5月18日放送

第3回スクープスペシャル
  

続発する医療過誤。最高裁がまとめた医療訴訟はこの10年間で767件に倍増したが、病院側が隠蔽するケースもあとをたたず「氷山の一角」に過ぎない。
患者には窺い知れない病院という「密室」のなかで、今何が起こっているのか?
「白い巨塔」で今日も繰り返される医療事故。その9割が「医療技術・知識の未熟性」が原因だという。
  
先進国のなかで、日本だけが「患者の知る権利」が保証されておらず、性懲りもなく医療ミスを繰り返しても何のペナルティもない。スクープスペシャル第3弾は、 鳥越、長野両キャスターが、医療の現場を駆け回り徹底検証。「リピーター天国」ともいわれるこの国の医療制度を問う。

<特集1>告発!虚飾のガン名医

「乳ガンでもないのに、乳ガンだとして乳房を全摘出された」
“乳ガンの名医”として有名な静岡県の公立病院元副院長が、患者から医療過誤と傷害で訴えられている。その一帯は「乳ガンが風土病」と言われるほど乳ガン発生率が高く、名医の信じられない手術の後遺症に苦しむ数多くの患者たちや、他の病院に転院したらガンではなかったという女性も存在する。そして、ある元病院関係者は「摘出手術後に病理診断で良性腫瘍と判明した」と証言、「外科医として言語道断」と断罪した。
第一特集では、多くの患者や医療関係者を多角的に取材し、名医の「犯罪的な乱療」疑惑を徹底追跡。ベルトコンベア式とも言われる問題診療やあまりにズサンな乳ガン診療の実態に迫る。

<特集2>検証!恐怖のリピーター医師

「妻が寝たきりになったのは、リピーターの行政処分を怠ってきた厚労省が原因である」。
今年1月、医療過誤をめぐり初めて国の責任を問う画期的な提訴が行われた。リピーターとは、性懲りもなく医療ミスを繰り返す医師のことで、問題の病院は、過去に3件も同様の医療事故を起こしていたからである。なぜ、リピーターは「野放し状態」なのか?

日本の医療制度では、医療事故を起こしても「刑事罰にならない、医師の資格も傷つかない、指導や研修もない、懐も痛まない」と言われる。第二特集では多くのリピーター医師やその被害者、医道審議会などの取材を通じて、「リピーター天国」とも言われる恐怖の実態を告発する。

■■■■ 告知〜今回の特集取材に関して ■■■■

●「虚飾の乳がん名医」の取材、放送に当たりましては、ルポライター米本和広氏の下記の文献を参考にさせていただきました。
・「訴訟5件を抱える病院がいい病院?」
  (いのちジャーナル98年11月号) 
・「あの市立病院にしてこの乱暴医療」
  (いのちジャーナル98年12月号) 
・「危ない医師たちの巣くう清水市立病院のデタラメ医療」
  (99年8月 別冊宝島「病院に殺される」 00年5月 文庫化) 
・「虚像の名医」
  (月刊現代03年1月号) 

● 「虚飾の乳ガン名医」のVTRで、K医師の乳がん診断・治療について、
疑問点ごとに構成しましたが、一部視聴者に竹下勇子さんは”がんである”という
誤解を生じさせたため、番組宛てに送られた竹下さんからの説明(裁判経緯や主張)を紹介いたします。

(1)がんと言われて手術を受けたものの、がんの説明を一切受けられなかった。そこで、証拠保全した結果、初診の検査結果(触診・エコー)にがんの所見がないことを初めて知った。標本の病理結果だけががんだった。しかも迅速診断でがん告知し、がんの確定診断である永久標本結果は手術日前日だったことも初めて知った。

(2)そこで、ほんとうにがんだったのかを知りたくて裁判を決意。しかし、損害賠償請求でしか裁判を起こせないと言われ、説明義務違反と後遺障害で提訴。

(3)がんの証拠である永久標本を提出させた。

(4)清水病院が裁判所に提出した永久標本からがんがみつかった。その後、初
診のマンモグラフィー検査にもがん所見がなく、カルテに記載もないことがわかったため、画像診断結果(がんなし)と病理診断結果(がんあり)の不一致から標本のDNA鑑定となった。

(5)DNA鑑定で標本が私(竹下)のものであると確認してから、病理鑑定に進む約束が、DNA鑑定に月日を要したため、結果的に「標本はがんである」という病理鑑定結果が先行してしまった。

(6)その後、出されたDNA鑑定の結果、病院提出のがんの標本と私(竹下)の血液とでは塩基配列の一部が不一致。標本が私(竹下)のものと断定できなかったため、故意障害で訴え直した。

(7)ところが、病院側は塩基配列の違いはがんによる変異を主張。

(8)しかし、本来DNA鑑定で私(竹下)のものと断定できない標本について、病理鑑定は意味をなさないため、病理鑑定結果を証拠からはずすよう主張。

(9)DNA鑑定結果を受け、標本(迅速・永久)の存在そのものが疑われた。

(10)がん告知の元となった初診翌日の生検当日作成したとされる迅速標本の診断が本当に行われたのか、病院側が迅速診断を依頼したと主張する浜松医科大学のY教授とK医師の足取り調査となった。

(11)迅速診断結果と共に、がんの証拠となっている永久標本結果については、入院カルテと筆跡が酷似していることを発見。

(12)私(竹下)が依頼した筆跡鑑定の結果、入院カルテと病理診断結果の筆跡が一致。カルテ改ざんが明らかになった。

(1)〜(12)は竹下さんによる説明文を記載しています)

●「虚飾の乳ガン名医」のVTRの中で、竹下勇子さんの裁判に関して、清水病院が提出した永久標本に対する病理診断結果の映像(並木医師がインタビューでマンモグラフィー検査に関する指摘をしている部分)を使用していますが、竹下さんは裁判で、提出された標本自体が他人のものであるとして、その病理診断結果を証拠からはずすように主張しています。

●「虚飾の乳ガン名医」のVTRの中で、標本が「他人のものであると断定できな
い」、また、「がんではないのに手術した直接的な証拠はない」との表現がありますが、竹下さんは裁判で、それぞれについて「(標本が)自分のものであると断できない」、「がんであると断定できる証拠はない」と主張しています。

●「虚飾の乳ガン名医」のVTRの中で、近藤誠医師の発言で、竹下勇子さんの「ガンの進行度」に関するものがありましたが、この発言は、“仮にK医師が主張しているような「ガン」だったとしても”、という前提に立った上でのものです。

●「虚飾の乳ガン名医」のVTRの中で、竹下さんの永久標本の鑑定について「がんかどうかの再鑑定を申請した」と表現していますが、再鑑定ではなく、「鑑定」でした。お詫びして訂正いたします。

●「虚飾の乳がん名医」のVTRで紹介しております、病理カルテと入院カルテの筆跡鑑定は裁判のために竹下勇子さんが依頼したものです。 

●「虚飾の乳ガン名医」のVTRで、4人の元患者さんの初診日から手術日までの
表を紹介する際、「4人全員が乳房全摘出手術を受けた」と表現しておりますが全摘出ではない患者さんもいらっしゃいました。お詫びして訂正いたします。

●「虚飾の乳がん名医」のVTRの中で、「医者がすすめる専門病院」という本に医療過誤疑惑があるK医師の情報が掲載されていたと紹介しましたが、その本は平成4年度版のものです。その後、この出版社では、K医師が訴訟を抱えていることなども踏まえ、平成11年度版では情報を削除し、現在では掲載されていません。



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