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癒しの英国音楽会

投稿日:2016年05月15日 09:30

今週は20世紀前半を代表するイギリスの作曲家、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズの音楽をたっぷりとお聴きいただきました。ヴォーン・ウィリアムズといえば、「グリーンスリーヴス」による幻想曲がなんといっても有名です。しかし、彼の最重要作品といえば、やはり交響曲でしょう。偶然ですが、ベートーヴェンと同じく、ヴォーン・ウィリアムズも9曲の交響曲を残しています。
 ヴォーン・ウィリアムズは「もっともイギリス的な作曲家」とも呼ばれます。イギリスの民謡を採集し、イギリスの伝統的な教会音楽に関心を深め、そしてイギリス人に愛される作品を書きました。交響曲第3番「田園交響曲」に、イギリス的な田園情緒を感じた方も多いのではないでしょうか。
 母国イギリスではヴォーン・ウィリアムズの交響曲は人気曲です。イギリスの多くのレコード会社とイギリスのオーケストラがこぞって交響曲を録音しています。ところが、イギリス国外に出ると、これらの作品が演奏されたり録音されたりする機会はぐっと減ってしまいます。
 なぜそうなるのか、一言で答えるのは難しいのですが、理由のひとつとしてヴォーン・ウィリアムズが20世紀の主だった潮流とは異なる、穏健なスタイルの作曲家とみなされていたから、ということがあげられるかもしれません。時代の最先端を走るような音楽ではなかったため、国外ではローカルな存在だと思われていたのでしょう。
 しかし、時が経てば、作品が時流に乗っていたかどうかはあまり関係がなくなってきます。音楽そのものに普遍的な美しさや人の心を動かす力があるかどうかが問われるようになるはず。交響曲第3番「田園交響曲」は、一見安らかな音楽のようでいて、その背景には平和への痛切な祈りが込められています。この作品のメッセージは決して古びることがありません。むしろこれからの時代にこそ、広く聴かれるべき作品なのではないでしょうか。

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