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メディアフォーラム『震災報道を考える』 開催報告

投稿日:2014年02月25日 17:43

組ロゴ

2月23日(日)浜離宮朝日ホール・小ホールにて、テレビ朝日×朝日新聞 第3回メディアフォーラム『震災報道を考える』を開催しました。

全体

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■メディアフォーラムについて■ テレビ朝日と朝日新聞では、2010年から視聴者・読者の皆様向けに「合同メディア講座」を開催しています。「新聞はどう作られるのだろう?」「放送の仕組みはどうなっているのだろう?」。新聞社とテレビ局の両方の見学などを通して、それぞれの特性や違いを体験しメディアへの理解を深めてもらう講座です。2012年3月4日には、池上彰さんを特別コメンテーターに迎えて、両社合同で第1回メディアフォーラム「震災報道を考える」を開催し、震災報道を振り返りました。また、第2回は、2013年2月24日開催、宮城・気仙沼と福島・南相馬と東京の会場を中継で結び、被災地の声を聴くとともに、メディアの役割を視聴者・読者の皆様と考えました。

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3回目となる今回は、東日本大震災が引き起こした東京電力・福島第一原子力発電所の事故と、その放射能漏れ、除染など、その後の報道に焦点をあて、新聞・テレビそれぞれの立場から発表。会場の皆様と意見交換をし、メディアがこの3年間、その役割をきちんとはたしてきたのか、また、今メディアに何が求められているのか、じっくり考えた3時間でした。

下平池上2S
コーディネーターは池上彰さん。
司会は下平さやかアナウンサーが務めました。

「震災から、〝もう″3年なのか、〝まだ″3年なのか。今日は、取材する側には見えていない様々な課題なども皆さんと一緒に考え、学んでいければなと思っています。」

 

 

◆第1部 「取材現場からの報告」

テレビ朝日報道局社会部・隅田繁デスク朝日新聞福島総局・大月規義記者による取材報告です。

【福島第一原発事故の見えない真実・メルトダウンに迫る】 

隅田2

隅田デスクは、東日本大震災が起きた2011年当時、テレビ朝日『報道ステーション』のディレクターとして、原発事故を取材してきました。

まずは、番組内で実際に放送したVTRを2本紹介。
1つは事故当時、福島第一原発1号機の内部にいた作業員へのインタビュー。40年以上、原発の電気設備を担当してきた作業員が、当時の状況、自身の気持ちなどを淡々と話してくれている映像です。

隅田

隅田デスクは、「作業員に話を聞きたいと思っても、インタビューに答えてくれる人はなかなか見つからなかった。会社に知られたら仕事を失ってしまうかもしれない・・そんなリスクもあるのに、彼は色々な裏事情を話してくれた。昨年、彼は肺がんで亡くなったのですが、今思えば、この時すでに病気されていて、色々な覚悟をもって私たちに話し、未来を託してくれたのかなと感じている。こういった証言を広く伝え、記録として残していくというのも、メディアの役割だと思う」と話しました。

2つめは、米国・スリーマイル原発のメルトダウンした核燃料を保管しているという茨城県東海村にある研究所を取材したもの。

「メルトダウンした核燃料といっても、見た目は「ただの石ですよ」と言われていたが、実物は全然違った。いびつでグロテスク、石なんだけれども、金属もまじって溶けているので不気味に光っていて・・。胸騒ぎがした。この不気味なものが実際に今、第一原発に何十トンも散らばって存在する。第一原発の事故は、水素爆発の印象が強いが、あくまで『メルトダウンの事故』。テレビではメルトダウンをコンピューターグラフィックで分かりやすく再現して伝えているが、この事故の重大さ・・やはり実物を見た時のあの不気味な感覚というのは伝えられていない。また、それを取り出さなければいけないというのがいかに困難な作業か・・。メディアはまだメルトダウンに全く迫れていないが、今後も内部の様子など伝え続けていきたい。」

と、福島原発を取材して知った状況や、感じたこと、3年経って今感じていることを報告しました。

 

【ふくしまの3年~原発被災地~】

大月2

続いて、2011年5月から福島総局で取材活動を続けている朝日新聞大月記者の報告。

「福島にはまだ14万人の避難者がいて、事故はまだまだ収束はしていません。そこで思うことが“ふるさとに戻れるのか戻れないのか”ということ。」と、切り出すと、一枚の写真を紹介。

大月「これは1年前、まだ避難指示区域にある方の自宅。家の中は鼠のフンとかカビとか・・放射能ではなくて、生物的に厳しい状況になっていた。とても靴を脱いで入れる状況ではなく、屈辱的な思いで自宅に戻っている方がたくさんいる。今でも状況は対して変わっていないと思う。また、役所では、住民にふるさとに戻るか戻らないかというアンケートをとっているが、「戻らない」と答える人がだんだん増えている。新聞では戻らない理由を「放射能が怖いから」と一言で示してしまうことがあるが、実はその裏には言い尽くせない人それぞれの様々な理由と事情がある。放射能や賠償金の問題にも言えることだが、こう書いたらどう受け取られるのだろうか・・といった色々な想いを持って、新聞記事を日々作っています。」

