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天才モーツァルトの音楽会

投稿日:2016年04月17日 09:30

モーツァルトほど「天才」という言葉がふさわしい作曲家はいないのではないでしょうか。一見すると、とてもシンプルな音楽なのに、ほかの作曲家にはない独特の魅力が宿っています。革新的な音楽語法を発明したとか、新しいジャンルを開拓したとか、そういった新規性でモーツァルトのすごさを伝えようとしても、なかなかうまくいきません。特別なことをやっているようには見えないのに、出来上がったものは天衣無縫の音楽になっている。これぞ天才の証でしょう。
 今回はモーツァルトの作品のなかでも、短調で書かれている名曲に焦点を当てて、その天才性がどんなところにあるのか、指揮者の沼尻竜典さんにピアノ・ソナタ第8番イ短調をピアノで弾きながら、解説していただきました。「なるほど!」と思うようなポイントがいくつもありましたよね。
 モーツァルトについて、龍さんが「喜びと悲しみの境目がない」、反田恭平さんが「陽と陰を併せ持った天才」とおっしゃっていたのも印象的でした。モーツァルトはしばしば短調と長調の境目を自在に行き来します。光のなかに影があり、影のなかに光がある。そんな微妙な陰影が、情感の豊かさを生み出しているのでしょう。
 ピアノ協奏曲第20番ニ短調では、反田恭平さんが独奏を務めてくれました。この時代に書かれたピアノ協奏曲には「カデンツァ」という、独奏者がソロで自由な即興演奏を披露する聴かせどころが用意されています。ここは演奏者にお任せする部分ですので、モーツァルト本人はこの曲のカデンツァを書き残していません。幸いなことにベートーヴェンがこの曲のためのカデンツァを残していますので、多くのピアニストはベートーヴェン作のカデンツァを使用します。
 しかし、この日、反田さんが演奏したのは聴き慣れないカデンツァでした。第2楽章の主題が引用されるという一風変わったカデンツァは、イタリアの往年の大ピアニスト、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリが古い録音で弾いていた演奏に触発されたもの。この曲を聴き慣れた人にも、新鮮な感動があったのではないでしょうか。

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