舞台は山形県村山市です。故郷のたも山地区で夫の正幸さんとお休み処を始めた松田節子さん(56歳)が主人公です。村山市たも山出身の節子さんは28歳の時、松田正幸さんと結婚し、山形市で新生活を始めました。週末になると正幸さんは、節子さんの実家の畑を手伝い、たも山の自然に愛着を持つようになりました。正幸さんが49歳の時に早期退職すると、夫婦で節子さんの実家に移住しました。そして、たも山で店を開きたいという夢が生まれ、2008年4月、『たもやま工房 草木庵』をオープンしました。しかし、正幸さんは大病を患い、2011年10月に亡くなりました。辛い別れを経験した節子さんですが、夫と始めた『草木庵』を守っていくことを決意します。たも山の自然に包まれ、多くの友人たちに支えられながら、亡き夫の思いを胸に歩む、松田節子さんの暮らしを紹介します。
『草木庵』は地元の方が作った小物や、節子さんが育てた野菜、自家製の菓子が並ぶお休み処です。節子さんが作る米粉の蒸しパンは「やまがた米粉食品コンクール」で特別賞を受賞しました。節子さんをサポートしているのが、アルバイトの森谷悠さんです。洋菓子担当の悠さんが作る「堅焼きプリン」は懐かしい味がすると大人気です。
村山市には日本有数の規模を誇るバラ園があります。このバラを使って、“村山市の特産品を作ろう”と『草木庵』に来たのは村山農業高校の生徒たちです。村山市のバラから作った天然酵母を使い、米粉パンを作ります。故郷のために頑張る高校生たちの力になりたいと節子さんは『草木庵』の厨房を使ってもらうことにしました。節子さんもパン作りの仲間に加わり、気分は高校生でした。
亡き夫、正幸さんは『草木庵』をゆくゆくは農家レストランにしたいと考えていました。節子さんは農家レストラン開業に向けて、試食会を開くことにしました。招待したのは、節子さんの親戚やお世話になっている方々。テーブルには、たも山で愛されてきた郷土の味15品が並びました。
正幸さんのたも山への思いは、一編の詩として残されていました。この日は正幸さんの詩に曲をつけ、皆で歌います。節子さんがこの歌のことを知ったのは正幸さんが亡くなった後でした。“あなたと歩いた、たも山の道”―この詩は正幸さんから節子さんへのラブレターなのかもしれません。