[ part1 ] オリンピックとオリンピックの狭間のシーズン。若手の伸びに注目!
――今年もトップスケーターたちが世界一を目指して戦うグランプリシリーズが開幕。放送ではゲスト解説として活躍していただく荒川静香さんに、今シリーズの見どころを教えていただければと思います。
荒川 まず今年はオリンピックとオリンピックの間のシーズンということで、去年からトップ勢の顔ぶれが大きく変わることはなさそうですね。けれどそのなかで、初めてジュニアから上がってくる選手たちやシニア2年目の選手たちが、どんな戦いを見せるのか……これがひとつの見どころです。男子ならば日本の小塚崇彦選手や柴田嶺選手、女子でしたらアメリカのキャロライン・ジャン選手や日本の武田奈也選手。まだまだトップ争いに食い込むのは難しいかもしれませんが、それでもどこまで彼らが成長するか、楽しみなシーズンになると思います。
――2シーズン後のバンクーバー五輪に向け、期待のできる世代ですね。
荒川 次のオリンピックに向けてちょうどいい年齢の選手たち。オリンピックの時期に自分のスケートを完成させたい選手たちです。1年目の選手たちは自分の名前を売るチャンスのシーズン、2年目の選手たちは去年の戦いを踏まえ、どう苦手を克服してくるか、とても重要なシーズンとなると思います。オリンピックの年だけがんばって技術点(要素点)は上げられたとしても、積み重ねが必要なファイブコンポーネンツ(構成点)はなかなか一朝一夕には上がりません。今年あたりから一年一年、いい演技を見せていくことで、少しずつ評価を上げていきたいところです。いったいどの若手がミスのない演技をして、ジャッジやお客様の印象を上げていくかも見どころになると思います。
――対するベテラン勢も、今年は世界のメダリスト、各国チャンピオンなど、強豪が全員参加のグランプリシリーズとなりますね。
荒川 確かにかつては、アメリカ、ロシアのトップ選手たちはグランプリシリーズになかなか出てこない、そんな印象もありましたが、今年は各国のトップスケーターも出場予定。これはグランプリシリーズの成績が反映される世界ランキングの重要性が増したためですが、見る側にとってはうれしい傾向です。
――ベテランと若手では、戦い方に違いはありますか?
荒川 かなり違いますね! すでに評価の定まっているベテラン勢は、ここで急いで安定した演技を見せ、ファイブコンポーネンツを上げる必要はないと思います。彼らの場合は、今年のプログラムがどんな評価をジャッジから受けるか、新しい取り組みがどこまで認められるか、チャレンジの場とする選手も多いのではないでしょうか。多少スロースターター気味になるベテランもいるでしょう。それに対して若手は、ここで評価を上げなければ!と最初から必死ですし、ジュニアから上がってきたばかりの選手たちは仕上がりも早いんです。ジュニアグランプリシリーズは毎年8月末から始まっていますから、シニアグランプリのころにはもう身体も出来上がっている、そんなシーズンの過ごし方を、若手はこれまでしてきました。だからこの時期は、ベテラン勢に若手が食らいついていくチャンスの時期とも言えるのではないでしょうか。それもグランプリシリーズのおもしろさです。