キャスターズオピニオン

6月28日 寺崎貴司  
【ネットオークションの闇(6月22日放送)】

闇は深かった。

今回の取材では、つかみどころのないものをつかもうとして、やはりスルリと逃げられてしまうことの連続だった。

【ネット上で盗品が売買されている】という実態が、現実として目の前に見えてこないというのはある程度予想はできたが、これほどまでに検証し づらい取材になるとは思いもしなかった。

やはり、ハードルは<匿名性>… 誰が関わっているのか?
本当の名前が明らかにならないこと
<特定されない場所>… どこで関わっているのか?
世界中、どんなところにいても関わることができること、の二点だった。


取材中、ある警察関係者はこう語った。

「いくらネット・オークションの画面を指さして『盗品が売られている!!』と訴えられても、今見ている盗品の画像はあくまでもネット上の画像 であって、実際に現物がどこにあるのかはわからない。もしかしたら、もう盗品の現物は無いかもしれない。でも、やはり画像はすぐ目の前にある パソコン画面の中に存在している。すぐにも取り返すことができそうだ。でも、それはやっぱり錯覚にすぎないんだ」 。

これは「だから、今すぐに対応することはできない」という警察の言い訳である。が、ここにはネット犯罪を追及する難しさ・警察の苦悩も表現さ れている。

今回、【自分のパソコンが盗まれ、それがオークションに出品されている!】という被害者の届け出に対し、警察はまず「コンピューター、ネット はよく分からない」と応じ、とにかく「それを自分で落札しなさい。製造番号が一致するかどうかを確認して、本当に盗まれたものであるかどうか 確かめないことには、盗品が実際に売りに出されていたことを証明できないので捜査ができない」と言ったというのである。

結局、オークション事業者からの情報や被害者本人が調べた内容をもとに、警察が疑わしいアパートに踏み込んだのは、出品から何と2ヶ月も過ぎ ていた。

なぜ、こんなに時間がかかったのだろうか?

所轄の警察署は

「張り込み・尾行などを含む、事前の通常の捜査を行ってから、家宅捜索に入った」と述べているが、こういう手続きが、もし通常のやり方だとしたらほとんどの犯人を捕まえることはできないだろう。

この通常のやり方は、これまでの犯罪に対応できても、ネット犯罪には通用しない。

今回の事件における出品者は、盗品のパソコン以外にも、盗品ではないかと思われる疑わしい出品を数多くしていた。もちろん、それが本当に盗品 であるかどうか私たちには確かめようがないが…。

一つ一つを見れば数万円から数十万円単位の取引であるから、たいした窃盗事件ではないかもしれないが、これが全て盗品だとすると…。数千万円 にのぼる大規模な窃盗事件、それも組織的なもので、更に盗品がネット上でオープンに全世界に向けて販売されているとなると大変なことになる。 でも、その可能性は否定できないのでは…。

インターネット上で販売されてしまえば、盗品かどうかなんて考えずに欲しいと思った人はそれを落札し買ってしまう。ネットは世界中どこにいて も見られる。その結果、どんなところにいても品物を買うことが出来るから、結果盗品が散らばってしまうことになる。もし、物を盗まれた被害者 が地元の警察署に盗難届を出したとしても、その地域からは遠く離れた場所に盗品自体が行ってしまうわけである。

今回は、【ネット上の出品物が盗品である】と確認された数少ないケースであった。そして、どこの誰が出品していたということがほぼ限定できた 例でもあった。捜査する立場からすれば、せっかくのチャンスだったのにそれが生かされず、

「ガサ入れしたけど、もぬけの殻でした。一件落着。おしまい」となりそうで、残念である。

「ザ・スクープ」を見ていただければわかるように、捜査権のない私たちでも出品者の周辺についてこれだけ調べられたのだから、警察も捜査機関 としてもっと人員と力を注いで欲しかった。

他に重要な犯罪が数多くあり、忙しくてそんな小さな窃盗事件にかまっていられないということは言い訳にして欲しくない。

今もまだ犯罪が繰り返される深い闇が存在しているのである。