舞台は大阪と京都のベッドタウン、大阪府高槻市。里山の風景が美しい原地区で日曜日だけのそば屋「お休み処 秀」を営む、畑中秀子さん(62歳)が主人公です。新緑に包まれた中庭で手作りのそばを振舞うお店は大好評。そして、もう一つの看板メニューが自家製のお米で造るどぶろく!
原地区は、農家が営む飲食店などで自家製のどぶろくが提供できる“どぶろく特区”なんです。
米などを作る兼業農家でもある秀子さん。去年亡くなった夫・喜代司さんの想いを継ぎ、休業していたお店とどぶろく造りを再開させました。
家族や仲間、たくさんの助っ人たちの協力で造るどぶろく「原いっぱい」、そして賑やかなおそば屋さん。暖かい人の輪にかこまれた秀子さんは、忙しくも毎日がとても楽しそうです。
元々、お店を始めようと言い出したのは夫の喜代司さんでした。仲間と一緒に、どぶろく特区認定に向けて声を上げたのも喜代司さん。地元の田園風景を残したいと望んでいたんです。しかし去年、喜代司さんは病に倒れ亡くなってしまいました。常連さんも増え始めていた、そばとどぶろく。秀子さんはそんな夫の意志を継ぐことを決意、今年2月に店を再開したのです。
畑中家の田んぼでとれた「ヒノヒカリ」を使って造られるどぶろく「原いっぱい」。“原のいいところが一杯詰まったどぶろく”という意味が込められています。お米のつぶつぶ感とほんのりした甘味、フルーティな香りが特徴。「お休み処 秀」で飲むことが出来ます。販売もしていますが、現在人気で品薄状態。1ヶ月、2ヶ月待ちは当たり前!
米作りから醸造まで手間がかかるどぶろく造り、秀子さん一人では大変。そんな時、製造も接客も手助けしてくれる頼もしい助っ人が近藤さんです。喜代司さんの代から一緒にどぶろく造りを続けてきた方で、今もボランティアで通ってくれています。日々、アルコールの発酵が進むどぶろく造りに欠かせないのが、毎日の検査。ちょっと数字が苦手な秀子さんに指導しつつ検査を担当してくれる近藤さんは、秀子さんにとって大切な仲間でもあります。
どぶろく造りの合い間に、自宅の畑に向かう秀子さん。そんな畑にはたくさんのお仲間がいます。畑中家の畑を借り、野菜を育てている方々です。亡き喜代司さんと共に、そばや果物を育ててくれた助っ人でもあり、今もどぶろく用の米作りを手伝ってくれています。ご近所さんにも支えてもらっている秀子さん。嫁いで40年を過ごした原地区は、今や秀子さんの故郷になりました。
もちろん、家族も心強い助っ人。長男の一喜さんと次男の隆志さんです。父亡き後、一喜さんはどぶろくの瓶詰めやそば打ちを、隆志さんは農作業を手伝うようになりました。日々頑張る秀子さんに「年も取りますから程々に!」と体の心配をしてくれます。
最近、秀子さんは喜代司さんが残した宝物に気がつきました。それは家族や仲間たちの “輪”。秀子さん、美しい里山でこれからも人の輪を広げていって下さい!