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#70 2011.4.10
地球デザイン〜宇宙が創造した命の形〜第三章

広大な宇宙空間にたった一つの奇跡が存在する。
その地は、大気に覆われ、雲が舞い、豊かな水が満ちあふれ、色彩が輝きを放っている。
この惑星が今、生命にあふれているのは、宇宙空間において、全てのデザインが成功したからなのだという。

脊椎動物が繁栄する前、陸上ではすでに植物と昆虫が共存していた。
やがて、恐竜たちが現れる。今、彼らの知られざる事実がわかってきた。

宇宙が創造した命の形、第三章。
今回は、上陸に成功した生物たちが繰り広げた、命の挑戦に迫ります。

<植物の生き方>
誕生から40数億年が経過しようとしていた地球。
脊椎動物が上陸したとき、既にそこはある生き物たちの楽園だった。
それは、植物。

植物は、動物たちが獲得したエネルギー摂取方法とは全く違う方法を完成させようとしていた。
彼らは、動いて栄養をとる方法を選ばなかった。動く必要がないのである。
太陽の光さえあれば、どこでも自分自身で栄養を作り出す「光合成」という方法を完成させた。

光合成でエネルギーを得るためには、広い葉っぱを持つことが理想。
しかしたとえば、周りに大きな葉を持つライバルがいると、普通に葉を広げていては太陽光線が吸収できない。
そこで、自分がまず高く成長し、それから葉を大きくし、太陽光線を吸収するという戦略をとるものもいる。

では、植物たちにとって、花とはいったどんな役割を果たしているのか?
それは、昆虫に花粉を運んでもらうための機能であり設備だと、東京大学理学部の福田教授は言う。

また、自らが動けないリスクを補うように、生活範囲を広げていく戦略もあるという。
植物は決して動けないわけではないが、あるものは花粉を飛ばし、あるものは動物に果実を食べさせ、またあるものはタンポポのように綿毛を風に乗せて飛ばすなど、他の力を使って動くシステムを作ったのだ。
太陽光線という生命の源といえるエネルギーをもっとも効率よく利用しているのが植物なのかもしれない。

<昆虫の戦略>
植物たちの繁栄は、良き相棒を得たことにも、その要因がある。
それが昆虫たち。
昆虫たちもまた、脊椎動物の上陸よりも一足早く陸上に広がっていった。

名前がわかっている昆虫は約100万種程度だが、学者によっては、名前のわからないものを含めるとその数は5000万種に及ぶ、という人もいるという。
どうして昆虫たちはこんなにも多種多様化していったのだろうか?
それには、羽根の獲得が大きく関わっていると東京農業大学の岡島教授は言う。
羽根を手に入れたことが、生息範囲の拡大、エサ探し、配偶者の選択に役立ったというのだ。

そして、外骨格もまた昆虫の特徴的なデザインだ。
ヒトを含めたほ乳類や爬虫類は、内骨格といって、身体の内側に骨を持つ。
対して昆虫は、身体の外側を堅い殻で覆って、全体を支えている。
この外骨格という構造は、じつは身体を大きくできない。
大きくしようとすると、外側の骨まで大きくなり、重くなりすぎるのだ。

しかし、「小さいこと」もまた、彼らにとって有利に働き、多様化への要因の一つになったという。
少ないエネルギーで生きてゆけ、逃げやすく、狭い所にたくさん住めるというのだ。

数えきれないほどの種類、そして、地上、地中、水中、空中など、多様な環境を生活圏に持つのも昆虫たちの特徴である。まさに驚異の生命。

彼らと植物の成功は、結果的に彼らを追って上陸してくる脊椎動物にとって、生活環境の整った世界を作ってくれた。
私たちが済む世界の基礎を作ってくれたといっても過言ではないだろう。
すべての命はつながっているのだ。

<恐竜とほ乳類>
陸上への進出を成功させた脊椎動物たちは、地上というフロンティアでさらに多様化していく。
植物など豊富な食料と、先住者がいない生活圏の広さが多様化に拍車をかけた。
やがて大きく二つのグループに分かれていく。爬虫類とほ乳類だ。
そして、爬虫類のグループからは、身体を大きくしていく者たち・恐竜が現れる。

2010年、ある化石の分析結果が発表された。
ポーランドで見つかった足跡の化石から、元々四足歩行だった爬虫類が二足歩行をしかけていることを示す痕跡が見つかったのだという。

体長推定50センチと、私たちが知っている恐竜とはかけ離れた小さな身体。
彼らはこの小さな姿から、どのようにして巨大化していったのだろうか?

普通の爬虫類の大きな特徴は、がに股で、腕立て伏せをするように立ち、四足歩行だったこと。
それが、四足で歩くより二足で歩いた方がより速く、より遠くまで移動できるため二足歩行へと変化したのだと国立科学博物館の真鍋博士は言う。

他の爬虫類より繁栄した彼らは、やがて身体の機能を変化させていった。
元々は変温動物だったが、どこかで恒温動物に変わったのではないかと考えられている。

恒温動物は、変温動物に比べ何倍も食料を必要とする。
二足歩行を獲得した恐竜たちも、恒温動物にその身体を変化させ、俊敏に動くことが可能となった。
その結果、著しくスタミナを向上させ、その代わりにたくさん食べることを余儀なくされたのだという。

そして、最初は全て小型で肉食だった恐竜から草食のグループが生まれたことも、大型化につながっていった理由の一つだという。
肉よりも植物の方が消化しにくく、大きな胃腸を持たなくてはならないため、草食恐竜が大きくなったというのだ。

こうして、草食という新しいライフスタイルを選択し身体を大きくした者たちは、重い身体を支えるために二本の柱を四本にした。
つまり、二足歩行から四足歩行へと再び戻っていったのだと真鍋教授は考える。
そして、大きな草食恐竜を追いかけるように、肉食恐竜たちも身体を大きくしていったのだという。

およそ6500万年前に突然その姿を消してしまったといわれる恐竜たち。
しかし恐竜は、1億年以上この地球上に存在した。
彼らが獲得した機能、デザインは、命が大きく成長できることの証なのかもしれない。

<エピローグ>
およそ6500万年前、恐竜をはじめ多くの生物が絶滅する中、現在この地球上に生存する生き物の祖先たちは、その命を繋ぐことに成功した。
そして、ほ乳類の時代全盛の時代がやってくる。
「ほ乳類は、爬虫類に虐げられ、長く準備していた」と東京大学総合研究博物館の遠藤教授は言う。
海や空にも進出したほ乳類のデザインは優れており、そんな優れたデザインを持つ彼らは地球全体で繁栄していける生き物なのだという。

命を繋いできた生き物たち。命を繋いでいく生き物たち。
命は躍動し、前進を続ける。
そして命は瞬間という時間を刻み続けていく。
生まれてきたこの星が奇跡の営みを続ける限り。
地球が美しく輝く限り!

[今週の専門家]
★東京大学理学部 福田裕穂 教授
★東京農業大学農学部 岡島秀治 教授
★東京大学総合研究博物館 遠藤秀紀 教授
★国立科学博物館 真鍋 真 博士