水曜日

伝統守り、次の世代へ引き継ぐべく奮闘する輝く女性に密着。 宇賀なつみアナが体当たりレポートで紹介、応援します。

放送日 2016/06/01

吉岡更紗(38) 京都で200年続く“染司よしおか”6代目

200年続く染物の伝統を受け継いだ吉岡更紗(よしおか・さらさ)さん

染司(そめのつかさ)よしおか 京都店
住所/京都府京都市東山区西之町206-1
TEL/075-525-2580
紹介した作品「ストール」1万6200円~、「コースター」864円 ※共に税込み

宇賀なつみアナウンサーが、伝統や文化を受け継ぎ、生き生きと輝く女性から、人生を素敵に過ごす秘訣などを伺う「継ぐ女神」。今回ご登場いただいたのは、京都で200年続く染物屋「染司(そめのつかさ)よしおか」の6代目、吉岡更紗(よしおか・さらさ)さん(38)です。

「染司よしおか」のルーツは、室町時代に足利家の剣術指南役を務めた「吉岡流一門」。江戸時代になり、あの宮本武蔵に道場破りをされたことで、剣術から染物へと転向したのだそうです。その後「染司よしおか」は、吉岡流一門から暖簾分けをした染物店の1つで修業をし、分家を許されて開業しました。現在では薬師寺の大祭で使われる衣装や、東大寺のお水取りで使われる椿の造花などを染める重要な役割を担っています。他にも一般的な反物(たんもの)やストールなど、様々な物を染めているそうです。

宇賀アナは更紗さんの仕事場に案内していただきました。木々に囲まれた更紗さんのお宅は、「間口が狭くて奥に長い」という京住宅のイメージと異なる「横長」タイプ。元々は4軒の連なった長屋だったのですが、住人が退去するたびに空いた家を借り受けて仕事場にしていった結果、現在のような状態になったのだそうです。

更紗さんは、吉岡家に伝わる家宝を見せてくださいました。それは、東大寺の瓦(かわら)と天井の釘(くぎ)で、どちらも鎌倉時代頃に使われていたものだといいます。東大寺の染物仕事を任されている縁で譲り受けたのだそうです。もうひとつのお宝が、およそ300年前のインドの染色品。数百万円もの価値があるというそれは、マハラジャが使っていたとされる貴重な品なのだそうです。

今も自然素材のみで染物を行う染司よしおか

宇賀アナは、更紗さんの仕事場に入れていただきました。染司よしおかでは、日本古来の染色法にこだわった仕事をしているそうです。植物を中心とした「自然界に存在するもの」を使っている更紗さんは、源氏物語に登場する着物を再現した際、当時とほぼ同じやり方で染めています。淡い桜色のそれには「紅花」が使われたといいます。

染司よしおかでは40種類ほどの植物や昆虫などを染料化しているそうです。染め方の濃淡などを調節することで200種類以上もの色が作れるといいます。こうした手法を今も継承している工房は数少ないのだそうです。

仕事場でお会いしたのは、染司よしおかの5代目で、更紗さんの父の幸雄さんです。「娘の技量はまだ50点」と辛めの採点をしてくださった幸雄さんは、東大寺で「大仏開眼(かいげん)1250年慶讃(きょうさん)大法要」が行われた際、最も位の高い僧侶の袈裟(けさ)を染め上げた名匠だといいます。

鮮やかな色を生み出す“魔法の水”とは?

