アメリカ取材備忘録2
2017年02月07日

前回のブログには、
アメリカ大統領選就任式の前日からの模様を中心に書いてみましたが、
就任式は1月20日。
なぜ14日からアメリカに入ったのかといいますと、
19日木曜日に放送した特集の取材も同時に行っていたからなんです。

トランプ大統領の元選挙参謀の取材をしにニューヨークから…

選挙参謀

トランプタワー
【トランプタワーにも行きました】

トランプ氏の支持者に話を聞きに、サウスカロライナに…

サウスカロライナ 

エイミーさん
【エイミーさん。気さくなおばちゃんでした】

そしてワシントンDCでウォール・ストリート・ジャーナルのワシントン支局で
トランプ氏にどう対応しようとしているのか、インタビューをしました。

wsj

それもすべて、就任式の前の木曜日に放送したこちらの特集のため。
http://www.tv-asahi.co.jp/dap/bangumi/hst/feature/detail.php?news_id=49248&str_num=0

トランプ氏がどうツイッターを使って人々の心をとらえていったのか。
衝動的に、直情的につぶやきを繰り出しているのか、
それともそのすべてが計算ずくなのか―。

就任前に改めて徹底調査をしてみよう!というところから始まった特集です。

そのため、特集チームはトランプ氏のこれまでのつぶやき、
3万4000件を、すべて読みました。
そしてそこから読み解けることを、独自に分析。
すると、驚くほど緻密に、戦略的にツイートが行われていたことが分かったんです。
あまりにカジュアルな言葉遣いも、批判も罵倒も、リツイートも。
すべて「計算」されていたんですね。

ご覧いただけなかった方は、
内容はHPで詳細をぜひ、ご覧ください…!

ツイッター

私もチームに加わって、一緒に3万4000件を読みました。
選挙戦いよいよ本番に入ってからは、罵倒するような攻撃的なツイートばかりで
正直、気が滅入りそうになってしまい嫌気がさしましたが…、
トランプ氏がツイッターでの発信を本格的に始めたころからのツイートを通して読んでいると、
なんだか、トランプ氏の支持者の気持ちも分かるような気がしてくるんです。

乱暴で子どもみたいな語彙力と言葉づかいで、感情をむき出しにして…。
でも、知的で洗練された知識人や政治家の言葉の中で、
それはむしろ新鮮に響きます。
不動産王・トランプ氏が「近所のおじさん」に見えてくる。

ハッとさせられました。

大統領候補にふさわしくない。下品で幼稚な言葉遣いが恥ずかしい。
トランプ氏のツイッターに関しては、選挙戦中、
そういった批判が多く聞こえていたように思います。
トランプ氏を支持した人たちは、そうした言葉遣いは本当は嫌だけど、
それでもなおトランプ氏を支持しているんだ。
おおよそ、そんな論調だったようにも記憶しています。
でも、そうしたある種「大人げない」言葉遣いこそ、
トランプ氏の支持者たちにとってはむしろ「プラス」に作用していたのだなぁと、
ツイートを読んでいると気づかされます。
「政治家はいつだって口ばっかり。
きれいなことをきれいな言葉で言うけど、やってることは全然違ったりするでしょ?
でもトランプ氏のツイッターでの発信は、正直な感じがするんだよね」
そんな風に語ってくれたトランプ氏支持者もいました。

それから、時に一般の人のコメントにも返事をしているんです。
そして「雇用が失われている!嘆かわしい!」
「もっといい方法があるはずだ!そう思わないか?」
「一緒に偉大なアメリカを作ろうぜ!」なんて、
ツイッターを通して「直接」、大衆に語りかけていたり。

取材したトランプ氏支持者のエイミーさんは、
ケアが必要な人たちのソーシャルヘルパーとして働くシングルマザー。
こんな風に語ってくれました。
「政治に、社会に、見捨てられているという感覚がずっとあった。
でも、トランプさんは雲の上の人なのに、
頻繁にツイッターで私たちに語りかけてくれる。
私たちの味方だ、大丈夫だって励ましてくれる。
こんな安心感を覚えたのって、本当に久しぶり」

エイミーさんが住んでいるサウスカロライナ州の郊外は、
もともと工場地帯。でも、グローバリズムの流れをうけて
国外にアウトソーシングされるようになってから
すっかり寂しくなっちゃったんだよ、と、
空港から2時間半、車を走らせる中で運転手さんが教えてくれました。

そんな場所で、エイミーさんの話を聞くと、
どうしてトランプ氏が心をとらえていったのか、痛いほど伝わってきます。

でも、そのツイートが、あくまでも「戦略的」に行われていたとすると…。
彼らの心をつかんで、「サイレント・マジョリティ」を仲間にすることで、
「選挙に勝つ」ことが目的だったのか。
大統領としての展望を、持ち合わせているのか。

そういえば。ニューヨークでインタビューをした元選挙参謀に、
帰りのエレベーターの中で
「彼は本当に、大統領になりたかったんでしょうか?」と聞いてみると、
ぽろりと、こんなことを言っていました。
「彼はとにかく目立ちたい、勝ちたいという思いが強いひと。
だから、大統領になりたかった、そして、
大統領選挙という大勝負に『勝ちたかったんだ』と思う。
大統領になってからことは、野となれ山となれ、なんじゃないかな…」

なにはともあれ。
もうひとつ。
この出張を通して、非常に気になったこと。

エイミーさん、トランプ氏を支持するきっかけとなったのは、
「大手メディアへの失望」だとおっしゃっていました。
自分たちの声が代弁されない、と感じていたそう。

この「大手メディアへの失望」。
アメリカ取材中、会う人会う人に話を聞いていましたが、
トランプ氏を支持するしないに関わらず
ほとんどに人が口にしていたことでした。

エスタブリッシュメント、既得権層の立場で発信している、
権力層に操作されているように感じると。
「上から目線」「偉そうに聞こえる」という表現をしていた人もいました。
それは大統領選以前から抱いていた感覚で、
その思いはこの大統領選で一層強くなった、と。

この大手メディア不信の根幹にあるもの、
人々がどうして不信感を覚えるに至ったのか、
どういった経緯、具体的にどういった報道に触れて
エスタブリッシュメントと感じていたのかは、
10日間で限られた街の声を聞くだけでは、
さすがに理解するには至りませんでした。

ただ。
メディアが期待されていること…というのを
私が語るのはとてもおこがましいのですが、
ニュースを伝える、ということだけでなく、
権力を監視する、埋れている事実を浮き彫りにする、
そして時に、声をなかなかあげることができない人の立場に立ち、
寄り添う、ということでもあるんじゃないかな、と
個人的には思っています。

取材した中では、それが機能していないと感じている人が多かったんです。
そしてそれを代わりに機能させたのがまさにトランプ氏のツイッター。
トランプ氏は自身のツイッターを、自分の新聞のようなものだと語ったことがありますが、
戦略的な140字を通して、ものの見事に、
その不満と不安に応えてみせたように感じます。

そして、思った以上に深刻だと感じた、大手メディアへの不信感。
もちろんアメリカと日本では、メディアの在り方は同一ではありませんが、
他人事といえるんだろうか。
同じようにメディアと人々との関係に、変化は生まれていないだろうか…。
そんなことを、考えさせられました。

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