 

林

★今回は、福島県内から福島大学生など約20名を招待。会場の意見をテレビ朝日・林美沙希アナウンサーが紹介しました。

地元に居ると本当にメディアの方が一生懸命取材しているが、やはり伝わらない部分もある。大月さんの話にもあったが、メディアでは複雑な部分を落として分かりやすさを優先して伝えてしまうところもあると思うので、福島県民としてはもどかしい思いもあります。(福島大学生)

隅田さんがメルトダウンの実物を見てゾクッとしたと言っていたが、ほんとに実際に見て感じることは映像では伝わらないと思う。でも、他人事と思わず、福島の人の立場にたってこれからどう対策していくのかとかを考えてほしいなと思いました。(福島市在中の女性)

深刻なのは、分断というか、福島県民の中でも色んな意見、考えがあって、お互い本音を言えない様な雰囲気になってきいることです。3年経って、伝える難しさを毎日、感じています。(福島放送報道制作局長・一重誠さん)

★参加者のみなさんからもコメントシートを回収しました。

学生さんの「他人事とは考えないで」という声には涙がでました。今もずっと私たちの思う当たり前の生活ができていない人たちがたくさんいるんだと知りました。

原発事故に関する報道は、日を追って少なくなってきている。福島原発の現状などについて、分かりやすく、詳しく、きちんと報道してほしい。

昨年5ヶ月ほど女川町を取材する機会があり、たくさんの人と出会い、話を聞けば聞くほど戸惑ってしまう自分がいました。2人の報告を聞いて取材者側の戸惑いをもっと伝えてもいいのではないかと思いました。

その数、118枚。被災地から避難してきている方、ボランティアを続ける学生などからのコメントもありました。これらのコメントを紹介しながら、第2部を進めました。

 

◆第2部 「パネル・ディスカッション」

2部

第2部では、開沼博さん(社会学者)、藍原寛子さん(ジャーナリスト)、渥美好司さん(朝日新聞福島総局長)、松井康真さん(テレビ朝日報道局社会部)のパネリスト4人が加わって、活発な話し合いが行われました。

藍原■藍原寛子さん

「池上さんから「もう3年かまだ3年か・・」とありましたが、私は『もう3年。でも、まだ事故はつづいている』と感じています。
とくに仮設住宅では災害関連死などの被害がおきている。第二の震災というのが、折り重なるように、被災者の現場に起きている。
復興という言葉が多く使われているが、闇雲に何かに向かってさせられているような復興であってはならない。3年目にして新たに確認しなくてはならないことではないかと思います。」

 

開沼■開沼博さん

「やはり時間の経過とともに、福島、あるいは震災の問題というのがより単純化されてきてしまっていて「忘却が進んでいる」というのは感じています。また、さきほど避難者の人数についての話があり、すごく多いなと感じている方もいると思いますが、福島県民全体で考えると約2.5%の人数。メディアの報じ方によって、イメージと現実にギャップが生じている。決して実は少ないんだと言っているのではありません。「理解の復興」そして生活の問題をちゃんと解いていく「生活の復興」が必要だと思っています。」

 

【「福島」を伝えること】

松井2松井松井記者は、自らが制作した原子炉を144分の1のサイズに縮小した模型を使って、現状を説明。

「事故当時、こういった模型や図面などの情報が全くなく、原子炉の中で起きている問題を伝えることがすごく難しかったんです。
ポンチ絵のようなものでは絶対に分からない、この深刻さを伝えたい・・という思いで、2週間ほどかけて制作しました。」

小型カメラで模型の内部を見せながら、今原子炉で起きている「メルトダウン」「使用済み燃料プール」「汚染水」の問題を分かりやすく解説しました。

続いて、朝日新聞・渥美局長が取材した先で撮影した写真を紹介しながら、「風化」「風評被害」の二つの問題について話しました。

渥美

「普通だったら実りのある頃の農家の畑も、今や藪のように木が生い茂っている。身長を超えるような状態になっていて、とても人が住めるところじゃない。ここをきれいにするにはボランティアが必要だが、人が足りていないんですね。ボランティアが減ってきてしまっているのも、風化の象徴。
風化といっても、正体がないので掴めないのですが・・我々が風化させないように、読者の興味をひくような記事を発信しなければいけない。3年目の今、心に刺さるような記事を我々はどう書いていくか・・大きな課題だと思っています。」

 

最後

このあと会場の視聴者・読者の皆さんの質問や感想を紹介しながら、メディアは何をすべきなのか・・真剣なディスカッションが、約1時間半にわたって続けられました。

この「メディアフォーラム」の模様は、3月11日(火)朝日新聞・朝刊別刷りで紹介。また、番組「はい!テレビ朝日です」で3月2日、16日の2回にわたって放送いたします。(*番組は関東ローカル 放送翌日18時から公式HPで動画配信します。)

 

 

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