからメールでやり取りをしているうちに、石浜監督とプロデューサーさんが、(私の住んでいる)大阪までわざわざ来てくださることになりまして。そこでとにかくお話をしましょうと。でも、実際にお会いするまで、絶対に新手の詐欺だと思っていました(笑)。

石浜 本当にただやみくもに、「この人の絵がほしい!」という情熱だけで行っちゃいましたからね(笑)。そういえばあの時、依りさん待ち合わせ場所で、しばらくこちらの様子を観察してましたよね。本当に来てくれるのかとソワソワしているオジサン2人を物陰から(笑)。突然押し掛けたから仕方ないんですけど。

依り すみません(笑)。どんな方が来るかさえ分からなかったものですから。その時はまだ、アニメの世界の知識が浅かったもので、(制作を担当している)A-1 Picturesさんのことさえ、ほとんど知らなかったんです。それに、お会いした当時は普通に会社員でしたから、イラストメインでお仕事するってこと自体がピンとこなくて…。

石浜 確かに、改めて考えてみるとやっぱり、アニメ界の常識からしても、社会人のたしなみとしても、異例というか、すごく礼を失していたなと思います(笑)。ただ、依りさんの場合、絵が上手過ぎるものだから、ともすれば職業的に描いている方なんじゃないかと勘違いしてしまう。そういう印象で臨んでしまったのですが、話を聞くと、絵の指向としてアニメという方向性ではまったくなかったんですよね。それでも、「依りさんがダメだったらこの人」という次点がいなかったので、「そこを何とか!」と、とにかくお願いしました。

依り 私の場合、以前はアナログで絵画やファッションドローイングを描くことが多かったのですが、友だちに勧められて、パソコンでイラストを描き始めるようになりまして。それから、趣味として今のようなイラストも描くようになったんです。

石浜 なるほど、そういうことだったんですね。それでも、ありがたいことに仕事をお引き受けくださることになって、最初はとにかく5人を描いてください。それを取っ掛かりにやっていきましょうとお願いしたんですよね。貴志(祐介)先生は、髪型などのビジュアルを文字でかなり書き込まれているので、まずは依りさんが原作から受けた印象を絵にしてもらおうと。

依り 実は私、貴志先生の作品が本当に小学生の頃から大好きで、先生が携わっている作品に参加させていただくこと自体、大変光栄であると同時に、ものすごくプレッシャーがあったんです。キャラクター原案を描くのも、最初は本当に探り探り、不安な気持ちでいっぱいの中、毎日苦悩しながら描き進めていきました。そうして、どうにか自分なりに仕上げたものを提出させて頂いたのですが、石浜監督が「すごくいいよ!」と言ってくださったので、それは精神的にすごく助かりました。

石浜 本当にダメだったら、もっとこうしてほしいとか言ったんだろうけど、本当に「うわぁ〜、いいわぁ〜」というものが上がってきましたから。人によっては、自分の好きな絵に偏って上がってくることもあるんですけど、依りさんの場合、こっちが言わなくても最初からキャラクターバランスを考えてやってくれていた。とにかく、キャラクターを描く上での押さえどころが、初めから確立していたんです。

依り 本当ですか? 今見ると、最初の頃は全然ダメだったなって、反省ばかりなのですが。でも、自分が原案として描かせていただいたキャラクターたちが、動画になっているのを見ると、やっぱり感動します! 石浜監督をはじめ、つたない私を助けて下さったスタッフの皆さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。

石浜 キャラクター原案もそうですが、依りさんが作品全体に与えた影響は、計り知れないものがあります。依りさんの描いたキャラクターから、各セクションが引っ張られたのがすごく大きい。アニメを作る上で、あまりキャラから背景であるとか小物であるとか、そういうものが発想されることないんですけど、今回に限っては、「このキャラクターが動くんだ」というところから、スタッフ全員にパンとイメージが広がった。依りさんの絵を中心に世界観が組み立てられていったという意味でも、プラス要素は計り知れないですね。

依り 私の絵が少しでも作品のプラスになっているなら光栄です。ありがたいことに私自身も、この作品にかかわらせていただいたことで、描写の幅が広がったと感じています。これまで趣味で描いてきたイラストは、正面からとらえたものが多くて、あまり角度をつけたことがなかったものですから、アニメになって動きがついたことで、自分の未熟な部分がすごくよく見えてきたんです。この作品から本当にいろいろなことを勉強させていただいています。

石浜 動きとか表情もそうだけど、途中からは多分、依りさんが本来描きたいと思っている絵じゃない、興味の外側にあるものもどんどん要求するようになっていきましたよね。後半に出てくる日野光風とか(笑)。そういうキャラって、依りさんは趣味では描かないだろうと。少なくとも描きたい感じではないはず(笑)。でも、それを描くとどうなるんだろう、って僕自身も興味がありました。

依り 実は、結構恥ずかしいんです。これまでの作風に全然なかった部分ですので…。でも、ご依頼いただいたからには、とにかく私なりの作品をお渡ししなければと、まずは身近にいる年配の方を観察して、似顔絵みたいなものを描くことから始めました。それを徐々にキャラクターっぽく変えていったんです。その中でも特に苦労したのが、離塵さんですね。髪の毛のないキャラクターを描いたのが初めてでしたから。スキンヘッドの方をじっと観察して、頭の形とか骨格の出具合を勉強して描きました(笑)。

石浜 HPではすでに12歳と14歳のキャラクターが発表されていますけど、今後放送が進むと、26歳になった早季たちも登場することになるんですよね。その原案はもういただいているのですが、もはやここに至ると依りさんは、いっぱしのキャラクターデザイナーというか、一皮むけたスーパーデザイナーのような感じ。最初と最後の原案では、まったく別人のような面白さがある。

依り 恥ずかしいので、あまり見比べてほしくないのですが…。

石浜 でも、全部ちゃんと依りさんの絵になっているんですよ。若さゆえの柔軟性ってことなんでしょうか。自分の原案が実際にどう使われるのかを、ちゃんと理解した上で描いてくださっている。視聴者の皆さんは、年齢を重ねた登場人物たちが、どう変わっていくのか、楽しみにしてほしいと思います。

依り スタッフの一員ではありますが、私自身もアニメ『新世界より』がこれからどんな素晴らしい作品になっていくか、すごく楽しみなんです! 中でも、早季と瞬に重大な転機が訪れる10話に注目しています。これからも、いちファンとして、この作品を楽しんでいきたいと思います!


依り(より)
美術科に在籍していた高校時代から、絵画やデザイン画を描き始め、卒業後はアパレル業界に就職。そのかたわら、趣味としてイラスト投稿サイトに発表していたオリジナル作品が、今回石浜監督の目に止まった。ペンネームの「依り」は、「本名に近い方が一生懸命やるだろう」と、本名の一部である「依」という文字に平仮名の「り」を添えて作ったそう。

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