宇賀アナは、更紗さんが実際に布を染める現場に立ち会わせていただきました。最初の工程は「染料作り」です。更紗さんは「刈安(かりやす)」という植物の葉や茎を弱火で30分ほど煮込んで黄色の染料を作りました。しかし、出来上がったのは黄色というより茶色に近いもの。これで本当に布が黄色く染まるのでしょうか。

更紗さんはいよいよ「染め」の工程に移ります。先ほど作った染料を湯に少量混ぜると…ちょっと黄色っぽくなってきました。そこに白い絹を浸すのですが、宇賀アナも作業を手伝わせていただきました。ちょっとずつ広げながら15分位も布を動かすと聞き、驚いた様子の宇賀アナ。絶えず動かし続けていないと一部に色が集中し、ムラが出来てしまうのだそうです。

動かし続けること15分、染料の湯から上げて水ですすげばキレイな黄色になる…と思いきや、そこにあったのは白いままの布。失敗か、と青ざめる宇賀アナに、更紗さんは「まだ作業は終わっていない」とおっしゃいました。更紗さんが「魔法の水」と呼ぶ液体の中に布を浸し、再び15分動かします。魔法の水の正体は、水に明礬(みょうばん)という物質を混ぜたもの。魔法の水から上げた時点ではまだ色はほとんど着いていませんが、最初の液にもう一度浸すと、鮮やかな黄色に染め上がりました。明礬に含まれるアルミニウム成分が染料と反応したのだそうですが、奈良時代の人々もこうやって染物をしていたのだといいます。

厳しい師匠である父の元で修業する吉岡更紗さん

3姉妹の末っ子として生まれた更紗さんは、家業を継ぐ意思などは全くなく、大学卒業後はアパレル会社へ就職したそうです。しかし、2人の姉も妹と同じく家業は継がず、200年続いた伝統も風前の灯となってしまいました。そうした状況の元、更紗さんの胸中では「代々続いてきた伝統の技を絶やしてしまってはいけない」という思いがじわじわと広がっていったそうです。そしてついに6代目を継ぐ決意をしましたが、修行の道は想像以上に厳しいものだったといいます。

更紗さんの修行は2年間、愛媛県の養蚕(ようさん)農家で絹を作るところから始まりました。期間を終え、ようやく染物の現場に戻ってきた更紗さんを待っていたのは、師匠である父のスパルタ指導でした。礼儀を重んじる職人の世界においては、親子と言えども師匠と弟子。言葉遣いも敬語が基本で、更紗さんも幸雄さんを父だと意識する気持ちが薄れていったそうです。

娘の8年間の修行の日々を見つめてきた幸雄さんは「あまり褒めないようにしている。至らない部分を出来るだけ指摘してあげたほうが親切と言うもの。自分は口が悪いので」と語ります。「お嬢さんのお仕事はいかがです?」という宇賀アナの問いにも「まあまあ」と答えておられましたが、尊敬する厳しい師匠の口から出たそれは、更紗さんにとっては「大きな励みになる言葉」だといいます。

前を見ることも大事 だけど後ろを見よう! 迷った時はヒントがあるはず

◆吉岡更紗さんの作品の販売店
京都の販売店…染司よしおか 京都店
住所/京都府京都市東山区西之町206-1
TEL/075-525-2580

東京の販売店…紫野和久傅 丸の内店
住所/東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1階
TEL/03-3240-7020

 

◆展覧会「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展」
会場/Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷区)
開催期間/6月14日(火)~7月31日(日)※会期中無休
開催時間/10:00~19:00(入館は18:30まで)
※金・土は21:00まで(入館は20:30まで)
入場料:当日一般1400円(税込み)ほか
※今後の開催予定
郡山市立美術館(福島県 8月6日~9月11日)
一般1000円(税込み)ほか

今回の取材を通して、宇賀アナの心に残った女神の一言は「前を見ることも大事 だけど後ろを見よう! 迷った時はヒントがあるはず」です。自分の経験の浅さを自覚している更紗さんは「後ろ(代々受け継がれてきたもの)を振り返ることによってヒントを得ている」とおっしゃいます。だから、常に後ろを振り返りながら進んでいるのだ、と。こうした謙虚な気持ちがあるからこそ、更紗さんは厳しい修行に耐えられるのかも知れません。

更紗さんの作品は京都や東京の一部の店舗で購入できます。また、6月14日から東京・渋谷区で開かれる展覧会でも販売されるそうです。展覧会では、マリー・アントワネットの愛したアンティーク布や吉岡の家宝であるインドの染物も展示されるといいます。

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