兵庫県淡路市が舞台。今年11月、紙すき体験ができる『和紙工房 松鹿(しょうろく)』をオープンした奥田好治さん(65歳)と妻の恵美さん(61歳)が主人公です。
淡路市で生まれ育った好治さんは28歳の時に恵美さんと結婚。日頃から何か打ち込めるものを探していた好治さん。恵美さんが和紙で小物を作っているのを見て「和紙を自分で作ってみたい!」と紙すきを始めました。新たな生きがいを見つけた好治さんでしたが、56歳の時、上顎ガンが見つかります。治療によって寛解した時「定年後は和紙職人として生きたい」という思いが芽生え、恵美さんも快諾しました。2010年に定年退職すると、さらに紙すきの技術を磨き、今年11月には淡路市長澤地区の古民家を借りて『和紙工房 松鹿(しょうろく)』と『ギャラリーながさわ』をオープンしました。
生まれ育った淡路島から、和紙の魅力を伝えようと、紙すきに励む好治さんと、夫を支える恵美さんの、心豊かな暮らしをご紹介します。
築100年の古民家を借り、今年11月にオープンした『和紙工房 松鹿(しょうろく)』。和紙に出会った好治さんは、道具を作るために木工を始め、歴史を学び、書道を習いました。和紙作りを通して“やりたいこと”が次々と見つかっている好治さんです。
和紙作りは、まず原料となる“コウゾ”の刈り取りから始まります。原木を蒸し、柔らかくなった皮を剥く“剥皮(はくひ)”。表面の黒い部分を取り除く“黒皮剥ぎ”など様々な工程を経てようやく和紙の元となる“紙料(しりょう)”が完成します。手間隙をかけて1から手作業で行なっています。
この日、引率の方と一緒にフィリピンの女性3人が紙すき体験にやってきました。好治さんは、日ごろ練習している英会話で工程を説明します。すいた和紙に紅葉などを散りばめ、思い思いの和紙が出来上がりました。海外の方にも和紙の良さを知ってもらいたいと願う好治さんです。
京都からやって来た長男の晃介さん。好治さんがすいた和紙に、晃介さんが撮影した淡路島の風景をプリントして、絵はがきを作っています。他にも工房のHPを作成するなどして、家族みんなで好治さんをサポートしています。