ディレクターズアイ 

 ディレクター/玉川徹
【道の駅はこのままでいいのか?】

今回の放送に関して、さまざまなご意見をメールでいただきました。その中に数件次のようなご意見がありました。「道の駅は役に立っている。まったく無駄なわけではない」というものです。私もこのご意見にはごもっとだと思います。では、なぜ番組で取り上げたのか。それは道の駅が生み出すプラスとマイナスをトータルで考えたとき、マイナスのほうが大きいと判断したからです。私も、今回の取材を通して道の駅のトイレを何度も使わせていただきましたし、お土産も買いました。トラックの関係者が道の駅はありがたいというのも良く分かります。しかし、番組でも取り上げましたがマイナスもずいぶんあるのです。

例えば民業圧迫。今回取材した国道41号線沿線の七宗町から高山市まで7つの道の駅があるのですが、私たちが確認しただけで、道の駅が出来だして以来4つのドライブインが廃業しています。もちろん昨今の不況や高速道路の出現といったことが、経営に悪影響を与えたのは間違いありません。しかし、道の駅が苦しいところをさらに追い討ちをかけたことも事実です。トイレだってビジネスチャンスなんだそうです。こんな経験はないでしょうか、トイレに行きたくなったから…という理由でコンビニやガソリンスタンド、ドライブインに入る。トイレを理由に入れば、「なんか悪いから」とか「ついでに」といって何か買ったり食べたりする。これは大きなビジネスチャンスなのだそうです。ただで、気兼ねなしに使えるトイレがあれば、そちらを使うことも多くなるでしょう。しかし、その陰で、職を失っている人々が確実にいます。

小泉首相が「民に出来ることは民に任せる」といっていることは道の駅にも当てはまるのではないでしょうか。この他にも、第三セクターの経営破たんの問題や、(破綻すれば、さらに税金が使われる)補助金の問題もあります。

すでに1000億円単位の税金が補助金として使われました。道の駅以外にも補助金はさまざまな形で国中に下りていきます。道の駅はその一例ですが、象徴と見ることもできます。農村保護は重要です。しかし、農家の経営を強くする方法として道の駅を作ることが役立っているとは私には思えません。農産物の販売コーナーはわざわざ道の駅という新しい箱ものを作らなくてもドライブインやコンビニに出来るはずです。それを助けるために補助金を使うとすれば建物を作るよりよっぽど安く済むはずです。経済が右肩上がりで成長しているときは大盤振る舞いも許せるかもしれません。しかし、今のままのやり方を続ければ確実に国家財政は破綻します。消費税が15%になったり、国債が暴落して年率500%のハイパーインフレが起きても、それでも私たちは道の駅に今のまま補助金を出すのを許すでしょうか。

何度もいいますが、道の駅がすべて無駄だというわけではありません。ただし、今の日本でこの制度を今までどおり続けることには疑問を感じざるを得ません。

最後に、道の駅の良い例も一つ。岐阜県の清見村というところに「ななもり清見」という道の駅があります。ここの建物は村が建設資金を出して建設したのですが、運営は村がある団体に委託しています。ななもり清見の周辺の住民178世帯が出資して会社を作り道の駅を切り盛りしているのだそうです。地域の人たちは交代で働き、ちゃんと利益をあげているそうです。それどころか出資金に応じて配当も出来ているそうです。幹線国道も鉄道もないコンビにもドライブインもほとんどない山間地域なら民業圧迫にもならないでしょうし、地域住民に就業機会を提供しても、他の職を奪うこともない。出資者が就業者なので、いろいろと工夫しながら運営をするので、利益も上がるし配当も出るというわけです。

皆さんも、道の駅を見に行ってはいかがでしょうか。それを作るのに平均7億円のお金がかかっていることを思い出したとき、さらにその7億円のうち地方交付税交付金を入れれば、そのほとんどが国費でまかなわれていることを思い出したときにどう感じられるか。寛大な気持ちでいられないのは私だけではないと思うのですが。

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