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脚本……奥村俊雄
監督……山下智彦
夏祭りの縁日を楽しむ桃太郎(嶋政宏)とお葉(富田靖子)。すると屋台が壊され、悲鳴が聞こえた。何事かと野次馬も集まってきた。見ると上州屋亀八(浪花勇二)が店の親父と娘に所場代が足りぬと難癖をつけていた。割って入った桃太郎が子分どもをボコボコにのしていると亀八が子分三百人呼んで来いと叫ぶのを聞いて、さすがにお葉の手を取って逃げ出した。桃太郎は内心嬉しかった。好きなお葉と手に手を取って走っているのだから。と、向こうからよろけながら女が歩いてきて倒れた。お葉は女の顔を見て驚いた。以前「あたり矢」で働いていたおなつ(不二子)だったのだ。おなつは「騙された……」と言って息絶えた。
斬られたおなつの遺体は番屋に運ばれ、知らせを聞いた矢場の女たちも仰天して駆けつけ、とりすがって泣いた。松吉(宮下直紀)の話ではおなつは、客で飾り職人の竜次(萩野崇)と恋仲になり、ふた月前、故郷に帰って店を出すという竜次と共に旅立って行った。なのに「騙された」と言い残して無残な死を遂げたのだ。そんな所に千代(中村玉緒)の声がして桃太郎はあわてて裏庭に逃げた。千代は浅草中の矢場を片っ端から当っていたのだ。新二郎という凛々しい若武者だと聞いた松吉には桃太郎と結びかず、そんな居候はいないと告げた。がっくりとなる千代を物陰から伺っていた桃太郎は伊之助(左とん平)が止めるのも聞かず逃げた。
街角を曲がった所でまた自分とそっくりな丸亀藩の若君に出会った。自分は桂木新二郎だと名乗ると、新太郎はゆっくり話がしたいので屋敷に訪ねて来いと言う。桃太郎は美人の腰元がいると聞いて必ず行くと約束して別れた。藩邸に戻った新太郎は江戸家老の神島(津村鷹志)に今度、新二郎を藩邸に呼んだと聞いて愕然とした。
もう母はいないだろうと「あたり矢」に戻ってきた桃太郎は仰天した。千代が矢場で遊んでおり矢は的の真ん中に大当たり。女たちの踊りが始まり、蓑吉(ヒロミ)におだてられた千代が踊りの輪に入ったのだ。皆は千代が桃太郎の母だとは知らない。千代が伊之助と共に帰った後にお葉が番所から戻ってきた。何があったか分からないがおなつも自分たちも竜次に騙されたことだけは分かったと言い、なんで?ときくおやえ(山内明日)に「泣いてもおなつは戻らない、仕事、仕事」と元気良く言いながら奥の部屋に去っていった。それを聞いた蓑吉は思い出した。竜次が別の女を口説いている様子を見たことがあると。松吉がかどわかしかも知れないと言い出した。「一番辛いのは女将さんだ」とおその(清水あすか)が言った。店の女たちはそれぞれ心に傷を負っていた。お葉も行き倒れた所を先代の女将に助けられ後を継いだと言う。お葉の過去を少し知った桃太郎であった。
その頃、回船問屋辰巳屋の庭先に竜次が引きずり出されていた。辰巳屋与兵衛(石立鉄男)は勘定奉行勝手方の江川頼母(大谷亮介)と組んで、長崎のオランダ屋敷に送り込む女たちをさらって人身売買していたのだ。竜次はその手先となっておなつを手なづけたが、真相を知ったおなつに逃げられ、用心棒の倉持(木下通博)がおなつを斬り捨てたのだった。今、竜次はおなつの替りの女を必ず探すと命乞いしていた。
おなつの墓参りを済ませた桃太郎とお葉が戻ると店先でおきく(竹本聡子)が女と何やら話していた。おきくが店に入った後、お葉が「おみね姉さん!」と声をかけた。うちに寄ってくれと言うお葉に、おみね(川上麻衣子)は断ってそそくさと去った。蓑吉によればおみねは以前「あたり矢」にいた女で、後から入ったお葉を先代が後釜に据えたことで、居辛くなり辞めて酌婦になっていると言う。おきくを柳橋にできる料亭の仲居にどうかと引き抜きにきたのだ。桃太郎はおなつの事件があるだけに気になった。
伊之助に話すと役者顔の竜次の名に伊之助が反応した。ケチな盗人だったが十年前、姉さんに頼まれ足を洗わせた男だと言う。その姉さんというのが不運な女で弟だけはまっとうにしたいと懸命に働いていたが、竜次は何年か前、人を刺して島送りになったと言う。
やっと家に戻った桃太郎にいきり立つ千代。だが、今度丸亀藩の若君に誘われ藩邸に行くんだと聞かされて、思わず立ち眩みしてしまう母を尻目に後を伊之助に任せてまた逃げ出す桃太郎だった。
おきくが店を辞めることになった。おみねが料亭の仲居に引き抜いたのだ。おみねを信じるお葉は喜んで送り出した。だがやはり罠だった。竜次はおみねの弟だった。おみねは竜次の話を信じ、良かれと思っておきくを世話したつもりが、人買いの手引きに利用されたと知って愕然とした。竜次は五年前に姉のために人を刺し島送りになった。それがおみねの弱味だったが、弟はその姉を利用したのだ。
おきくを心配した桃太郎と蓑吉の前にまた亀八一家が立ちふさがった。またしてもボコボコにされ逃げていく一家の先に辰巳屋の寮があった。阿漕な商売で悪い噂が絶えないと言う。その寮の中の牢におきくを含め十人の娘たちが監禁されていた。
傷心のおみねが身投げを計ろうとしたところを伊之助が止めた。竜次のヤサを教えろと迫るが、何も知らないと逃げて行った。おみねは酒に酔っていた。自分のせいで弟が島送りになり、今また弟のせいでおなつが死に、おきくは売られていく。ヤケ酒を呷るおみねに桃太郎が声をかけた。お葉がおみねはいい人で、おきくの夢を叶えてくれると言っていたと。おみねが何事か決意した。
竜次の前にお葉を連れた伊之助が現れた。動揺する竜次は、お葉がおなつを騙したと迫るとやにわに匕首でお葉の腕を刺して逃げた。そこへ桃太郎が駆けつけた。伊之助が竜次を追い、桃太郎はお葉を背におぶい「死ぬな!俺はこの世で二番目にお前が好きだ」と叫んで「あたり矢」に急いだ。幸い傷は軽かった。お葉が好きだということは女たち皆が知っていた。ポカンとする桃太郎。伊之助が竜次が辰巳屋に入ったこと、役人と組んで人身売買していること、竜次がおみねの弟だということを伝えた。
おみねは竜次に奉行所にすべて自分がやったと訴えるからお前は逃げろと言った。そこへ辰巳屋の用心棒倉持が現れ、二人を斬り捨てて立ち去った。遅れて現場に来た桃太郎とお葉の前で竜次が姉さんに謝って死んだ。おみねもお葉の腕の中で謝り、おきくが辰巳屋の寮にいることを教えて死んだ。桃太郎の怒りが爆発した。
倉持から二人を始末したと聞いて、江川と酒を酌み交わす辰巳屋の前に赤い旋風が巻き起こる。倉持を斬り、江川を倒した天魔不動剣に、髷を切られザンバラ髪の辰巳屋の顔が映った。桃太郎は鬼を斬り捨てた。
おきくが無事戻ってきた。お葉は自分をおぶった時「二番目に好きだ」と言ったのを気にしていた。一番目は母上だと分かり頭にきたお葉であった。(完)
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