8月24日放送のディレクターズアイ 

8月24日放送 ディレクター/北舘史生
【多重債務からの再生】

番組放送後一週間が経った今でも、山下さん夫婦(仮名)の会社は存続している。

闇金だけで29社1600万。銀行、商工ローン、消費者金融・・・会社の倒産を避けるために膨れ上がった債務の総額は8000万円を超える。
鳴り止まない闇金からの電話・・雪だるま式に増えつづける債務・・そして毎日訪れる会社倒産の危機。山下さん夫婦は死を考えるほどに追い詰められていた。

しかし、闇金からの暴力的な取立ては止んだ。倒産の危機を乗り越え、会社は存続。夫婦二人三脚で仕事を続けることができている。


いま「ひまわり道場」に駆け込んでくる相談者の大多数は、山下さんのような中小・零細業者たちだ。未曾有の不況は、地域経済を破綻させた。
魚屋さんやクリーニング屋さん、八百屋さん、バイク屋さん・・・
そんな何十年にも渡りこつこつと仕事を続けてきたごく普通の商売を営む人々が、いま次々と闇金の猛威にさらされている。

「こんな異常な状況を放っておくわけにはいかない。警察・行政が動かない今、自分たちで戦うしかない。」

そんな思いを抱いた自営業者たちを中心に、「ひまわり道場」は立ち上がった。
参加する人々の思いはひとつ、多重債務からの再生・・
自分たちで法律を勉強し、金融業者と直接交渉する。闇金に対しても一歩も引かない。違法金利に屈せず、法律に則った正当な債務額を主張するのだ。当然闇金は簡単に交渉には応じず、あの手この手で抵抗してくる。一分一秒を争うような倒産間際での戦い。長年の知識と経験を積んだ道場のメンバーたちと、暴力と違法金利を武器に暗躍する闇金との全面対決は熾烈を極めた。

多重債務からの再生・・・その道は決して平坦ではない。
一週間に渡る道場と闇金の全面対決の結果、山下さん(仮名)の闇金への債務はもとの4分の1以下、法律に則った債務額へと大幅に圧縮することができた。
しかしそれで事態がすべて解決したわけではない。むしろそこから山下さんの本当の債務との戦いが始まった。

道場の基本方針は「借りたものは返す」というものだ。相手がたとえ闇金であったとしても、法律に従い支払うべき借金は債務者自身が返していく。山下さんも4分の1になったとはいえ和解した闇金への返済金はまだ残っている。さらに銀行、商工ローン、消費者金融などへの債務6000万以上、取引先への買掛金4000万、他にも税金、保険料から水道代まで、支払うべき金額は途方もない。それらの債務も滞れば直ちに会社は倒産してしまう。

そもそも闇金に借りる羽目になったのは、贅沢をしたからでも放漫経営だったからでもない。銀行や商工ローンの債務には保証人がついており、倒産すれば即、保証人の家や土地までもがすべて取られてしまうためだ。
保証人には迷惑をかけれない・・絶対に会社は潰せない・・
その思いが山下さんの債務を膨れ上がらせたのだ。

ある意味では倒産したほうが楽だったかもしれない。
しかし山下さんはあえて「いばらの道」を選んだ。
闇金が解決した今でも山下さんは「ひまわり道場」に通いつづけている。これからは同じ相談者たちの経験談を聞き、ベテランの道場メンバーのアドバイスを受けながら、巨大な債務を仕事を続けながら返済していくための方法を探っていくのだ。

「ひまわり道場」は、決して闇金被害者を助けてあげるという場所ではない。
自分で作った借金は自分自身で返していく。債務者自身が、自分の債務から逃げず向き合い立ち向かっていく。

「ひまわり道場」は、債務者自身が再生のために道を探っていくための場である。

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