舞台は浜名湖に面する静岡県浜松市。住宅街にある自宅脇でミニチュア家具工房“ミニカグハウス”を営む神谷満さん(58歳)が主人公。
27歳で職人として木工家具メーカーに就職した、満さん。50歳を前に転機が訪れます。設計図通りの仕事をこなす毎日に満足できなくなり、「自分の生きた証が残したい」と切望。妻の満江さん(66歳)の後押しもあり会社を早期退職し、2006年にミニチュア作家に転向しました。
実物の12分の1の縮尺で作る満さんのミニチュア。扉や引き出しがすべて開く戸棚など、どれもリアルに作りこまれています。家具だけでなく建物まで作り、中には1年がかりで完成するものも。
そんな満さんが作り出す作品には、見る人をあっと驚かせ楽しませる力があります。
満さん自身の夢とロマンが詰まっています。
満さんが現在、最も力を注いでいるのが“木造校舎シリーズ”。古き良き時代の学校をミニチュアにした作品です。いたずらして廊下に立たされた・・・なんて思い出がよみがえる方も多いのでは?一つ一つ手づくりされた机、椅子、下駄箱やオルガンに至るまで、材料は全て木。教卓には出席簿がおかれ、窓や扉は実際に開閉できます。細部までリアルに作り込む満さんのこだわりです。
浜松市の北部、自然豊かな天竜区に出かけたご夫婦。やってきたのは旧石神小学校。昭和2年に建築され、昭和44年に廃校となった小学校で、ミニチュア“木造校舎シリーズ”5作目のモデルです。教室には児童たちが遊んだ名残が色濃く残っています。満さんは古い校舎の質感を肌で感じ、実際にメジャーで計測してミニチュア作りに活かしています。
元家具職人の満さんが作るミニチュア家具。重厚感があってシックな椅子には、故郷浜松への思いが込められています。座面に張られた布は機織が盛んだったこの地に伝わる和布、遠州綿紬(えんしゅうめんつむぎ)です。江戸時代から庶民の普段着の素材として愛され、昭和に最盛期を迎えた地元の特産品を多くの人に知ってもらいたいと願う満さんです。
年に一度催される“浜名湖アート・クラフトフェア”は陶芸や木工などの手作り作品が並ぶイベント。ミニカグハウスも作品を展示販売しました。ミニチュアに見入るお客さん達。評判は上々です。そして満さんに嬉しい報告が・・・。なんと出展者の中から一人だけが選ばれる“クラフト大賞”を受賞!!新たな夢に向かって頑張り続けてきた満さん、これまで支えてくれた妻への感謝の気持ちが涙となってこぼれました。
市内のデイサービスセンターで開かれる“ミニチュア教室”。満さんが講師をつとめます。丁寧な指導でかわいいミニチュアを作れる教室は大人気。おばあちゃん達にモテモテの満さん、皆さんの笑顔がかけがえのない喜びです。夢を追いかけて始めたミニチュア作りがきっかけで、新たな交流や深い絆が生まれたんです。