伊豆半島の南西に位置する、静岡県松崎町。自然が美しく、古いなまこ壁の建物が立ち並ぶ風情ある港町です。この町に、地元のお母さんたちが腕をふるう、おいしいと評判の食堂があります。「伊豆 松崎 であい村 蔵ら(くらら)」です。
地元の新鮮な野菜などを使って、お母さんたちはそれぞれが自慢の料理を作ります。そんなお母さんたちをまとめるのが代表の青森千枝美さん(77歳)。今回の主人公です。
松崎町出身で、東京などで看護師として働いていた千枝美さん。夫が勤める会社が倒産したことをきっかけに、42歳で故郷、松崎町で民宿を開きます。しかし夫・誠さんが病気になり、58歳のとき宿を廃業しました。その後は夫の看病をしながら、地域のお年寄りのためのボランティア活動に没頭しました。夫が亡くなってしばらくたったころ、「古い建物を手放したい」という地元の方からの相談がありました。千枝美さんは町おこしの店を思いつきます。賛同した仲間、25人と資金を出し合い、建物を改装。2010年に「蔵ら」をオープンさせました。
現在、店で働くのは、仲間のうちの11人のお母さんたち。平均年齢は70歳!今やランチタイムには行列が出来る人気店です。これからも“女子力”全開で、頑張って下さいね!
「蔵ら」の一番人気メニューは11時半から始まるランチタイムに出す日替わりの“ひる膳”です。旬の野菜の天ぷらや煮込みハンバーグなど、地元の新鮮な食材で作る自慢の料理。天ぷら担当、煮物担当、はたまた掃除専門の方など…「蔵ら」のお母さんたちはそれぞれ自分の得意技を生かして働いています。
店内にはいつもお母さんたちの元気な声が響いていて、活気があります!
松崎町の新しい名物を作りたいと考えている千枝美さん。平飼いのニワトリに自家製のエサや、新鮮な野菜を与えて卵を取る「とんび農園」を訪ねました。この卵を、松崎町の特産品として「蔵ら」で販売すると大好評。卵は黄身がレモンイエローで全く臭みがありません。「蔵ら」のランチタイムには、一個50円で販売しています。アツアツでとろりとした卵かけご飯が食べられます。
町おこしの店、「蔵ら」。その活動の一環が、店を地元のお年寄りの生きがいの場にすること。そのために千枝美さんが力を入れているのが、おばあちゃんたちの秘めたる才能を発掘することです。93歳の杉本ふみゑさんは編み物名人。ふみゑさんや地元のお年寄りの作品を「蔵ら」では販売しています。お客さんに買ってもらえることで、「また作品を作ろう!」とふみゑさんたちは一番の生きがいになっているそうです。
夜、妹の幸子さんの家にやってきた千枝美さん。互いに1人暮らしのお二人は、毎晩のように晩酌を楽しみます。定番は、ワインで乾杯!そんな時間…、次々と訪ねてくるのがにぎやかな「蔵ら」のお母さんたちです。この日も飛び入り参加がいて、総勢8名になりました。豪華なつまみも大集合です。みなさん女子会のひと時を心から楽しんでいました。「悔しかったら70になってごらん」そう語る千枝美さん。今まで年齢を重ねたからこそ、キラキラ輝けるのです!