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  • オーストラリア グレートバリアリーフ
#8 2009.11.22
南極 地球未来を懸けた挑戦

 1956年11月8日、日本中の期待を背に第1次南極観測隊を乗せた宗谷が出航した。南極の短い夏の間、隊員たちは広大な大陸を犬ぞりで移動し、昭和基地を建設。11人の越冬隊を残し、宗谷は南極を後にする。  翌年、宗谷は第二次南極観測隊を乗せ、再び南極に向かう。しかし、厚い氷に阻まれ、接岸することが不可能となった。そこで、昭和基地で1年を過ごした越冬隊は急遽、小型飛行機に飛び乗った。15頭の樺太犬をやむを得ず、大陸に残して…。  およそ1年後の1959年1月、前回の教訓を糧に、観測隊はヘリコプターを用意し、再度、南極を目指した。眼下に広がる氷の大陸。そこに待ち受けていたのは、平均気温マイナス30度から50度といわれる厳しい寒さを耐え生き延びた樺太犬、タロとジロの姿だった…。

 厳寒の地・南極。そこは、世界で5番目に大きい大陸で、日本のおよそ37倍の面積を持つ。年間降水量はわずか50ミリ。にも関わらず、大陸を覆う氷の厚さは、平均1860メートル、厚い部分では4776メートルにも及ぶ。わずか50ミリの雨や雪が積もり積もって何千メートルにも達するのである。そして、ここには何と、地球上の淡水のおよそ9割が閉じ込められているという。もし南極の氷がすべて解けてしまったら、世界の海面が57メートルも上昇してしまう。

自然の驚異をまざまざと見せ付ける南極。人はなぜ、この全てを閉ざすかのような凍てつく大地を目指すのか?
 未知なる世界を解明すべく、本格的に南極調査が始まった1957年からおよそ50年、今年、日本から南極に向かうのは、第51次観測隊。彼らが乗り込む船は、今年5月に竣工した最新の砕氷艦『しらせ』である。最も重要な仕事は行く手を阻む厚い氷を砕くこと。その砕氷能力は世界でもトップクラスで1.5メートルまでの氷の厚さなら砕きながら進むことができる。

 1969年、日本の南極観測隊によって画期的な発見がなされた。昭和基地の南西およそ300キロに位置する やまと山脈付近で、一度に9つの隕石が見つかったのだ。以来、これまでに日本が南極で採取した隕石は、実に1万6000個以上。南極に落下した隕石は氷に閉じ込められ、手付かずのまま発見されることが多い。そのため、地球をはじめ宇宙の成り立ちを解き明かす上で重要なヒントになるといわれている。
大陸の氷の内部には、降雪時の地球の大気が年代ごとに閉じ込められている。国立極地研究所に保管されている、大陸の氷を円柱状に抜き取った氷床コア。ここに閉じ込められた昔の空気を取り出し、気候変動などの関連を調べることが重要だという。

 かつて、多くの探検家が命をものともせず挑んだ南極。そこは今、世界中の頭脳が集まる、地球研究、そして、宇宙研究の場となっている。厳しくも美しい大自然の中で科学者たちが導き出す答え。それはまさしく、人類共有の財産となり、希望に満ちた地球の明日を創造するに違いない。